ホーム > 〈声〉とテクストの射程
目次
はじめに(高木 裕)
Ⅰ〈声〉の批評原理
1 声の詩学(ドミニク・ラバテ/逸見龍生訳)
声の効果を読む/主体か,複数の声か
2 小林秀雄の「宿命の主調低音」について(先田 進)
はじめに/初期小説における自意識/自意識とボオドレエル受容/「宿命の主調低音」とは?/「美神」と「宿命」/おわりに
Ⅱ〈声〉とエクリチュール
3 消し去られた〈声〉が語るもの――ネルヴァルの1841年の草稿詩篇を中心に(高木 裕)
はじめに/ペルソナの〈声〉/1841年の草稿/消し去られた〈声〉/おわりに
4 声の中の空虚――ボードレール,ヴェルレーヌ,マラルメ(エリック・ブノワ/逸見龍生訳)
内側のつぶやき/不在における声,不在の声/韻律における空隙
5 エドガー・アラン・ポーの〈声〉を聞く――テクストの表層から構造へ(平野幸彦)
はじめに/「タール博士とフェザー教授の療法」を読む/諷刺されているのは誰か/諷刺対象としてのアメリカ南部/《タール・アンド・フェザー》/奴隷制度との関わり/北部人の目から見た「タールとフェザー」/マガジニスト・ポーのジレンマ
6 エクリチュールの〈声〉――小林秀雄の文章を中心に(佐々木充)
はじめに/〈声〉の経験/〈声〉の複数性/〈声〉と他者/翻訳における〈声〉/〈声〉と無私
Ⅲ〈声〉の文化史
7 声を読む――プルーストとホメーロスの場合(工藤 進)
固有名詞があらわすもの――プルーストの場合/声があらわすもの/声のテクスト――ホメーロスの場合/ベレロポンテースの挿話の「テクスト」と「コンテクスト」/テクストを運ぶ使者――『イーリアス』第9巻/おわりに
8 ことばの伝承・声の伝承――平曲の〈小秘事〉を中心に(鈴木孝庸)
平曲の秘曲とは/中世の平家語りと「秘曲」/平曲譜本の諸本/「祇園精舎」をめぐって/「延喜聖代」をめぐって/おわりに
9 ディケンズの公開朗読における〈声〉(金山亮太)
はじめに/催眠術への傾倒/公開朗読の記録/作品選択の事情/聴衆に届ける〈声〉/メロドラマへの回帰/滅びゆく〈声〉
10 ドストエフスキーと「告白小説」のプラン(番場 俊)
「どうやらこのみぞれのせいで……」/「告白小説」のプラン/「告白」の三つの仕方/二重の書物/分散する声
11 〈声〉から〈声もどき〉へ――複製技術時代の人造人間(石田美紀)
あまりにも人間的な〈声〉/話す機械としての人造人間――蓄音機/シミュラークルとしての人造人間――映画/〈声〉から〈声もどき〉へ――「ボーカロイド(VOCALOID)」/いささか楽観的に
Ⅰ〈声〉の批評原理
1 声の詩学(ドミニク・ラバテ/逸見龍生訳)
声の効果を読む/主体か,複数の声か
2 小林秀雄の「宿命の主調低音」について(先田 進)
はじめに/初期小説における自意識/自意識とボオドレエル受容/「宿命の主調低音」とは?/「美神」と「宿命」/おわりに
Ⅱ〈声〉とエクリチュール
3 消し去られた〈声〉が語るもの――ネルヴァルの1841年の草稿詩篇を中心に(高木 裕)
はじめに/ペルソナの〈声〉/1841年の草稿/消し去られた〈声〉/おわりに
4 声の中の空虚――ボードレール,ヴェルレーヌ,マラルメ(エリック・ブノワ/逸見龍生訳)
内側のつぶやき/不在における声,不在の声/韻律における空隙
5 エドガー・アラン・ポーの〈声〉を聞く――テクストの表層から構造へ(平野幸彦)
はじめに/「タール博士とフェザー教授の療法」を読む/諷刺されているのは誰か/諷刺対象としてのアメリカ南部/《タール・アンド・フェザー》/奴隷制度との関わり/北部人の目から見た「タールとフェザー」/マガジニスト・ポーのジレンマ
6 エクリチュールの〈声〉――小林秀雄の文章を中心に(佐々木充)
はじめに/〈声〉の経験/〈声〉の複数性/〈声〉と他者/翻訳における〈声〉/〈声〉と無私
Ⅲ〈声〉の文化史
7 声を読む――プルーストとホメーロスの場合(工藤 進)
固有名詞があらわすもの――プルーストの場合/声があらわすもの/声のテクスト――ホメーロスの場合/ベレロポンテースの挿話の「テクスト」と「コンテクスト」/テクストを運ぶ使者――『イーリアス』第9巻/おわりに
8 ことばの伝承・声の伝承――平曲の〈小秘事〉を中心に(鈴木孝庸)
平曲の秘曲とは/中世の平家語りと「秘曲」/平曲譜本の諸本/「祇園精舎」をめぐって/「延喜聖代」をめぐって/おわりに
9 ディケンズの公開朗読における〈声〉(金山亮太)
はじめに/催眠術への傾倒/公開朗読の記録/作品選択の事情/聴衆に届ける〈声〉/メロドラマへの回帰/滅びゆく〈声〉
10 ドストエフスキーと「告白小説」のプラン(番場 俊)
「どうやらこのみぞれのせいで……」/「告白小説」のプラン/「告白」の三つの仕方/二重の書物/分散する声
11 〈声〉から〈声もどき〉へ――複製技術時代の人造人間(石田美紀)
あまりにも人間的な〈声〉/話す機械としての人造人間――蓄音機/シミュラークルとしての人造人間――映画/〈声〉から〈声もどき〉へ――「ボーカロイド(VOCALOID)」/いささか楽観的に
内容説明
長きにわたる〈声〉の文化,口承の歴史を前史として,文字文化は写本の時代から印刷術の発明をへてテクスト文化を成熟させてきたが,反面では〈声〉のもつ身体性は文字表面から削り落とされた。
それに呼応するように文字言語に〈声〉の印象や効果を与えようとする様々な試みがなされてきた。
本書は〈声〉の諸相に多面的なアプローチを試み,〈声〉の文化,音声言語と文字言語,口承とテクスト,テクスト生成とその解読などを通して,〈声〉とテクストが織りなす濃密で豊かな世界を開くことにより,新たな人文学の構築を目指す。
Ⅰ部は批評原理の視点で〈声〉という根本的問題を考察,主体と密接に結びついた〈声〉の問題を探る。
Ⅱ部では文学テクストが主体や言葉と本質的に関係するだけでなく,歴史的,社会的,文化的コンテクストの中で〈声〉と具体的に関わる姿を分析する。
Ⅲ部は文化史的な観点から〈声〉とテクストの関係を幅広く捉えるため,ホメーロスとプルースト,平曲,ディケンズの朗読,ドストエフスキーの告白小説,人造人間としてのボーカロイドなど多様な側面に光を当て,その豊かな可能性を示す。
文字言語の中から〈声〉が立ち上がり,そこに現前する主体に読み手が応答するとき,〈声〉はわれわれに何を伝えてくれるのか,それを明らかにする。
それに呼応するように文字言語に〈声〉の印象や効果を与えようとする様々な試みがなされてきた。
本書は〈声〉の諸相に多面的なアプローチを試み,〈声〉の文化,音声言語と文字言語,口承とテクスト,テクスト生成とその解読などを通して,〈声〉とテクストが織りなす濃密で豊かな世界を開くことにより,新たな人文学の構築を目指す。
Ⅰ部は批評原理の視点で〈声〉という根本的問題を考察,主体と密接に結びついた〈声〉の問題を探る。
Ⅱ部では文学テクストが主体や言葉と本質的に関係するだけでなく,歴史的,社会的,文化的コンテクストの中で〈声〉と具体的に関わる姿を分析する。
Ⅲ部は文化史的な観点から〈声〉とテクストの関係を幅広く捉えるため,ホメーロスとプルースト,平曲,ディケンズの朗読,ドストエフスキーの告白小説,人造人間としてのボーカロイドなど多様な側面に光を当て,その豊かな可能性を示す。
文字言語の中から〈声〉が立ち上がり,そこに現前する主体に読み手が応答するとき,〈声〉はわれわれに何を伝えてくれるのか,それを明らかにする。