ホーム > 視覚世界はなぜ安定して見えるのか
目次
第1章 相殺説と眼球位置信号
視覚世界の安定性/相殺説/流出説/流入説/エフェレンツ・コピー/コロラリー・ディスチャージ
第2章 眼球位置信号をめぐる古典的研究
眼筋の麻酔実験/眼球の受動的回転と運動感覚/パテ実験/眼球の受動的回転と視覚定位/斜視患者の定位――矯正手術の効果/動物における人為的な斜視の形成/眼神経の切断あるいは障害による求心経路の遮断
第3章 眼球位置信号の神経学的基盤
眼窩内の固有受容感覚に関する見解/眼筋の伸張による脳細胞の反応/眼球の位置に応じて反応が変化する脳細胞/眼球運動条件と刺激運動条件の比較/視線の動きに先行して受容野が移動するニューロン/受容野が空間位置に固定されたニューロン/コロラリー・ディスチャージの特定
第4章 眼球位置信号と視覚
サッカード時の位置判断の誤り/完全暗中での実験/網膜信号の歪み説/視覚情報がサッカード時の誤定位に及ぼす影響/サッカードにともなう視野の縮小/サッカード時の位置変化の見落とし
第5章 視覚世界の安定性を維持する心理学的しくみ
サッカード抑制/サッカード前後の視覚統合/サッカード前後の視覚情報の役割/サッカード時の時間知覚
第6章 まとめ
視覚世界の安定性/相殺説/流出説/流入説/エフェレンツ・コピー/コロラリー・ディスチャージ
第2章 眼球位置信号をめぐる古典的研究
眼筋の麻酔実験/眼球の受動的回転と運動感覚/パテ実験/眼球の受動的回転と視覚定位/斜視患者の定位――矯正手術の効果/動物における人為的な斜視の形成/眼神経の切断あるいは障害による求心経路の遮断
第3章 眼球位置信号の神経学的基盤
眼窩内の固有受容感覚に関する見解/眼筋の伸張による脳細胞の反応/眼球の位置に応じて反応が変化する脳細胞/眼球運動条件と刺激運動条件の比較/視線の動きに先行して受容野が移動するニューロン/受容野が空間位置に固定されたニューロン/コロラリー・ディスチャージの特定
第4章 眼球位置信号と視覚
サッカード時の位置判断の誤り/完全暗中での実験/網膜信号の歪み説/視覚情報がサッカード時の誤定位に及ぼす影響/サッカードにともなう視野の縮小/サッカード時の位置変化の見落とし
第5章 視覚世界の安定性を維持する心理学的しくみ
サッカード抑制/サッカード前後の視覚統合/サッカード前後の視覚情報の役割/サッカード時の時間知覚
第6章 まとめ
内容説明
私たちの眼は日常生活のほとんどの場面で絶えずさまざまな方向に動いている。視線を変えるたびに外界が動いて見えることはない。ビデオ・カメラの手元が揺れると映像もそれに応じて動く。しかし眼は動かしても視覚世界は静止して感じられる。これが「視覚世界の安定性」と呼ばれる現象で古くから知られているが,その神経学的基盤,心理学的しくみはいまだに明らかにされていない。
この現象を説明する伝統的な理論としては相殺説があるが,これについては著名な哲学者や生理学者,神経学者のあいだで激しい論争が繰り広げられてきた。相殺説では眼を動かしても外界が動いて見えないのは,眼を動かすと同時に眼の動きを伝える眼球位置信号である神経信号が発せられ,それによって網膜像の動きが相殺されるからであるとする。
本書は論争の歴史的経緯を説明するとともに,近年,眼球位置信号の神経学的基盤が次第に解明されてきた事情を紹介し,さらに心理物理学的な実験によって相殺説だけでは視覚世界の安定性を完全に説明できないことを明らかにする。
著者の四半世紀に及ぶ研究を集成した遺稿集である。
この現象を説明する伝統的な理論としては相殺説があるが,これについては著名な哲学者や生理学者,神経学者のあいだで激しい論争が繰り広げられてきた。相殺説では眼を動かしても外界が動いて見えないのは,眼を動かすと同時に眼の動きを伝える眼球位置信号である神経信号が発せられ,それによって網膜像の動きが相殺されるからであるとする。
本書は論争の歴史的経緯を説明するとともに,近年,眼球位置信号の神経学的基盤が次第に解明されてきた事情を紹介し,さらに心理物理学的な実験によって相殺説だけでは視覚世界の安定性を完全に説明できないことを明らかにする。
著者の四半世紀に及ぶ研究を集成した遺稿集である。