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目次
序論――移動する地域社会学に向けて
第Ⅰ部 理論と方法
第1章 創発の社会学からアクターネットワーク理論へ
1 モバイルな空間変容と地域社会
2 創発の社会学
3 創発の社会学からアクターネットワーク理論へ
4 移動する地域社会学の条件
第2章 アクターネットワーク理論の基本概念をたどる――調査者と被調査者にとっての「移動の自由」
1 はじめに――ANTの基本概念の出自をたどる
2 パリ学派記号論+エスノメソドロジー=ANT
3 アクターとアクタン――テクストによる報告の構成要素
4 中間項と媒介子――アクターとネットワークの等価性
5 強度の試験――「強く」実在するアクターの誕生
6 下方推移/上方推移――参照フレームの移行
7 循環する指示,不変の可動物――物質と記号の果てしない指示の連鎖
8 科学としてのANTの意義――中間項を媒介子にして連鎖させ組み直す
第3章 アクターネットワーク理論と記述的社会学の復権――社会学者が説明しないための「理論」
1 自然なモノの歴史性――ANTの実在論的態度
2 連関の社会学としてのアクターネットワーク理論
3 陰謀論に手を貸さない社会学的批判の条件――「批判的に近づく」,「足し算の批判」
4 コスモポリティクスに資する科学としての社会学
第4章 アクターネットワーク理論と岸政彦の「生活史」――地域社会の歴史と構造をめぐって
1 事実の構築――問題意識をつなぐ
2 「寛容の原則」と「翻訳の社会学」をつなぐ
3 一般化,理論化――「ディテール」と「失敗と隣り合わせの報告」をつなぐ
4 「偶然と必然」と「媒介子と中間項」をつなぐ
第Ⅱ部 ケーススタディ
第5章 文化遺産と地域社会――仙台市柳生地区の町内会と柳生和紙
1 緒論――地域の共同性を構築する事物の連関に目を向ける
2 柳生地域の歴史と構造
3 地域社会をめぐる制度的連関
4 地域社会をめぐる非制度的連関
5 結論――複数の共同性をつなぐ連関の記述に向けて
第6章 「開発と文化」と地域社会――バリ島村落世界と観光開発
1 緒論――「開発と文化」を地域社会から考える
2 地域の開発と地域の文化――内発と外発の二分法を超えて
3 コロニアリズムによる地域の構築
4 「観光のまなざし」による地域の構築
5 地域社会の構築をめぐる新たな動き――アダットとディナスの二元性を超える連関
6 結論――「場所」を開発するローカル・ガバナンス
第7章 自立型観光開発と地域社会――バリ島南部サヌール村の場合
1 緒論――バリ島における地域住民組織
2 事例対象地サヌールの歴史地理
3 自立型開発を媒介にした「一つのサヌール」の構築
4 自立型開発の離床と再着床
5 変容する自立型開発と地域社会
6 結論
第8章 ポストコロニアリズムと地域社会――マカオの「街坊会」の場所性
1 緒論――マカオの境界性
2 マカオのデュアリティの由縁
3 コロニアル化するマカオにおける中国人社会
4 街坊の媒介子
5 コロニアル体制下の街坊会の成立
6 返還を前にした街坊会――連合総会の設立とパターナリズム
7 返還後の街坊会――市民社会における地位の低下
8 結論
第9章 災害「弱者」と地域社会――山形県内のNPOと「地域協働体」
1 緒論
2 地域社会と災害支援NPO――防災をめぐる媒介子の連鎖
3 災害弱者と地域社会の構築――きらりよしじまネットワークの場合
4 結論
第10章 災害支援NPOと地域社会――東日本大震災を対象にして
1 緒論――被災地とボランティアの翻訳
2 災害支援をめぐる社会福祉協議会とNPOの連関
3 平時からの/平時における地域社会とNPOの連関
4 結論――越境的な「災害文化」の形成に向けて
第11章 自治体病院再編をめぐる「批判」と地域社会――青森県西北五地域を対象にして
1 緒論
2 「上からの」再編計画の策定と住民の批判的意識の形成
3 自治体財政,病院会計,医師不足の窮状――医療システム合理性を受け入れた背景
4 再編前後の医療体制の変化――住民の批判的意識を検討するために
5 住民の批判的意識の検討――質問紙調査を踏まえて
結論
あとがき
参考文献
索引
第Ⅰ部 理論と方法
第1章 創発の社会学からアクターネットワーク理論へ
1 モバイルな空間変容と地域社会
2 創発の社会学
3 創発の社会学からアクターネットワーク理論へ
4 移動する地域社会学の条件
第2章 アクターネットワーク理論の基本概念をたどる――調査者と被調査者にとっての「移動の自由」
1 はじめに――ANTの基本概念の出自をたどる
2 パリ学派記号論+エスノメソドロジー=ANT
3 アクターとアクタン――テクストによる報告の構成要素
4 中間項と媒介子――アクターとネットワークの等価性
5 強度の試験――「強く」実在するアクターの誕生
6 下方推移/上方推移――参照フレームの移行
7 循環する指示,不変の可動物――物質と記号の果てしない指示の連鎖
8 科学としてのANTの意義――中間項を媒介子にして連鎖させ組み直す
第3章 アクターネットワーク理論と記述的社会学の復権――社会学者が説明しないための「理論」
1 自然なモノの歴史性――ANTの実在論的態度
2 連関の社会学としてのアクターネットワーク理論
3 陰謀論に手を貸さない社会学的批判の条件――「批判的に近づく」,「足し算の批判」
4 コスモポリティクスに資する科学としての社会学
第4章 アクターネットワーク理論と岸政彦の「生活史」――地域社会の歴史と構造をめぐって
1 事実の構築――問題意識をつなぐ
2 「寛容の原則」と「翻訳の社会学」をつなぐ
3 一般化,理論化――「ディテール」と「失敗と隣り合わせの報告」をつなぐ
4 「偶然と必然」と「媒介子と中間項」をつなぐ
第Ⅱ部 ケーススタディ
第5章 文化遺産と地域社会――仙台市柳生地区の町内会と柳生和紙
1 緒論――地域の共同性を構築する事物の連関に目を向ける
2 柳生地域の歴史と構造
3 地域社会をめぐる制度的連関
4 地域社会をめぐる非制度的連関
5 結論――複数の共同性をつなぐ連関の記述に向けて
第6章 「開発と文化」と地域社会――バリ島村落世界と観光開発
1 緒論――「開発と文化」を地域社会から考える
2 地域の開発と地域の文化――内発と外発の二分法を超えて
3 コロニアリズムによる地域の構築
4 「観光のまなざし」による地域の構築
5 地域社会の構築をめぐる新たな動き――アダットとディナスの二元性を超える連関
6 結論――「場所」を開発するローカル・ガバナンス
第7章 自立型観光開発と地域社会――バリ島南部サヌール村の場合
1 緒論――バリ島における地域住民組織
2 事例対象地サヌールの歴史地理
3 自立型開発を媒介にした「一つのサヌール」の構築
4 自立型開発の離床と再着床
5 変容する自立型開発と地域社会
6 結論
第8章 ポストコロニアリズムと地域社会――マカオの「街坊会」の場所性
1 緒論――マカオの境界性
2 マカオのデュアリティの由縁
3 コロニアル化するマカオにおける中国人社会
4 街坊の媒介子
5 コロニアル体制下の街坊会の成立
6 返還を前にした街坊会――連合総会の設立とパターナリズム
7 返還後の街坊会――市民社会における地位の低下
8 結論
第9章 災害「弱者」と地域社会――山形県内のNPOと「地域協働体」
1 緒論
2 地域社会と災害支援NPO――防災をめぐる媒介子の連鎖
3 災害弱者と地域社会の構築――きらりよしじまネットワークの場合
4 結論
第10章 災害支援NPOと地域社会――東日本大震災を対象にして
1 緒論――被災地とボランティアの翻訳
2 災害支援をめぐる社会福祉協議会とNPOの連関
3 平時からの/平時における地域社会とNPOの連関
4 結論――越境的な「災害文化」の形成に向けて
第11章 自治体病院再編をめぐる「批判」と地域社会――青森県西北五地域を対象にして
1 緒論
2 「上からの」再編計画の策定と住民の批判的意識の形成
3 自治体財政,病院会計,医師不足の窮状――医療システム合理性を受け入れた背景
4 再編前後の医療体制の変化――住民の批判的意識を検討するために
5 住民の批判的意識の検討――質問紙調査を踏まえて
結論
あとがき
参考文献
索引
内容説明
生活の場である地域の繋がりは,普段は目に見えないが災害時には命をも救う重要な役割を果たす。制度の変化や住民構成の変遷によりコミュニティは常に組み替えられ,テクノロジーの進展でヒトやモノは脱領域的に移動し繋がり,相互変容をし続ける。そこに構築される出来事としての地域社会はどのように記述できるか。
本書は,社会的現象が様々な存在の連関により生み出されるとするアクターネットワーク理論の視点から,地域社会の多様な動態を描き出す〈移動する地域社会学〉の理論と実践を結んだ研究成果である。
第Ⅰ部「理論と方法」では,アクターネットワーク理論の方法が有する社会学における意義を初めて体系的に明らかにする。提唱者ラトゥールの訳者でもある著者は,その理論をいかに調査に活かすかを詳細に論じ,社会学のあり方そのものをも問い直す。
第Ⅱ部「ケーススタディ」では,アジア各地のフィールドワークから,アクターネットワーク理論で地域社会を記述する意義を具体的に探究する。仙台市柳生地区ではモノを媒介とした新旧住民の相互変容から生まれる共同性を,バリ島では観光開発に伴う慣習や儀礼の変容と刷新を,そしてマカオでは中国返還による住民組織の連関を歴史と現在からたどる。さらに山形における災害支援NPOの活動観察や,青森の自治体病院再編の調査では,地域社会の組み直しの可能性を探る。
社会学の新たな研究法に挑むと共に,町づくりや防災の取り組みにも豊かな着想を提供する画期的業績である。
本書は,社会的現象が様々な存在の連関により生み出されるとするアクターネットワーク理論の視点から,地域社会の多様な動態を描き出す〈移動する地域社会学〉の理論と実践を結んだ研究成果である。
第Ⅰ部「理論と方法」では,アクターネットワーク理論の方法が有する社会学における意義を初めて体系的に明らかにする。提唱者ラトゥールの訳者でもある著者は,その理論をいかに調査に活かすかを詳細に論じ,社会学のあり方そのものをも問い直す。
第Ⅱ部「ケーススタディ」では,アジア各地のフィールドワークから,アクターネットワーク理論で地域社会を記述する意義を具体的に探究する。仙台市柳生地区ではモノを媒介とした新旧住民の相互変容から生まれる共同性を,バリ島では観光開発に伴う慣習や儀礼の変容と刷新を,そしてマカオでは中国返還による住民組織の連関を歴史と現在からたどる。さらに山形における災害支援NPOの活動観察や,青森の自治体病院再編の調査では,地域社会の組み直しの可能性を探る。
社会学の新たな研究法に挑むと共に,町づくりや防災の取り組みにも豊かな着想を提供する画期的業績である。