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目次
凡例/略号表
序論
1 超越論的弁証論における理性の深淵
2 方法と課題
第一章 「取り違え」概念の展開――発展史の一断面
1 取り違えの形而上学的誤謬――『就職論文』
2 取り違えの二つの型と新たな還元――1770年代
3 感性論における取り違えモデルの展開
4 観念論と空間――第四誤謬推理
5 弁証論における超越論的取り違え
6 超越論的観念論のゆくえ
第二章 超越論的弁証論と理性――沈黙の十年間
1 対立と懐疑――1772年ヘルツ宛書簡とその周辺
2 超越論的演繹と統覚――デュースブルク遺稿とその周辺
3 規則対立から理性推理へ――超越論的弁証論の形成
4 「理性」概念の成立
5 「原理の能力」としての理性
おわりに――『純粋理性批判』へ
第三章 理性批判と自己意識――誤謬推理論の改稿をめぐって
1 「私は考える」と統覚――第一版の誤謬推理論(1)
2 カテゴリーの超越論的対象――第一版の誤謬推理論(2)
3 論理的機能における自己意識――第二版の誤謬推理論(1)
4 自己意識の総合モデル――第二版の演繹論
5 統制的理念としての私――第二版の誤謬推理論(2)
第四章 人格と時間――第三誤謬推理のコンテクスト
1 第三誤謬推理
2 合理的心理学の「人格」概念
3 疑似記憶と時間の超越論的実在性
4 ロックとカント――超越論的な思考の系譜
おわりに――私の魂の両極的な本性について
第五章 カントのCogito ergo sum解釈
1 超越論的主観の現実性――第一版の誤謬推理論まで
2 叡知者と現象――演繹論の二分法
3 「ある現存在の感情」――『プロレゴメナ』
4 経験的命題としての「私は考える」――第二版の誤謬推理論(1)
5 「未規定的な経験的直観」――第二版の誤謬推理論(2)
おわりに
第六章 流れさった無限と世界の起源――第一アンチノミー
1 無限のヤヌス的な本性――定立の証明
2 流れさった無限――証明の問題史(1)
3 永遠から――証明の問題史(2)
4 空虚な時間――反定立の証明
5 起源への問い
6 批判的解決――超越論的観念論へ
第七章 無限と崇高
1 形而上学的無限と数学的無限
2 無限性の超越論的概念
3 与えられた無限量としての空間・時間
4 崇高――『判断力批判』の無限論
5 無際限への遡源
第八章 人間的自由の宇宙論的本質について――第三アンチノミー
1 定立・反定立の証明と註解
2 二性格説による解決とその問題点
3 第三アンチノミー解決の宇宙論的=神学的な背景
4 性格を選択する叡知的な行ない
5 パースペクティヴの実践的転回
6 宇宙論的自由と超越論的観念論
おわりに
第九章 存在の深淵へ――神の現存在の宇宙論的証明
1 人間理性の自然な歩み
2 宇宙論的証明
3 弁証論的理性の転回
4 宇宙論から存在論へ
5 超越論的実在論――汎通的規定としての実存在
6 存在論的ユートピアの解体――必然性をめぐって
おわりに――「人間理性にとっての真の深淵」
結語
1 超越論的弁証論の位置と意義
2 理性批判と超越論的観念論
あとがき
註/索引
序論
1 超越論的弁証論における理性の深淵
2 方法と課題
第一章 「取り違え」概念の展開――発展史の一断面
1 取り違えの形而上学的誤謬――『就職論文』
2 取り違えの二つの型と新たな還元――1770年代
3 感性論における取り違えモデルの展開
4 観念論と空間――第四誤謬推理
5 弁証論における超越論的取り違え
6 超越論的観念論のゆくえ
第二章 超越論的弁証論と理性――沈黙の十年間
1 対立と懐疑――1772年ヘルツ宛書簡とその周辺
2 超越論的演繹と統覚――デュースブルク遺稿とその周辺
3 規則対立から理性推理へ――超越論的弁証論の形成
4 「理性」概念の成立
5 「原理の能力」としての理性
おわりに――『純粋理性批判』へ
第三章 理性批判と自己意識――誤謬推理論の改稿をめぐって
1 「私は考える」と統覚――第一版の誤謬推理論(1)
2 カテゴリーの超越論的対象――第一版の誤謬推理論(2)
3 論理的機能における自己意識――第二版の誤謬推理論(1)
4 自己意識の総合モデル――第二版の演繹論
5 統制的理念としての私――第二版の誤謬推理論(2)
第四章 人格と時間――第三誤謬推理のコンテクスト
1 第三誤謬推理
2 合理的心理学の「人格」概念
3 疑似記憶と時間の超越論的実在性
4 ロックとカント――超越論的な思考の系譜
おわりに――私の魂の両極的な本性について
第五章 カントのCogito ergo sum解釈
1 超越論的主観の現実性――第一版の誤謬推理論まで
2 叡知者と現象――演繹論の二分法
3 「ある現存在の感情」――『プロレゴメナ』
4 経験的命題としての「私は考える」――第二版の誤謬推理論(1)
5 「未規定的な経験的直観」――第二版の誤謬推理論(2)
おわりに
第六章 流れさった無限と世界の起源――第一アンチノミー
1 無限のヤヌス的な本性――定立の証明
2 流れさった無限――証明の問題史(1)
3 永遠から――証明の問題史(2)
4 空虚な時間――反定立の証明
5 起源への問い
6 批判的解決――超越論的観念論へ
第七章 無限と崇高
1 形而上学的無限と数学的無限
2 無限性の超越論的概念
3 与えられた無限量としての空間・時間
4 崇高――『判断力批判』の無限論
5 無際限への遡源
第八章 人間的自由の宇宙論的本質について――第三アンチノミー
1 定立・反定立の証明と註解
2 二性格説による解決とその問題点
3 第三アンチノミー解決の宇宙論的=神学的な背景
4 性格を選択する叡知的な行ない
5 パースペクティヴの実践的転回
6 宇宙論的自由と超越論的観念論
おわりに
第九章 存在の深淵へ――神の現存在の宇宙論的証明
1 人間理性の自然な歩み
2 宇宙論的証明
3 弁証論的理性の転回
4 宇宙論から存在論へ
5 超越論的実在論――汎通的規定としての実存在
6 存在論的ユートピアの解体――必然性をめぐって
おわりに――「人間理性にとっての真の深淵」
結語
1 超越論的弁証論の位置と意義
2 理性批判と超越論的観念論
あとがき
註/索引
内容説明
『純粋理性批判』の研究史では,弁証論の研究は感性論や分析論の研究に比べ手薄であった。またわが国のカント研究は,時代の要請もあり実践理性への関心が強いが,世界的にはここ四半世紀,超越論的弁証論の研究が著しく進展している。
本書ははじめに1770年の『就職論文』から1781年の『純粋理性批判』にいたる〈沈黙の10年間〉に着目し,超越論的弁証論の概念と構想がいかに獲得されたのかを発展史的に考察する。
次に超越論的弁証論における三つの特殊形而上学批判である,魂,宇宙,神について,合理的心理学を批判する誤謬推理論,合理的宇宙論を批判するアンチノミー論,合理的神学を批判する理想論,それぞれについて本格的な論点分析的解釈を展開し,理性批判の究極の問題状況を明らかにする。
旧来の独断的形而上学のみならず自己の思想をも批判の対象にしつつ,超越論的弁証論を形成してゆくカントの過酷な自己超克の軌跡は,批判哲学の精神とは何かを伝え,印象深い。
本書は形而上学の無制約的領域で人間理性が避けがたく陥る無根拠性の危機と,その「深き淵より」自らを救う理性の自律的な根拠づけの試みを「理性の深淵」として捉えた,気鋭の著者による挑みの書。
本書ははじめに1770年の『就職論文』から1781年の『純粋理性批判』にいたる〈沈黙の10年間〉に着目し,超越論的弁証論の概念と構想がいかに獲得されたのかを発展史的に考察する。
次に超越論的弁証論における三つの特殊形而上学批判である,魂,宇宙,神について,合理的心理学を批判する誤謬推理論,合理的宇宙論を批判するアンチノミー論,合理的神学を批判する理想論,それぞれについて本格的な論点分析的解釈を展開し,理性批判の究極の問題状況を明らかにする。
旧来の独断的形而上学のみならず自己の思想をも批判の対象にしつつ,超越論的弁証論を形成してゆくカントの過酷な自己超克の軌跡は,批判哲学の精神とは何かを伝え,印象深い。
本書は形而上学の無制約的領域で人間理性が避けがたく陥る無根拠性の危機と,その「深き淵より」自らを救う理性の自律的な根拠づけの試みを「理性の深淵」として捉えた,気鋭の著者による挑みの書。