目次
はじめに
第一章 神は存在するか?
神について語る――哲学者と詩人たち
言葉と意味
神を語る――類推と全知,全能
無神論
神の死――超越と内在
神の存在を支持する議論
観察と推論
第二章 なぜ神を信じるのか?
神と宇宙についての理解の変化と信頼性
神経科学と経験
第三章 アブラハムの宗教――ユダヤ教の神理解
カナン人たちと約束の地
ダビデ 神殿 メシア
苦しみと死
一つの神 聖性
第四章 アブラハムの宗教――キリスト教の神理解
契約とトーラー
イエスと神
磔刑と復活
神の子
教義の展開――キリスト論 贖罪 三位一体
第五章 アブラハムの宗教――イスラム教の神理解
ムハンマド
『コーラン』
啓典の民
神の意志
第六章 インドの宗教
基本となる信仰
崇拝と見神
『ヴェーダ』と神々
ヴィシュヌ
シヴァ
マハーデーヴィー(大女神)
唯一神と多くの神
第七章 神を知る
註
訳者あとがき
参考文献
索引
内容説明
いつの時代も人々は神を信じてきたし,今日でも多くの人がそうである。人々の神の描き方や関わり方は多様で,時に意見の不一致だけでなく紛争や戦争を引き起こした。
著者は「神とは誰か,あるいは何なのか?」を問う。神とはあらゆる言葉や理解を超えているが,ただ神についての理解はいつの時代も同じではない。神は絶対に変化しないのだろうか。そうだとしても,各宗教において時代により神の描写や性格づけは劇的に変化する。古代インドで生命とその維持,さらに破壊をもたらすディアウス(天空)は,ギリシアに伝わりゼウスとなった。
神への問いについて哲学者や神学者が厳密に答えた言葉や,それとは対照的に生き生きと神に語り掛ける詩人や信者たちの言葉が,私たちに伝える意味を考える。また人はなぜ神を信じるのか。それは生活や経験の中から生じた結果である。
アブラハムの宗教であるユダヤ教,キリスト教,イスラム教の一神教とインドの宗教の考察をとおして,異なる神の性格と描写が確立された過程を述べ,さらに神の性格づけがその初期から発展し,変容した過程を明らかにする。公平で中立的な態度で神を分かり易く説明した本書は,神に憧れると同時に疑問を持つ読者にとって必読書となろう。