目次
略号一覧
序文
第1章 神学と霊性
聖なる教え
対神的生を重んじる学派
神学と見神
神学の「主題」
神の知の刻印
「敬虔な」学
「霊性」の三つの意味
第Ⅰ部 三位一体の霊性
第2章 すべてを超えるもの
神に関する知と不知
否定の道
知られざるものとして知られる神
神に向かう三つの道
在るところの者
すべての名を超えた名
いまだかつて神を見たものはいない
第3章 神と世界
アルファにしてオメガ
三位一体と創造
芸術家としての神
世界における三位一体の現前
世界を愛する神
第4章 像と至福
始まりと終わり
三位一体の像
像と内住
神の経験
栄光の像
第5章 道,真理,生命
神に導く道
新しい道
キリストを模倣することで神を模倣する
わたしはあなたたちに模範を示した
祖国と道
第6章 長子の像にかたどって
神だけが神にする
作用者と道具
キリストの生涯の神秘
記憶か現前か
目に見えない星のように
キリストに一致すること
あらゆる被造物の長子
祭司,王,預言者の体
第7章 聖霊について
トマスの著作と聖霊
共通の名と固有の名――三位一体の適合化
創造主としての霊
霊の生命
わたしは父のもとへ行く
聖霊についての説教
第8章 教会の心
神が御自身を愛する愛で愛されるもの
聖霊の恩恵
愛の紐帯
愛の絆
教会の心
第9章 内なる教師
主の霊があるところに自由がある
聖霊の衝動
聖霊の賜物
聖霊の結実
内なる教師
第Ⅱ部 神を前にして世界の中で生きる人間
第10章 トマスの創造論
ある関係
「そして神はこれらのものが善であることを見た」
二次的原因と神
世の軽蔑か
修道生活と世俗的営み
第11章 トマスの人間論
問題としての人間
霊魂と情念
自然本性と研鑽――徳について
救いの喜び
完全な徳
危険を顧みない徳
賢慮と愛
第12章 友人とともに生きる
「社会的」動物
自然法とその主要な傾向性
教会,神の民
霊的なものと時間的なもの
最善の政治形態
第13章 世界で最も高貴なもの
世界で最も高貴なもの
良心に従う
良心と真理
すでに生じ始めた永遠の生命
最も高いところに据えられた錨
欲求を伝えるもの
人間は神にならねばならない
第14章 神への道
人間と欲求
神を受容できること
幸福を生み出さないもの
近道
愛を持たないなら,わたしは無である
愛の段階
愛の賛歌
あらゆる完全性の範型
第15章 結論――中心思想と典拠
中心思想
典拠
第二版のあとがき
訳者あとがき
文献表
索引(人名・主題・著作・聖書)
内容説明
『神学大全』の著者は第一級の思想家と言われるが,神秘家であることはあまり知られていない。神学者であり,聖書註解者であるとともに,教父に耳を傾け,自分の教えが人々の救済と霊的向上に役立つよう気遣う人であった。
わが国でも,これまでトマスの哲学思想や哲学的著作は注目されてきた。しかし彼の著作の大部分は神学的著作であり,信仰を前提とした対神的生に基づいて書かれていることが必ずしも理解されてこなかった。
本書はトマスの霊性に関する主要なテーマである,神の存在証明と神認識,創造と三位一体,神の像,神化の思想,キリスト論,聖霊論,創造の形而上学,人間論,習慣論,社会論,教会論,良心論,愛による対神徳の理論等について,専門的な議論は避けつつ高い内容を解説し,更にトマスの膨大なテキストを紹介した魅力的な入門書である。
東方神学に比べ,ラテン神学では三位一体が尊重されていないと言われてきたが,トマスの霊性は三位一体に特徴があることを強調,神とイエスと聖霊の意義が明快に説明され,ヨーロッパにおける霊性が身近なものとなっている。
姉妹編『トマス・アクィナス 人と著作』(知泉学術叢書)と相まって,トレルによるトマス・アクィナスの全貌が明らかになった待望の翻訳である。