目次
日本語版への序言(ビルギッド・ザントカウレン)
第 I 部 スピノザの学説に関する書簡
第三版序文
スピノザの学説に関するモーゼス・メンデルスゾーン氏宛の書簡
献呈の詞
第一版への序文
第二版への序文
人間の拘束性と自由についての予備的命題
第一章 人間は自由ではない
第二章 人間は自由である
スピノザの学説に関して
一 エリーゼ・ライマールスとヤコービの書簡
二 レッシングとヤコービ
三 メンデルスゾーンとヤコービ
四 メンデルスゾーンの異論
五 スピノザの学説の第一の叙述
六 スピノザの学説の第二の叙述
七 スピノザ主義に関する六つの命題
第 II 部 スピノザの学説に関する書簡へのもろもろの付録
第一付録 ノラのジルダーノ・ブルーノからの抜粋――『原因・原理・一者について』
第二付録 無神論について――ディオクレスからディオティーマへ
第三付録 「別の世界の事物」――ハーマンの言葉
第四付録 ヘルダーの「神」について
第五付録 ヘルダーのスピノザ主義への批判
第六付録 スピノザとライプニッツ
第七付録 思弁哲学の歴史――スピノザ主義の成立
第八付録 キケロ『義務について』
『スピノザ書簡』第三版と第一版・第二版との異同について
ヤコービの生涯と著作(田中 光)
一 生い立ちとジュネーヴ留学
二 留学からの帰国と結婚
三 『ドイツ・メルクール』誌とゲーテとの出会い
四 八〇年のレッシングとの対話
五 『スピノザ書簡』出版
六 革命を逃れて
七 北からミュンヘンへ
訳者あとがき
文献表
ヤコービ年譜
索引
内容説明
本書は1785年に刊行され,ヘーゲルなどに大きな影響を与え,カント,ゲーテをはじめドイツ思想界を巻き込んだ「汎神論論争(スピノザ論争)」発端の書である。
ヤコービ(1743-1819)との対話において,レッシング(1729-81)が〈一にして全〉を支持したことにより,「スピノザ主義者」であることを告白した。汎神論的立場を表すスピノザ主義を標榜することは無神論者と見なされかねなかった。レッシングの死後,ヤコービがメンデルスゾーン(1729-86)に「レッシングはスピノザ主義者だった」と書き送った。それに対しレッシングの友人であったメンデルスゾーンが異論を呈し,「レッシングはスピノザ主義者だったのか?」,さらに「スピノザ主義とは何か?」という問題へ発展していった。本書はこれら一連の書簡と関連する8つの付録からなる。
フィヒテからシェリングを経てヘーゲルへ,といった従来の「ドイツ観念論」という見方は再検討されており,同時代の他の思想家との関連をも含めて「ドイツ古典哲学」という新たな枠組みが示されつつある。そのような状況のなか,本書はドイツ近世哲学を見直すために必読の文献となろう。
巻末には訳者によるヤコービの紹介と年譜,『スピノザ書簡』各版の異同情報を付す。