ホーム > ブロッホと「多元的宇宙」
目次
序論
第一章 第一次世界大戦,ドイツ,文化
1 「1914年の夏」
2 文化戦争」の勃発??「文化」へのパトス
3 〈グローバルな近代化〉の時代の文化批判
4 ジンメルの事例
5 「文化戦争」へのブロッホの介入
第二章 「1789年の理念」をわがものとする
1 プロイセン・ドイツと「非同時代性」
2 ドイツと「戦争の罪」
3 光は西から
4 アメリカという希望
5 ドイツとデモクラシー
6 しかし「文明」だけではなく…
第三章 〈もう一つのドイツ〉というユートピア
1 「敗北の思考」のなかの文化批判
2 「プロテストするドイツ」
3 「農本ロマン主義」とその帰結
4 有機的なもの,土着的なものの魅惑と社会主義
5 文化的な多様性を求めて
第四章 ゴシック,表現主義,自己との出会い
1 ブロッホと表現主義
2 グローバルな「照応」と表現主義の誕生
3 ヴォリンガーという衝撃
4 「青騎士」の文化多元主義
5 ブロッホによる〈ゴシックの発見〉
6 「アレクサンドロスの遠征」――東方=北方への旅と自己邂逅
第五章 来るべき世界のヴィジョン
1 ロシア革命と世界史の目標
2 「赤いツァー,レーニン」――ボルシェヴィズムへの批判
3 マルクス主義との対決
4 ランダウアーとブロッホの「社会主義」
5 「非同時代性」と「多元的な宇宙」
6 過渡??〈ユダヤ性〉への問い
第六章 〈転位〉――ヴァイマル期のポジション規定
1 ヴァイマル時代への出立
2 革命から遠く離れて
3 帰郷と離郷??〈土着主義〉への批判
4 文化批判のメタ批判??イデオロギー批判的な修正
5 文化を斜めに横切る??表現主義と「この時代の遺産」
展望
第一章 第一次世界大戦,ドイツ,文化
1 「1914年の夏」
2 文化戦争」の勃発??「文化」へのパトス
3 〈グローバルな近代化〉の時代の文化批判
4 ジンメルの事例
5 「文化戦争」へのブロッホの介入
第二章 「1789年の理念」をわがものとする
1 プロイセン・ドイツと「非同時代性」
2 ドイツと「戦争の罪」
3 光は西から
4 アメリカという希望
5 ドイツとデモクラシー
6 しかし「文明」だけではなく…
第三章 〈もう一つのドイツ〉というユートピア
1 「敗北の思考」のなかの文化批判
2 「プロテストするドイツ」
3 「農本ロマン主義」とその帰結
4 有機的なもの,土着的なものの魅惑と社会主義
5 文化的な多様性を求めて
第四章 ゴシック,表現主義,自己との出会い
1 ブロッホと表現主義
2 グローバルな「照応」と表現主義の誕生
3 ヴォリンガーという衝撃
4 「青騎士」の文化多元主義
5 ブロッホによる〈ゴシックの発見〉
6 「アレクサンドロスの遠征」――東方=北方への旅と自己邂逅
第五章 来るべき世界のヴィジョン
1 ロシア革命と世界史の目標
2 「赤いツァー,レーニン」――ボルシェヴィズムへの批判
3 マルクス主義との対決
4 ランダウアーとブロッホの「社会主義」
5 「非同時代性」と「多元的な宇宙」
6 過渡??〈ユダヤ性〉への問い
第六章 〈転位〉――ヴァイマル期のポジション規定
1 ヴァイマル時代への出立
2 革命から遠く離れて
3 帰郷と離郷??〈土着主義〉への批判
4 文化批判のメタ批判??イデオロギー批判的な修正
5 文化を斜めに横切る??表現主義と「この時代の遺産」
展望
内容説明
資本主義による矛盾の認識,階級差別のない自由の王国というユートピアこそ「マルクス主義哲学者」エルンスト・ブロッホ(1885-1977)の思想の核心である。
本書は第一次大戦前からロシア革命,ヴァイマル期に至る初期の思索と体験に光を当て,マルクス主義者ブロッホの視点だけでは見えてこない,若きブロッホの多岐にわたる思想的葛藤を考察する。
世界大戦を契機として,まさに「一つの地球」という意識が生まれ,人類はいかに共存していくのかが問われた。ブロッホは普遍主義か多元主義かという二者択一ではなく,状況に応じて普遍化の戦略と差異化の戦略を使い分けていく。直線的な進歩の観念を攪乱する非同時代性,個別性を知覚するとともに,他方で人間の進歩という概念を捨て去ることなく,同時に場所の差異として〈多くのもの〉のために空間を作っていこうとする「多元的な宇宙」のヴィジョンを展開する。
著者は異なる思想を選択的に受容するブロッホの類い希な「結合の能力」が,異文化との出会いから生まれる文化のダイナミズムを捉え,多元主義的志向のなかで既存の理論を見直す有効な武器であることを明らかにする。
ブロッホの思想的水脈を発掘し,今日の〈グローバルな近代〉を理解する上で知的刺激に富む一書である。
本書は第一次大戦前からロシア革命,ヴァイマル期に至る初期の思索と体験に光を当て,マルクス主義者ブロッホの視点だけでは見えてこない,若きブロッホの多岐にわたる思想的葛藤を考察する。
世界大戦を契機として,まさに「一つの地球」という意識が生まれ,人類はいかに共存していくのかが問われた。ブロッホは普遍主義か多元主義かという二者択一ではなく,状況に応じて普遍化の戦略と差異化の戦略を使い分けていく。直線的な進歩の観念を攪乱する非同時代性,個別性を知覚するとともに,他方で人間の進歩という概念を捨て去ることなく,同時に場所の差異として〈多くのもの〉のために空間を作っていこうとする「多元的な宇宙」のヴィジョンを展開する。
著者は異なる思想を選択的に受容するブロッホの類い希な「結合の能力」が,異文化との出会いから生まれる文化のダイナミズムを捉え,多元主義的志向のなかで既存の理論を見直す有効な武器であることを明らかにする。
ブロッホの思想的水脈を発掘し,今日の〈グローバルな近代〉を理解する上で知的刺激に富む一書である。