ホーム > 「原罪論」の形成と展開
「原罪論」の形成と展開
キリスト教思想における人間観
著者 | 上智大学中世思想研究所 編 |
---|---|
ジャンル | 哲学・思想 > 中世哲学 宗教 |
出版年月日 | 2021/07/20 |
ISBN | 9784862853431 |
判型・ページ数 | A5・352ページ |
定価 | 本体5,000円+税 |
在庫 | 在庫あり |
目次
序文(佐藤直子)
1 樹の実の誘惑と根源悪――「創世記」と『告白』の物語りに拠る(宮本久雄)
序
一 「創世記」第一 ― 三章
二 『告白』第二巻第四章九―第一〇章一八
むすびとひらき
2 霊魂伝遺説と原罪――テルトゥリアヌスの魂概念を手掛かりとして(津田謙治)
一 問題設定
二 アウグスティヌスにおける霊魂伝遺説
三 テルトゥリアヌスと霊魂伝遺説
四 テルトゥリアヌスにおける幼児洗礼
五 テルトゥリアヌスにおけるキリストの魂
六 テルトゥリアヌスにおける魂の物体性
七 結論
3 アウグスティヌスの原罪論におけるオリゲネス伝承の受容と変容(出村みや子)
序
一 アウグスティヌスとオリゲネスにおける幼児の罪の理解と幼児洗礼の問題
二 アウグスティヌスの神学思想に対するオリゲネスの影響――研究史の概観
三 オリゲネス主義論争の余波としてのペラギウス論争
四 アウグスティヌスの『罪の報いと赦し』とオリゲネスの聖書解釈
結語
4 アウグスティヌスにおける楽園神話解釈に基づく人間観の形成――「嘘」の概念に注目して(佐藤真基子)
序
一 『告白』第一○巻における「嘘」の概念
二 楽園神話解釈における「嘘」の概念
三 「すべての人間は嘘つきである」という人間観
結論
5 ペラギウス派による原罪論批判の本質と女性観を巡る課題――悪は「善の欠如」であるか?(山田 望)
はじめに
一 最近の研究動向
二 パウロ解釈における自由意志論と古代パイデイア思想
三 ユリアヌスによる性欲を巡るアウグスティヌス批判
四 ペラギウス派の女性観と女性信徒像の変化
五 排斥への経緯
結論として
6 十一 ― 十二世紀における原罪論の展開――アンセルムスからトマス・アクィナスへ(矢内義顕)
はじめに
一 アウグスティヌスの伝統
二 カンタベリーのアンセルムスとその影響
三 ランのアンセルムスからアベラルドゥスへ
結語
7 ビンゲンのヒルデガルトにおける原罪論の射程――『スキヴィアス』における原罪・堕罪の幻視を中心に(佐藤直子)
はじめに
一 原罪・堕罪についての二つの描写――第一部第二の幻視と第二部第一の幻視
二 双方の幻視の異同――ヒルデガルトの預言者としての自己定位
三 原罪・堕罪の帰結と救い主
結び――現代へのメッセージ性
8 トマス・アクィナスの原罪論――彼のキリスト教的人間観の一面(山口雅広)
一 はじめに
二 罪の伝達という問題
三 アダムの歴史的真実性の問題
四 トマスの原罪論(その一)――原罪の固有の意味について
五 トマスの原罪論(その二)――第一の罪の伝えられ方
六 おわりに
9 オッカムにおける道徳の理論――原罪論を起点として(辻内宣博)
一 原罪論から救済論へ
二 功績的な行為と自由意志
三 道徳的に善い行為と必然的に有徳な行為
四 道徳的に悪い行為と罪
五 徳の五段階説
六 有徳な所有状態の基体
七 道徳の理論の構図
10 原罪から栄光まで―― 十字架のヨハネの原罪論の射程(鶴岡賀雄)
一 はじめに
二 『カルメル山登攀』・『暗夜』における原罪把握
三 『霊の讃歌』における原罪の位置づけ
四 「歌ものがたり」の教訓(モラリテ)
執筆者紹介
索引(人名・書名・事項)
欧文要旨
1 樹の実の誘惑と根源悪――「創世記」と『告白』の物語りに拠る(宮本久雄)
序
一 「創世記」第一 ― 三章
二 『告白』第二巻第四章九―第一〇章一八
むすびとひらき
2 霊魂伝遺説と原罪――テルトゥリアヌスの魂概念を手掛かりとして(津田謙治)
一 問題設定
二 アウグスティヌスにおける霊魂伝遺説
三 テルトゥリアヌスと霊魂伝遺説
四 テルトゥリアヌスにおける幼児洗礼
五 テルトゥリアヌスにおけるキリストの魂
六 テルトゥリアヌスにおける魂の物体性
七 結論
3 アウグスティヌスの原罪論におけるオリゲネス伝承の受容と変容(出村みや子)
序
一 アウグスティヌスとオリゲネスにおける幼児の罪の理解と幼児洗礼の問題
二 アウグスティヌスの神学思想に対するオリゲネスの影響――研究史の概観
三 オリゲネス主義論争の余波としてのペラギウス論争
四 アウグスティヌスの『罪の報いと赦し』とオリゲネスの聖書解釈
結語
4 アウグスティヌスにおける楽園神話解釈に基づく人間観の形成――「嘘」の概念に注目して(佐藤真基子)
序
一 『告白』第一○巻における「嘘」の概念
二 楽園神話解釈における「嘘」の概念
三 「すべての人間は嘘つきである」という人間観
結論
5 ペラギウス派による原罪論批判の本質と女性観を巡る課題――悪は「善の欠如」であるか?(山田 望)
はじめに
一 最近の研究動向
二 パウロ解釈における自由意志論と古代パイデイア思想
三 ユリアヌスによる性欲を巡るアウグスティヌス批判
四 ペラギウス派の女性観と女性信徒像の変化
五 排斥への経緯
結論として
6 十一 ― 十二世紀における原罪論の展開――アンセルムスからトマス・アクィナスへ(矢内義顕)
はじめに
一 アウグスティヌスの伝統
二 カンタベリーのアンセルムスとその影響
三 ランのアンセルムスからアベラルドゥスへ
結語
7 ビンゲンのヒルデガルトにおける原罪論の射程――『スキヴィアス』における原罪・堕罪の幻視を中心に(佐藤直子)
はじめに
一 原罪・堕罪についての二つの描写――第一部第二の幻視と第二部第一の幻視
二 双方の幻視の異同――ヒルデガルトの預言者としての自己定位
三 原罪・堕罪の帰結と救い主
結び――現代へのメッセージ性
8 トマス・アクィナスの原罪論――彼のキリスト教的人間観の一面(山口雅広)
一 はじめに
二 罪の伝達という問題
三 アダムの歴史的真実性の問題
四 トマスの原罪論(その一)――原罪の固有の意味について
五 トマスの原罪論(その二)――第一の罪の伝えられ方
六 おわりに
9 オッカムにおける道徳の理論――原罪論を起点として(辻内宣博)
一 原罪論から救済論へ
二 功績的な行為と自由意志
三 道徳的に善い行為と必然的に有徳な行為
四 道徳的に悪い行為と罪
五 徳の五段階説
六 有徳な所有状態の基体
七 道徳の理論の構図
10 原罪から栄光まで―― 十字架のヨハネの原罪論の射程(鶴岡賀雄)
一 はじめに
二 『カルメル山登攀』・『暗夜』における原罪把握
三 『霊の讃歌』における原罪の位置づけ
四 「歌ものがたり」の教訓(モラリテ)
執筆者紹介
索引(人名・書名・事項)
欧文要旨
内容説明
キリスト教における人間観の根幹は「神の像としての人間」である。そこでは「像」という人間の限界とともに,「神の」像としての人間の尊厳もまた謳われている。しかし西方教会では,「神の像」としての人間の自然本性が毀損,破壊され,人間は自ら罪を犯す前にすでに原罪を負うていると理解されてきた。
原罪の教義はアウグスティヌスの原罪理解の影響のもとでの古代の教会会議の諸決定が,トレント公会議(1546年)の「原罪についての教令」で追認される。だが,キリスト教の原罪理解と人間観は,18世紀の啓蒙主義的人間観と,19世紀の進化論の登場を経て後退し,生物学的観点やジェンダー論,フェミニスト神学の現代的視点からも批判が上がっている。
しかし今日,圧倒的な技術力を手にした人間が,凄まじい殺戮と破壊をもたらしている現実は,原罪論がもつ人間観を改めて問い直すことを要請し,その考察は神学のみならず広く人文研究の責務と言えよう。
本書はアウグスティヌスからアンセルムス,トマス,オッカム,またテルトゥリアヌスやオリゲネス,ペラギウスおよび原罪が教義とされていない東方教会の状況を考察,さらにビンゲンのヒルデガルトや十字架のヨハネなど多岐にわたる原罪論に光をあて再考する。
技術の先端化や貧富の格差,グローバル化など混迷する現代において「人間とは何か」を問う試みである。
原罪の教義はアウグスティヌスの原罪理解の影響のもとでの古代の教会会議の諸決定が,トレント公会議(1546年)の「原罪についての教令」で追認される。だが,キリスト教の原罪理解と人間観は,18世紀の啓蒙主義的人間観と,19世紀の進化論の登場を経て後退し,生物学的観点やジェンダー論,フェミニスト神学の現代的視点からも批判が上がっている。
しかし今日,圧倒的な技術力を手にした人間が,凄まじい殺戮と破壊をもたらしている現実は,原罪論がもつ人間観を改めて問い直すことを要請し,その考察は神学のみならず広く人文研究の責務と言えよう。
本書はアウグスティヌスからアンセルムス,トマス,オッカム,またテルトゥリアヌスやオリゲネス,ペラギウスおよび原罪が教義とされていない東方教会の状況を考察,さらにビンゲンのヒルデガルトや十字架のヨハネなど多岐にわたる原罪論に光をあて再考する。
技術の先端化や貧富の格差,グローバル化など混迷する現代において「人間とは何か」を問う試みである。