目次
第Ⅰ部 デカルト哲学の形成
第一章 ポンポナッツィとトマス・アクィナス――魂の不死性をめぐって
一 ルネサンスの思想状況
二 ポンポナッツィのトマス理解
三 ポンポナッツィのオリジナリティ
第二章 デカルトと理性
一 デカルト的理性の形成(合理主義,科学革命,懐疑論)
二 デカルト的理性の意味(良識,理性の存在,生得性,平等性,自然と臆見)
第三章 コギトと機械論
一 コギトの生成
二 機械論の生成
三 コギトと機械論――心身問題の発生
四 同時代人の反応(パスカル,マルブランシュ)
コラム1 ストア哲学とデカルト
第Ⅱ部 書簡をめぐって
第四章 デカルト=ベークマン往復書簡
一 1619年の書簡をめぐって
二 1630-34年の書簡をめぐって
(1)ベークマンとデカルトの状況
(2)デカルト=ベークマン関係年表
(3)書簡の概要と解釈
第五章 某氏=デカルト往復書簡(1641年7-8月)
一 反論と答弁
二 主要論点
第六章 デカルトの書簡集とその意義
一 書簡集の西洋語版と日本語版
二 書簡集の意義
コラム2 新発見のメルセンヌ宛て書簡
第Ⅲ部 同時代の人たち
第七章 アルノーとライプニッツ
一 ライプニッツ=アルノー往復書簡
二 神の自由
三 実体とその相互関係
第八章 ガッサンディの生涯とデカルト
一 ガッサンディの前半生
二 論争と和解
三 晩年
第九章 パスカルの精神と西田幾多郎
一 パスカルと西田
二 考える葦
三 中間者としての人間
四 サンチマン
コラム3 老子とスピノザの哲学
第Ⅳ部 デカルトの受容と哲学の諸問題
第十章 近代日本とデカルト哲学
はじめに
一 明治期における研究
二 大正期における研究
三 昭和期における研究
四 デカルト哲学受容の影響
資料・デカルト研究誌年表 1873-1950年
第十一章 ことばと人間
一 思考とことば
二 意味の理解
三 ことばとコミュニケーション
四 動物のことば・機械のことば
第十二章 西洋哲学における生と死
一 プラトンとエピクロス
二 デカルト・スピノザ・ベルクソン・ラッセル
三 モンテーニュとパスカル
四 ハイデガーとサルトル
五 死と生命倫理
コラム4 老いと西洋思想(キケロ デカルト ボーヴォワール)
あとがき/初出一覧/索引
内容説明
デカルト哲学を中心に,その哲学史的文脈や影響などを多岐にわたる視点から考察し,17世紀の思想的転換の意義を探った長きにわたる研究成果である。
第Ⅰ部はポンポナッツィの近世合理主義思想を踏まえて,理性の生得性や平等性などデカルト哲学の独自性を解明,コギト,機械論,心身問題に光を当てる。
第Ⅱ部では,著者が主宰して本書と相前後して完結する『デカルト全書簡集』(全8巻)に関わる,デカルト哲学における書簡の意義とその実態について考察される。デカルトの生活や哲学論争の細部が描かれているだけでなく,書簡にしか見られない事実など今後のデカルト研究にとり示唆に富む論述となっている。
第Ⅲ部はデカルトと同時代のアルノー=ライプニッツ論争やガッサンディとデカルトとの関係,さらに西田幾多郎がパスカルをどのように受容したかなど,興味深いテーマが扱われる。
最後の第Ⅳ部では,わが国のデカルト哲学の受容を文献学的視点をも交えて紹介するとともに,ことば,生と死,老いなど古代から現代まで常に課題となるテーマを通してデカルトの立ち位置を検証する。
書簡集の完訳など新たな環境が整備されるなかで,今後のデカルト研究にとって刺激に富んだ一書である。