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カント政治哲学のコンテクスト  新刊

カント政治哲学のコンテクスト

知泉学術叢書30

著者 ライダール・マリクス
加藤 泰史 監訳
ジャンル 哲学・思想
シリーズ 知泉学術叢書
出版年月日 2024/03/25
ISBN 9784862854056
判型・ページ数 新書・366ページ
定価 本体4,000円+税
在庫 在庫あり
 

目次

謝辞
略号

序論 公共圏におけるカント

第1章 革命前夜
 国家の正統性についての論争
 カントと歴史のなかの道徳的行為者
 ヘルダーとの論争
 法・権利の原理への道
 結論

第2章 自由と平等
 フランス革命とドイツの公共圏
 平等な自由に関するカントの初期の見解
 保守的な批判者たち
 カントの最終見解
 結論

第3章 政治的権利
 シティズンシップをめぐる論争
 投票権に関するカントの最初の見解
 急進的批判者たち
 カントの最終的見解
 結論

第4章 抵抗と革命
 専制への抵抗に関する議論
 抵抗と革命についてのカントの当初の見解
 急進的な批判者
 カントの最終的な見解
 結論

第5章 戦争と平和
 戦争をめぐる論争
 国際法(国家の権利)に関するカントの初期の見解
 『永遠平和』をめぐる論争
 カントの最終見解
 結論

結論 革命後

監訳者あとがき
訳者紹介
索引

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内容説明

カントの政治哲学に関わる論争的な言説を追究することにより,18世紀ドイツにおける公共圏の形成についてカント哲学の貢献を検討する。論争は,自由の権利の正当化,平等の扱い,そして国家の権威,という三つを主要課題とした。これらに関わる彼の法哲学と政治哲学の解明を通して近代哲学創始の瞬間をも明らかにする。
マリクスはノルウェー科学技術大学で哲学修士を取得,その後ハイデルベルク大学留学を経て,アメリカのコロンビア大学政治学部に博士論文を出し博士号を取得。政治学と哲学にわたる独自な研究活動を展開してきた。
ポーコック以来,国際的な共和主義研究が盛んになったがドイツへの関心は低かった。著者はドイツにおける共和主義の形成についてカントを中心にその展開を明らかにした。カントの政治哲学の分析だけでなく輻輳する論点を理論的に解明し,共和主義の歴史的文脈を描くことによって,現代の政治哲学への射程を示す。
著者はハーバード大学で講師を務め,オックスフォード大学研究員をへて母国オスロ大学教授として哲学を講じている。彼の活動は英米圏中心だが,ドイツ語文献を幅広く活用し,今後はドイツ語圏での研究が期待される。
わが国ではカントの政治哲学に関して未だ関心が低い。カントが倫理と法の伝統に深く関心をもち,フランス革命を目の当たりにし,左翼と右翼の両陣営からの論争に対応しつつ,独自の思考を展開する姿は,従来とは違う新たなカント像を髣髴とさせる。カントに対する固定観念を払い新たな探求のための必読書となろう。

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