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クザーヌスの思索のプリズム

中世末期の現実を超克する試み

クザーヌスの思索のプリズム
著者 八巻 和彦
ジャンル 哲学・思想 > 中世哲学
出版年月日 2019/11/20
ISBN 9784862853042
判型・ページ数 菊判・744ページ
定価 本体9,000円+税
在庫 在庫あり
 

目次

まえがき
略号表

Ⅰ クザーヌスという人物
 第1章 クザーヌスにとっての〈場所〉――「随処に主と作れば,立処皆真なり」(臨済録)
 第2章 「知の制度化」批判
 第3章 クザーヌスと「近代」
 第4章 デッサウアーのクザーヌス像――自然科学と哲学・神学の出会い?

Ⅱ クザーヌスにおける主体性
 第1章 クザーヌスにおける人間の主体性について――『イディオータ』篇を中心にして
 第2章 クザーヌスの思考における主体性の二重構造――〈観〉videre を中心に
 第3章 〈精神的な引き上げ〉という神秘主義――『神を観ることについて』を中心にして

Ⅲ クザーヌスの認識論
 第1章 〈認識の問題〉――『覚知的無知』と『推測について』を中心にして
 第2章 神の命名の試み
 第3章 表象力の機能とその射程
 第4章 クザーヌス哲学における幾何学的象徴の意義
 第5章 『可能現実存在』の構造――possest,non-esse,aenígma,vísío

Ⅳ Theopania としての世界
 第1章 〈神の顕現〉(Theophania)と〈神化〉(Deificatio)――『諸々の光の父の贈りもの』を中心にして
 第2章 〈全能なる神〉の復権――〈第一質料〉を超克する試み
 第3章 『球遊び』における〈丸さ〉の思惟
 第4章 〈神の現われ〉としての〈世界という書物〉

Ⅴ 宗教寛容論
 第1章 〈信仰の平和〉という思想――『信仰の平和』を中心にして
 第2章 宗教寛容の哲学
 第3章 〈言語の類比〉による宗教寛容論
 第4章 現代における宗教的多元論の要請

Ⅵ イディオータの思想
 第1章 『イディオータ篇』における〈イディオータ〉像について
 第2章 楽しむ〈イディオータ〉――後期クザーヌスにおける思想的革新の一局面
 第3章 〈周縁からの眼差し〉――『普遍的協和』から『イディオータ篇』,『全面的改革』へ
 第4章 後期クザーヌスにおける〈語りかけの存在論〉――神と世界と人間の親密な関係

あとがき
初出一覧
引用文献
人名索引・固有名索引・用語索引

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内容説明

クザーヌス(1401-64)は,生涯カトリック教会の枢機卿や司教,さらには教皇代理として活動しつつ,旅の最中に多くの著作を残した。彼の著作は写本から印刷本としてヨーロッパに広まり,その影響はブルーノをはじめコペルニクス,ケプラー,ライプニッツ,カント,ヤコービ,ハーマン,ダン,レッシングなど思想家から文学者まで多くの人びとに及んだ。

Ⅰ部で著者は,クザーヌスを中世末期の人物として捉え,その多面的な活動について考察する。

Ⅱ部では,クザーヌスの主体性論と近代の主体性概念との違いを検討し,彼の主体性が二重構造をもち,彼が人間精神の能力を高く評価していることを解明する。

Ⅲ部では,彼の認識論は神をいかに把握されうるかにあり,人間の認識能力は本質的に限界があり,絶対的存在からの助力を必要とする。さらに認識対象への接近方法として,表象力,比喩,象徴が強調される。

Ⅳ部では,世界はいかなる根拠で存在するかが問われ,「世界とは神の現れである」ことが明らかにされる。

Ⅴ部では,クザーヌスが教会のあり方をも相対化して他の宗教に対する寛容を説いた事情を明らかにする。

Ⅵ部では,愚者とか無学者を意味するイディオータが弁論家や哲学者との対話により,立場が逆転する姿を通して思想家クザーヌスの本質を見出す。

世界的にクザーヌスへの関心が広がる中,本書は半世紀に及ぶ研究の集大成であり必読の基本文献となろう。

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