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人文科学における「解釈」のアクチュアリティ
著者 | 立正大学人文科学研究所創立60周年記念論集編集委員会 編 |
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ジャンル | 哲学・思想 |
出版年月日 | 2022/03/25 |
ISBN | 9784862853592 |
判型・ページ数 | A5・368ページ |
定価 | 本体4,500円+税 |
在庫 | 在庫あり |
目次
まえがき
Ⅰ 哲学における「解釈」のアクチュアリティ
解釈学的哲学のアクチュアリティ(村田純一)
1 解釈と科学的実在論――科学的実践の解釈学(村田純一)
一 理解と解釈を基本にする哲学
(1) 哲学的含意
(2) 言語的理解と知覚的「理解」
(3) 科学的実在論をめぐるテイラーとローティ
二 巨大ブラックホールの観測
(1) 光学望遠鏡と電波望遠鏡
(2) 見えないものを見えるようにする「解釈」
(3) ブラックホールの実在の意味
2 「解釈」の問題系と「表現」の真理性――後期西田哲学を導きとして(板橋勇仁)
序
一 「解釈学」的哲学の問題意識
二 「解釈」という方法の持つ問題
三 後期西田哲学における「表現」という問題意識
四 「表現」と「行為的直観」
五 世界が自らを「表現する」ことと「非連続の連続」
六 「表現」の創造性と消滅性
結
3 実存についての解釈――我々は「誰」であるのか(木村史人)
一 存在者の意味としての世界は実存(誰)から意義付けられる
(1) 『存在と時間』期における世界の分析
(2) 『真理の本質について』における二つの図
(3) 我々は「誰」であるのか ハイデガーの世人論とマッキンタイアの物語論
二 「二重の否定の体系における二重の否定」としての意味
(1) 言葉の発達
(2) 【問い4】への応答 物語文による意味の分析
(3) 【問い1】【問い2】【問い3】への応答 図2の捉え直し
三 物語としての歴史における「誰」の解釈
(1) 【問い5―1】への応答 「誰」という意味はどのように解釈されているのか
(2) 【問い5―2】への応答 意図とはどのようなあり方をしており,それによって行為はいかに規定されているのか
おわりに
Ⅱ 歴史学・文学における「解釈」のアクチュアリティ
言語もしくは作品「解釈」のアクチュアリティ(石山秀和)
4 山東京山著『教草女房形気』にみる江戸庶民の日常――草双紙を史料として解釈する(石山秀和)
はじめに
一 『教草女房形気』の概要
二 『教草女房形気』にみえる子ども
三 随筆にみえる江戸の子ども
おわりに
5 方言で解釈すること,それを伝えること(白岩広行)
はじめに
一 方言の理解と発話の解釈
(1) 方言がわからないと誤解が生じる
(2) 方言がわかると解釈が深まる
二 「けられる」を通じた方言談話の解釈
(1) 「けられる」という表現
(2) 類義表現「けられる」「もらう」の比較
(3) 「けられる」の使用状況から談話を解釈する
三 方言による解釈を伝えるために
(1) 記述研究とは
(2) 筆者の取り組み
おわりに
6 「医者と医者の妻」に潜在された人種,性,宗教の諸問題(萩野智美)
一 混血のインディアン・ディックとの対峙
(1) ディックをとおして読み取れる人種的侮蔑
(2) 丸太への行為が示唆する性的侮蔑
(3) ディックにみられる「アメリカ化」
(4) 「門」に潜在化された宗教性
二 妻との夫婦関係の破綻にみられるアダムズ医師の性的アイデンティティ
三 息子ニックの存在意義
四 アダムズ医師の弱さが示唆するもの
7 英語教育における「解釈」についてのあゆみ(瀧口美佳)
一 英語教育における解釈のあゆみ
二 英文解釈について
三 多読へのアプローチ
四 第二言語習得の観点から
まとめ
Ⅲ 社会学における「解釈」のアクチュアリティ
解釈的社会学の多様性とその客観性への問い――「解釈的社会学のアクチュアリティ」に代えて(片桐雅隆)
8 解釈的社会学の展開と課題(片桐雅隆)
一 解釈的社会学の展開
(1) 社会学のパラダイム転換
(2) 解釈的社会学は主観主義的でミクロな社会学理論か
(3) 社会学の中での解釈的社会学の位置――マイナーからメジャーへ
二 解釈的社会学の課題――二つの側面
(1) リアリズム・分子生物学的な物質主義からの挑戦
(2) ポストヒューマン論からの挑戦
おわりに
9 「腑に落ちる」としての解釈――古流武術への問いかけを事例として(田隝和久)
一 社会学の学問的位置づけへの違和
二 「中庸」という視座
三 「生活感情」という語法
四 高田保馬にみる「生活感情」
五 体験共有幻想としての術技伝承
六 「解釈の学」としての社会学
10 ライフヒストリー・アプローチにおける「解釈」とは何か(武井順介)
はじめに――ライフヒストリー・アプローチはどのような手法で何をするといわれているのか
一 水野論文にみるライフヒストリーの解釈の方法
二 『日本オーラル・ヒストリー研究』に掲載された論文にみる「解釈」
(1) 日本オーラル・ヒストリー学会と『日本オーラル・ヒストリー研究』
(2) 「現在を生きる原爆被害者――被爆体験を語るという実践を手がかりに」にみる解釈の方法
(3) 「遺骨と追悼――北海道朱鞠内における遺骨発掘運動を事例として」にみる解釈の方法
(4) 「沖縄の戦死者をめぐる語り――民間巫者・ユタを事例として」にみる解釈の方法
(5) 「「粋」の継承――高度経済成長時代の花街・京都北野上七軒の元仲居の聞き取りを中心に」にみる解釈の方法
(6) 「炭鉱の閉山に伴う広域移動経験者のライフヒストリー ――生活と自己の再構築に着目して」にみる解釈の方法
三 LHAにおける「解釈」とは何か――ここまでの知見の整理
おわりに
11 読み手のテクスト解釈はいかに接近可能か(浅岡隆裕)
一 解釈の共同性への理論的アプローチ
(1) はじめに 問題の所在
(2) 解釈共同体とは
(3) 解釈共同体に関わる先行研究
二 メディア研究と解釈共同体
(1) 研究史の中の位置づけ
(2) オーディエンスの受容過程研究
(3) 寄せられた批判と有効性に関する検討
(4) メディア作品の受け手集団=「読者共同体」との関わり
三 テクスト解釈とネット空間
(1) 拡張される解釈共同体
(2) ネット上でのテクストをどう分析するか
(3) 映画のレビューサイトの資料批判
(4) 分析の試行
(5) テクスト解釈への複眼的なアプローチ
まとめにかえて
12 伝承における解釈の変遷(野呂一仁)
一 問題の所在
二 なぜ獅子舞なのか
三 獅子舞とは何か
四 釡谷獅子舞保存会
(1) 獅子舞の準備
(2) 獅子舞当日
五 釡谷獅子舞を取り巻く状況とそこでの解釈
まとめとして
あとがき
執筆者紹介
索引
Ⅰ 哲学における「解釈」のアクチュアリティ
解釈学的哲学のアクチュアリティ(村田純一)
1 解釈と科学的実在論――科学的実践の解釈学(村田純一)
一 理解と解釈を基本にする哲学
(1) 哲学的含意
(2) 言語的理解と知覚的「理解」
(3) 科学的実在論をめぐるテイラーとローティ
二 巨大ブラックホールの観測
(1) 光学望遠鏡と電波望遠鏡
(2) 見えないものを見えるようにする「解釈」
(3) ブラックホールの実在の意味
2 「解釈」の問題系と「表現」の真理性――後期西田哲学を導きとして(板橋勇仁)
序
一 「解釈学」的哲学の問題意識
二 「解釈」という方法の持つ問題
三 後期西田哲学における「表現」という問題意識
四 「表現」と「行為的直観」
五 世界が自らを「表現する」ことと「非連続の連続」
六 「表現」の創造性と消滅性
結
3 実存についての解釈――我々は「誰」であるのか(木村史人)
一 存在者の意味としての世界は実存(誰)から意義付けられる
(1) 『存在と時間』期における世界の分析
(2) 『真理の本質について』における二つの図
(3) 我々は「誰」であるのか ハイデガーの世人論とマッキンタイアの物語論
二 「二重の否定の体系における二重の否定」としての意味
(1) 言葉の発達
(2) 【問い4】への応答 物語文による意味の分析
(3) 【問い1】【問い2】【問い3】への応答 図2の捉え直し
三 物語としての歴史における「誰」の解釈
(1) 【問い5―1】への応答 「誰」という意味はどのように解釈されているのか
(2) 【問い5―2】への応答 意図とはどのようなあり方をしており,それによって行為はいかに規定されているのか
おわりに
Ⅱ 歴史学・文学における「解釈」のアクチュアリティ
言語もしくは作品「解釈」のアクチュアリティ(石山秀和)
4 山東京山著『教草女房形気』にみる江戸庶民の日常――草双紙を史料として解釈する(石山秀和)
はじめに
一 『教草女房形気』の概要
二 『教草女房形気』にみえる子ども
三 随筆にみえる江戸の子ども
おわりに
5 方言で解釈すること,それを伝えること(白岩広行)
はじめに
一 方言の理解と発話の解釈
(1) 方言がわからないと誤解が生じる
(2) 方言がわかると解釈が深まる
二 「けられる」を通じた方言談話の解釈
(1) 「けられる」という表現
(2) 類義表現「けられる」「もらう」の比較
(3) 「けられる」の使用状況から談話を解釈する
三 方言による解釈を伝えるために
(1) 記述研究とは
(2) 筆者の取り組み
おわりに
6 「医者と医者の妻」に潜在された人種,性,宗教の諸問題(萩野智美)
一 混血のインディアン・ディックとの対峙
(1) ディックをとおして読み取れる人種的侮蔑
(2) 丸太への行為が示唆する性的侮蔑
(3) ディックにみられる「アメリカ化」
(4) 「門」に潜在化された宗教性
二 妻との夫婦関係の破綻にみられるアダムズ医師の性的アイデンティティ
三 息子ニックの存在意義
四 アダムズ医師の弱さが示唆するもの
7 英語教育における「解釈」についてのあゆみ(瀧口美佳)
一 英語教育における解釈のあゆみ
二 英文解釈について
三 多読へのアプローチ
四 第二言語習得の観点から
まとめ
Ⅲ 社会学における「解釈」のアクチュアリティ
解釈的社会学の多様性とその客観性への問い――「解釈的社会学のアクチュアリティ」に代えて(片桐雅隆)
8 解釈的社会学の展開と課題(片桐雅隆)
一 解釈的社会学の展開
(1) 社会学のパラダイム転換
(2) 解釈的社会学は主観主義的でミクロな社会学理論か
(3) 社会学の中での解釈的社会学の位置――マイナーからメジャーへ
二 解釈的社会学の課題――二つの側面
(1) リアリズム・分子生物学的な物質主義からの挑戦
(2) ポストヒューマン論からの挑戦
おわりに
9 「腑に落ちる」としての解釈――古流武術への問いかけを事例として(田隝和久)
一 社会学の学問的位置づけへの違和
二 「中庸」という視座
三 「生活感情」という語法
四 高田保馬にみる「生活感情」
五 体験共有幻想としての術技伝承
六 「解釈の学」としての社会学
10 ライフヒストリー・アプローチにおける「解釈」とは何か(武井順介)
はじめに――ライフヒストリー・アプローチはどのような手法で何をするといわれているのか
一 水野論文にみるライフヒストリーの解釈の方法
二 『日本オーラル・ヒストリー研究』に掲載された論文にみる「解釈」
(1) 日本オーラル・ヒストリー学会と『日本オーラル・ヒストリー研究』
(2) 「現在を生きる原爆被害者――被爆体験を語るという実践を手がかりに」にみる解釈の方法
(3) 「遺骨と追悼――北海道朱鞠内における遺骨発掘運動を事例として」にみる解釈の方法
(4) 「沖縄の戦死者をめぐる語り――民間巫者・ユタを事例として」にみる解釈の方法
(5) 「「粋」の継承――高度経済成長時代の花街・京都北野上七軒の元仲居の聞き取りを中心に」にみる解釈の方法
(6) 「炭鉱の閉山に伴う広域移動経験者のライフヒストリー ――生活と自己の再構築に着目して」にみる解釈の方法
三 LHAにおける「解釈」とは何か――ここまでの知見の整理
おわりに
11 読み手のテクスト解釈はいかに接近可能か(浅岡隆裕)
一 解釈の共同性への理論的アプローチ
(1) はじめに 問題の所在
(2) 解釈共同体とは
(3) 解釈共同体に関わる先行研究
二 メディア研究と解釈共同体
(1) 研究史の中の位置づけ
(2) オーディエンスの受容過程研究
(3) 寄せられた批判と有効性に関する検討
(4) メディア作品の受け手集団=「読者共同体」との関わり
三 テクスト解釈とネット空間
(1) 拡張される解釈共同体
(2) ネット上でのテクストをどう分析するか
(3) 映画のレビューサイトの資料批判
(4) 分析の試行
(5) テクスト解釈への複眼的なアプローチ
まとめにかえて
12 伝承における解釈の変遷(野呂一仁)
一 問題の所在
二 なぜ獅子舞なのか
三 獅子舞とは何か
四 釡谷獅子舞保存会
(1) 獅子舞の準備
(2) 獅子舞当日
五 釡谷獅子舞を取り巻く状況とそこでの解釈
まとめとして
あとがき
執筆者紹介
索引
内容説明
人文科学は「問いを立て,解答を導き出す」ことを目的に,解釈を通して多様な価値観と選択を通して最善の生き方を実現するものである。しかし今日,大学への進学の動機は,就職に有利,スキルの獲得,資格取得が主流である。客観的法則による自然科学の信頼と有用性が重視されるなか,解釈の曖昧さを伴う人文科学への信頼に応えるために,既存の知から飛躍する新たな「解釈」が期待される。それらの事情を踏まえ本書は人文科学の実践的な意義を問うものである。
第1部では,解釈という営みと学としての「解釈学」の成立過程を解明する。自然科学の実在論的性格を解釈学に拡張し,また自己理解の形成について分析する。さらに理解と解釈が表現世界を通して創造的に展開する過程を考察する。
第2部では,戯作を史料に江戸庶民の日常を観察し,方言の記述分析から解釈の可能性を吟味する。ヘミングウェイ『医者と医者の妻』で描かれた人物や社会を観察し,英語教育の解釈法についてその意義を考察。
第3部では,1960年代に登場した解釈的社会学から分析する。ゴッホ「ひまわり」の多様な解釈の可能性を検討,ネット上の作品やコンテンツの解釈を論じる。ライフヒストリーの主観性と客観性の問題,そして獅子舞の地域における解釈と伝承を論じ,古武術における「腑に落ちる」の共有体験の可能性を考察する。
第1部では,解釈という営みと学としての「解釈学」の成立過程を解明する。自然科学の実在論的性格を解釈学に拡張し,また自己理解の形成について分析する。さらに理解と解釈が表現世界を通して創造的に展開する過程を考察する。
第2部では,戯作を史料に江戸庶民の日常を観察し,方言の記述分析から解釈の可能性を吟味する。ヘミングウェイ『医者と医者の妻』で描かれた人物や社会を観察し,英語教育の解釈法についてその意義を考察。
第3部では,1960年代に登場した解釈的社会学から分析する。ゴッホ「ひまわり」の多様な解釈の可能性を検討,ネット上の作品やコンテンツの解釈を論じる。ライフヒストリーの主観性と客観性の問題,そして獅子舞の地域における解釈と伝承を論じ,古武術における「腑に落ちる」の共有体験の可能性を考察する。