キリストの現存の経験
クラウス・リーゼンフーバー小著作集Ⅵ
著者 | クラウス・リーゼンフーバー 著 |
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シリーズ | クラウス・リーゼンフーバー小著作集 |
出版年月日 | 2021/01/20 |
ISBN | 9784862853271 |
判型・ページ数 | 4-6・296ページ |
定価 | 本体2,600円+税 |
在庫 | 在庫あり |
目次
一 自由への召し出し
二 選ばれて選ぶ自由
三 キリストが自由選択の的
四 愛を生きるイエス
五 愛の諸特徴
第2章 規範であるキリスト
一 自己への問い――規範への問い
二 神の隠蔽性
三 神の存在の解釈としての人間
四 神の超越とイエスの人間性――非類似から類似へ
第3章 心の根底
一 自己認識という課題
二 自己探求への出発
三 自己の根底への道
四 心の根底とは
五 「従順の能力」としての精神
第4章 神の柔和とやさしさ
一 信仰と人生の経験の間のとまどい
二 救済史の方向――神の人間への降り
三 人間存在と神の対応関係
四 神とイエスにおけるやさしさ
五 神のやさしさであるイエス
第5章 父と子と聖霊
一 問題提起――救いの歴史と神の三一性
二 時間性の三次元的統一
三 言葉の三次元的な広がり
第6章 イエスの目指したこと
一 問題提起――信仰の中心の確認
二 イエスの問題意識――律法と神の憐れみの間に
三 律法に勝るもの――新しい神理解
四 へりくだる愛――イエスによる神の国の福音
五 新しい掟――信仰に基づく愛
第7章 神の顕れであるイエス
一 基盤――イエスはキリストである
二 神の受肉
三 イエスの人性による神の顕現
四 イエスの態度に見られる神の有様
五 父との関係におけるイエス
六 非類似性における父の顕れであるイエス
第8章 キリストの現存の経験
一 信仰の根源を発見する課題
二 共にいるキリスト
三 内にいるキリスト
四 キリストの内に
五 互いの内に
六 内なるキリスト
第9章 沈黙の勧め
一 沈黙と言葉
二 沈黙の多面的な有様
三 神に向かう人間の沈黙
四 祈りである沈黙
第10章 神の喜び――人間の喜び
一 神と人間との関係の問題
二 旧約聖書による神の人間への自己関係づけ
三 新約における神の愛
四 イエスの愛と喜び
五 自己同一的愛の脱自的方向づけ
六 神の固有な愛の存在論的構造
第11章 神の名――人間の名
一 名前とは
二 名前を与えるという行為
三 名前における父との関係
四 将来を拓く名前
第12章 神の似姿
一 母と子という範例
二 人間への神の関わりという原型
三 神の似姿である人間
四 神内の「言葉」
五 人間に宿る神の「言葉」
六 人間の原型であるキリスト
七 キリストの似姿である信仰者
第13章 神をどう語りうるか
一 聖書における本というもの
二 否定形による神についての語り
三 神についての積極的で肯定的な語りの可能性
四 比喩的表現による神との関わりの理解
五 「父」という原‐比喩
六 人のうちに兄弟に直面し,イエスを発見する
第14章 意味への問い――宗教哲学の根拠づけのために
一 意味の探求としての問い
二 宗教哲学的な問いの意味
三 精神形而上学と宗教的自己経験
四 「第一の真理」としての意味の現前
五 意味と根源的な言葉
付録 宣教師としての歩み――イエズス会ドイツ管区制作動画「ミッションを語る」より
自己紹介と少年時代のこと
根本決断と人生の意義への問い
イエズス会での養成期間――哲学課程
そして日本へ
来日後,間もない頃のこと
上智大学での四十年間――学術方面の仕事
『中世思想原典集成』について
司牧活動
日本におけるキリスト教
あとがき
初出一覧
索引
内容説明
著者は多くの研究や出版活動により,わが国の学界に多大な貢献をしてきた中世哲学研究の第一人者である。本著作集は日本の文化と社会に深く関わり,説教や講話,文筆活動によって日本の人びとにキリスト教を伝えてきた宗教者の軌跡を集大成したものである。
福音書には復活したイエスが弟子たちに姿を現し,なおも彼らと共にいることを示す物語が描かれている。
弟子たちには最初は分からなかったが,イエスの現存に気づくと,イエスが彼らを探しに来て共にいること,さらに受難の意義とイエスに与えられた「栄光」とのつながりを悟り,しかもこの体験を通してイエスの事実と言葉への理解を授かった。キリストが現存する場とは「心」である。同時にこの「心」は人間の存在の中心的で根源的な場であるとともに,存在を理解し自己を実現するための中核であり,自己を超越する起源でもある。
著者はイエスの現存の多様な姿を考察し,信仰の経験の最も深い根源が,キリストの現存に由来することを明らかにする。成熟した理解と深い信仰に支えられ,生き生きとした言葉の森を散策し,読者は静かな感動を味わうだろう。
巻末の著者へのインタビューは,幼少年期からの学業や修練期について回想されている。日本での宣教を希望し来日してから半世紀,研究や教育,宣教活動など著者の知られざる活動を知るうえで貴重な記録となっている。