目次
序文
第一部 ボダン,そしてモンテーニュからデカルトへ
第一章 ジャン・ボダン,『七賢人の対話』,自然宗教の起源
第二章 モンテーニュと近代懐疑主義
第三章 デカルトと懐疑主義――古代人か近代人か?
第四章 ガッサンディとホッブズ――空間と「世界の無化」の仮説
第二部 マルブランシュ,そしてベールからヒュームへ
第五章 マルブランシュ,アルノー,ライプニッツのあいだで――ピエール・ベールと神の統治のアポリア
第六章 ベールにおける懐疑主義的無神論の位置
第七章 地下文書におけるマルブランシュ主義の系譜――シャール,デュマルセ,テラソン
第八章 ヒューム,ベール,『自然宗教をめぐる対話』
解説(谷川多佳子)
後書き
原注
人名索引
内容説明
16-17世紀の西欧の知的世界において,大きな影響を与えた懐疑主義。それは近代思想の単なる一潮流であるのではなく,様々な立場の懐疑主義者,またその対抗者をも巻き込んだ論争の歴史である。ここでは,形而上学,宗教,自然学,認識論といった様々な部門の問題が取り上げられ,まさに「近代」を特徴付ける考察が繰り広げられる。
第一部では,ジャン・ボダンの残した地下文書『七賢人の対話』と自然宗教の起源,古代懐疑主義を解釈し直したモンテーニュの懐疑主義の特徴,デカルトのテクストで論じられている「懐疑論者たち」とは誰なのか,ガッサンディの空間概念についてホッブズとの比較からその固有性を読み解く。
第二部では,神の力能・意志に関するマルブランシュ,アルノー,ライプニッツとベールとの比較,ベールにおける無神論と有神論の線引きを具体的に考察,さらにマルブランシュ形而上学が18世紀初めの急進的理神論の地下文書に与えた影響を三つのテクストを取り上げ,ヒューム『自然宗教をめぐる対話』の弁神論をめぐる議論をベールと対比して読解する。
本書は,ルネサンス思想・近代哲学を専門とし世界的に注目されている著者が,地下文書など一次資料を渉猟し,汎ヨーロッパ的な視点から影響関係,論争を丹念に探り出した,近代哲学研究の新指標。