目次
I 序論――詩的にして理性的な神学
1 像,比喩
2 構成
3 「哲学的戯曲」
4 神すなわち全体的なものとしての生命
5 往相と還相
6 言語と認識
7 謎のような定義の利用法
II 『24人の哲学者の書』翻訳と説明
「序言」
「24の定義」
III マイスター・エックハルトにおける『祝福の書』における神智学
1 接触点
2 根,芽,花
3 超-存在としての神
4 理性−「存在」より高度な視点
5 自己関係-生命
6 無限性。最大と最小
7 生の教説
8 エックハルト以後の時代,ベルトールト・フォン・モースブルク
IV 定義IIだけではなく,トマス・ブラッドワーダイン
ふりかえって
V さまざまな論争的解釈。研究史に寄せて
1 ハィンリッヒ・デニフレ
2 クレメンス・バオイムカー
3 ディートリッヒ・マーンケ
4 新しい主題。ヴェルナー・バイアーヴァルテス
5 フランスワーズ・ユルディ
6 パオロ・ルチェンティーニ
7 ペーテル・スロテルディク
VI 「中世における神」―― 一つの文化史的考察
訳者あとがき
書誌情報
索引
内容説明
アラビアの王が24人の哲学者を集め,「神とは何か」について簡潔な一文で答えることを命じた。本書はヘルメス・トリスメギストスに由来すると言われてきたが,実際は12世紀に成立している。本書は著者が12,3世紀のラテン語テキストに書かれた24の神の定義と短い文章で奇怪な印象を与える当時の注釈を,併せて訳出し解説したものである。
マーンケとコイレは本書が近世初期における宇宙論や学問史に異常なまでの影響を与えたことを明らかにしたが,著者は後年への影響としてエックハルトとブラッドワーダインを中心に,その後の論争的な研究史をも検討し,最後に「中世における神」について文化史的考察をした。
「24人の哲学者の書」はヨーロッパ神智学の最も美しく豊かな文書の一つだが,近世の宇宙論に思弁的で想像的な刺激を与えるとともに,それは無限なるものの思考を教え,無知こそ真の知であると洞察した。この文書はエックハルト,クザーヌス,ブルーノ,ライプニッツなどに影響を与え,中世以来多くの思想家に読まれながらも,表立って議論されることは少なかった。
本書はわが国では知られていないが,哲学者たちが想像のかぎり神を語る言葉には,宗教・思想を超えて文学や芸術,科学の世界にも豊かな刺激を与えるに違いない。