ホーム > アリストテレスの時空論
目次
序論
本書の目的と方法
本書の構成
『自然学』第3,4巻の方法――存在と定義
『自然学』第3,4巻における「パイノメナ」
第1章 運動の定義
1 はじめに
2 エンテレケイアの意味と定義の循環
3 「可能的にあるもの」の構造
4 「そのようなものとして」
5 運動の定義と空間的・時間的延長
第2章 無限論――物体・現実態・可能態
1 はじめに
2 『自然学』第3巻第5章の物体観
3 分割無限における「分割」
4 分割無限は現実的に存在するか
5 分割無限の質料性
6 無限論と運動の概念
第3章 場所論――固有の場所と運動概念
1 はじめに
2 場所の要件
3 「うちにある」と場所のパラドックス
4 場所の不動性
5 場所の定義と物体の移動
第4章 空虚論――非存在の論証と物体
1 はじめに
2 力学的反論――『自然学』第4巻第8章215a24-216a11
3 空虚肯定論の報告と批判
4 「空虚それ自体」の検討――『自然学』第4巻第8章216a26-b16
5 空虚,場所,運動
第5章 時間論――時間の実在性
1 はじめに
2 時間のパラドックス
3 時間の定義と時間のあり方
4 運動の定義と今のパラドックス
5 時間の実在性
結論 アリストテレスの時空論
あとがき
参考文献
索引
本書の目的と方法
本書の構成
『自然学』第3,4巻の方法――存在と定義
『自然学』第3,4巻における「パイノメナ」
第1章 運動の定義
1 はじめに
2 エンテレケイアの意味と定義の循環
3 「可能的にあるもの」の構造
4 「そのようなものとして」
5 運動の定義と空間的・時間的延長
第2章 無限論――物体・現実態・可能態
1 はじめに
2 『自然学』第3巻第5章の物体観
3 分割無限における「分割」
4 分割無限は現実的に存在するか
5 分割無限の質料性
6 無限論と運動の概念
第3章 場所論――固有の場所と運動概念
1 はじめに
2 場所の要件
3 「うちにある」と場所のパラドックス
4 場所の不動性
5 場所の定義と物体の移動
第4章 空虚論――非存在の論証と物体
1 はじめに
2 力学的反論――『自然学』第4巻第8章215a24-216a11
3 空虚肯定論の報告と批判
4 「空虚それ自体」の検討――『自然学』第4巻第8章216a26-b16
5 空虚,場所,運動
第5章 時間論――時間の実在性
1 はじめに
2 時間のパラドックス
3 時間の定義と時間のあり方
4 運動の定義と今のパラドックス
5 時間の実在性
結論 アリストテレスの時空論
あとがき
参考文献
索引
内容説明
「時間とは何か」「空間とは何か」をアリストテレスは『自然学』第3巻・第4巻で集中的に考察している。
それら時空論は,背景として質料形相論やカテゴリー論,可能態・現実態から,さらに四元素説や四原因論と目的論的自然観まで,アリストテレスの哲学的諸概念や自然哲学的理論を基盤に展開されている。著者はテキストを正面に据えて,存在論的な観点からその論理の構造と存在論的な前提を解明する。
『自然学』は多くのトピックを寄せ集めた作品とされ,個別の分析が主流となっているが,著者は第3・4巻を単一の著作と見なし,そこでは運動論を軸に「運動に続くもの」としての無限,場所,空虚,時間が統一的に議論されていることを明らかにする。
古典的テキストの読解には,現代的な問題関心から接近する方法とテキストの歴史的位相と背景を踏まえて読み取る方法があり,とくに自然哲学の領域は強い歴史性をもっている。著者はアリストテレスの知見を再現しつつ,現代的な課題への射程を探究し,時間や空間を哲学的に扱う上で,ニュートン的時空論以外の可能性を検討する意義を示す。本書は現代の時間と空間理解に新たな一石を投じた意欲作である。