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パスカルの宗教哲学

『パンセ』における合理的信仰の分析

パスカルの宗教哲学
著者 道躰 滋穂子
ジャンル 哲学・思想
出版年月日 2012/09/15
ISBN 9784862851383
判型・ページ数 A5・304ページ
定価 本体5,000円+税
在庫 在庫あり
 

目次


表題について/『パンセ』執筆の目的について/パスカルは哲学者か/『パンセ』における原罪の形而上学
第一章 パスカルと哲学
Ⅰ 『ド・サシ師との対話』におけるパスカルと哲学
序/パスカルとエピクテトス/ストア哲学の形而上学/ストア哲学の倫理/パスカルとモンテーニュ
Ⅱ 懐疑主義との闘い――アウグスティヌス,デカルト,パスカル
アウグスティヌスと懐疑主義/デカルトと懐疑主義/カントの〈コギト〉批判とパスカルの〈コギト〉擁護/パスカルと懐疑主義
第二章 神の存在証明
Ⅰ 哲学者たちによる「神の存在証明」とその批判
序/アウグスティヌスの「神の存在証明」/スコラ神学者による「神の存在証明」/デカルトの証明/デカルトの「神の存在証明」に対する同時代人の批判/カントによる「神の存在証明」批判/キルケゴールの「神の存在証明」批判
Ⅱ パスカルと「神の存在証明」
「存在論的証明」との関連/「宇宙論的証明」との関連/「真理自体」としての「神」/「自然神学的証明」との関連/「神の存在証明」に関するパスカルの結論
第三章 賭けの論証
Ⅰ 「護教論」としての「賭けの論証」
緒言/懐疑論者批判/「本質」と「現存」の認識/「賭け」の契機――理性の限界/「生」と「賭け」の必然性/「死」の確実性と「死後」の不分明性/「賭け」の必然性/賭けの論理/「取り分」の確率計算
Ⅱ 「賭けの論証」における「信仰への道」
論証と信仰/認識と情念/情念を低減する方法/習慣と信仰/トマス・アクィナスと「習慣」/習慣の「助け」/《ab?tir》の語義について/自由思想家の「恐れ」/信仰における「心情」と「精神」/情念と恩寵/恩寵と自然本性/護教論と「情念の低減」/キリスト教と「現世利益」/外的宗教行為と恩寵/「賭けの断章」と護教論
第四章 人間存在と思惟
人間の研究と護教論/パスカルの人間観/ハイデガーの「人間と死」論/アウグスティヌスの「気晴らし」論/トマス・アクィナスの「娯楽」説/パスカルの「娯楽」論/人間の実状
第五章 真の哲学と真の宗教
パスカルの哲学的知見/独断論者の人間観/懐疑論者の人間観/無神論者/プラトン哲学/その他の哲学者/哲学の限界/異教/キリスト教の真実性/「原罪」の哲学/真の宗教としてのキリスト教/人間の「悲惨さ」の由って来る原因――プラトン説/人間の完全さと不完全さ――デカルトとパスカル
第六章 人間学の基礎としての原罪論――人間と自由意志(Ⅰ)
「原罪」に関する『パンセ』の二断章/人間の背反性と原罪観念の導入/「悲惨さ」の感覚と「偉大さ」/『パンセ』における「原罪」説/創造時の人間の状態/アダムの過誤/「堕落」による変化/キリスト教史における「原罪」ならびに「原罪遺伝」説/パスカルと「原罪遺伝」説/人間性の回復とイエス・キリスト/理性の領分
第七章 「隠れたる神」と人間の認識――人間と自由意志(Ⅱ)
「隠れたる神」概念の思想的背景/クザーヌスと「隠れたる神」/十字架のヨハネと「隠れたる神」/パスカルと「隠れたる神」の思想

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内容説明

ブレーズ・パスカル(1623-62)は,数学,化学,物理学の分野で,幼少時から頭角を現し,全ヨーロッパで称賛を博していた。彼は31歳のある夜,イエスを十字架につけたと痛感し,決定的な回心を経験する。以来,彼は現世を脱却し,神ならぬ一切を忘却して生きることを決意した。39歳で生涯を閉じたが,膨大な覚書が残されていた。それらは断片的な手控えで脈絡を欠いていたが,明瞭で完成に近いと思われる断片を選別し『パンセ』が刊行された。
パスカルは真理を探究するために論理的推論,すなわち哲学的方法を駆使した。そして理性の最後の働きは,理性を超えた無数の事象である「超自然的真理」の存在を認識し,それに服すべきことにあると喝破する。理性万能主義的哲学は「超自然」に対して無力である。彼は「超理性的真理」を受け入れ,それに理性が服従することにより,哲学を超出して「宗教哲学」の領域を展開した。
パスカルはキリスト教の真実性を示すため,人間の複雑な現実に対する精密な観察と分析に基づく人間学研究から出発して,哲学者の諸説や教説などを吟味した結果,キリスト教の教えに唯一の合理性があることを証明した。「人間の偉大と悲惨」という人間を覆う背反性を,キリスト教の創造論と原罪説が見事に説明しているのを発見する。
本書は長年にわたる徹底的な『パンセ』の哲学的解読により,科学者パスカルの精神の軌跡を多面的に明らかにして,パスカルの実存に迫る貴重な研究成果である。

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