ホーム > 戦国宗教社会=思想史
目次
序章
第1章 キリシタン宗教社会の成立――戦国宗教共同体の形
ヨーロッパ信心会・兄弟会の起源と発展の概要(13世紀~16世紀)
日本における宗教共同体としてのコンフラリヤ機構の導入
日本型宗教共同体とキリスト教共同体の酷似
付録 フランシスコ会系・ドミニコ会系コンフラリヤの規則
第2章 日本思想史のなかの「魂論」(「デ・アニマ」)の展開――イエズス会『講義要綱』付加部分と「魂不滅論」
『講義要綱』成立の前提
『講義要綱』「デ・アニマ」の位置とその分析
「付加部分」の考察――理性的魂の不滅論証
第3章 キリシタン思想と日本思想の対峙――魂不滅論と「本覚論」的救済論
『講義要綱』における「デ・アニマ」への日本人の反論――人間理解の方法
「本覚論」にみる日本固有の思惟方法とキリスト教の反論
「救い」についての神と人間のかかわり――「恩寵と倫理的努力」
第4章 西洋キリスト教義の土着――潜伏共同体の存続の支柱『こんちりさんのりやく』
『こんちりさんのりやく』とは何か
日本における例外的適用例としての『こんちりさん』
1590年代の日本宣教師の逡巡/その他の注目すべき教義思想内容
第5章 戦国民衆宗教社会の主神崇拝的信仰――キリシタンと真宗の異宗派観
「主神崇拝」という宗教理念による統合
キリシタンの場合
本願寺派の場合
結語
補論 「キリシタン」考察の諸問題と新たなアプローチ――「接続された歴史」との関連から
キリシタン史と一般史の接点
キリシタン研究の今後の課題――思想史学・宗教社会史的考察
第1章 キリシタン宗教社会の成立――戦国宗教共同体の形
ヨーロッパ信心会・兄弟会の起源と発展の概要(13世紀~16世紀)
日本における宗教共同体としてのコンフラリヤ機構の導入
日本型宗教共同体とキリスト教共同体の酷似
付録 フランシスコ会系・ドミニコ会系コンフラリヤの規則
第2章 日本思想史のなかの「魂論」(「デ・アニマ」)の展開――イエズス会『講義要綱』付加部分と「魂不滅論」
『講義要綱』成立の前提
『講義要綱』「デ・アニマ」の位置とその分析
「付加部分」の考察――理性的魂の不滅論証
第3章 キリシタン思想と日本思想の対峙――魂不滅論と「本覚論」的救済論
『講義要綱』における「デ・アニマ」への日本人の反論――人間理解の方法
「本覚論」にみる日本固有の思惟方法とキリスト教の反論
「救い」についての神と人間のかかわり――「恩寵と倫理的努力」
第4章 西洋キリスト教義の土着――潜伏共同体の存続の支柱『こんちりさんのりやく』
『こんちりさんのりやく』とは何か
日本における例外的適用例としての『こんちりさん』
1590年代の日本宣教師の逡巡/その他の注目すべき教義思想内容
第5章 戦国民衆宗教社会の主神崇拝的信仰――キリシタンと真宗の異宗派観
「主神崇拝」という宗教理念による統合
キリシタンの場合
本願寺派の場合
結語
補論 「キリシタン」考察の諸問題と新たなアプローチ――「接続された歴史」との関連から
キリシタン史と一般史の接点
キリシタン研究の今後の課題――思想史学・宗教社会史的考察
内容説明
16世紀の戦国末期に,人口1000万にも満たない日本列島でわずか数十年の間に30万から40万の信徒を獲得し,秀吉や江戸幕府が無視できぬほどに成長したキリシタン宗団の興隆はなぜ可能だったか?
著者はこの問いに応え,日本古来の複合的多神崇拝とは異質なキリスト教の受容を可能にした,戦国末に固有な宗教土壌を宗教社会史の視点から分析するとともに,集団行動に映し出された個人の心の表現を「魂不滅論」や「こんちりさんのりやく」など一次資料を通して思想史的に明らかにすることにより,民衆の側からのキリシタン史見直しと近世史における新たな位置づけを試みた。
15世紀に中興の祖蓮如により再興された真宗本願寺派は,戦国大名に比肩する勢力を擁して全盛期を迎えていた。本書は真宗教団の活動と対比しつつキリシタン固有の展開を立体的に考察する。
両者に共通することは,下からの「信仰共同体」である〈コンフラリヤ〉や〈道場〉を組織し,領国支配を超越して全国的規模のネットワークを展開したことと,信仰対象として唯一の神デウスと阿弥陀一仏など「主神崇拝」的信仰形態という日本の宗教史上際だった特徴を示したことである。
本書は北半球の気候変動により日本や西洋を襲った飢饉や疫病など世界史的な視点をも導入し,16,17世紀のキリシタン現象がもつ歴史的射程を見事に描いて,研究史上に新たな1ページを開いた記念碑的作品である。
著者はこの問いに応え,日本古来の複合的多神崇拝とは異質なキリスト教の受容を可能にした,戦国末に固有な宗教土壌を宗教社会史の視点から分析するとともに,集団行動に映し出された個人の心の表現を「魂不滅論」や「こんちりさんのりやく」など一次資料を通して思想史的に明らかにすることにより,民衆の側からのキリシタン史見直しと近世史における新たな位置づけを試みた。
15世紀に中興の祖蓮如により再興された真宗本願寺派は,戦国大名に比肩する勢力を擁して全盛期を迎えていた。本書は真宗教団の活動と対比しつつキリシタン固有の展開を立体的に考察する。
両者に共通することは,下からの「信仰共同体」である〈コンフラリヤ〉や〈道場〉を組織し,領国支配を超越して全国的規模のネットワークを展開したことと,信仰対象として唯一の神デウスと阿弥陀一仏など「主神崇拝」的信仰形態という日本の宗教史上際だった特徴を示したことである。
本書は北半球の気候変動により日本や西洋を襲った飢饉や疫病など世界史的な視点をも導入し,16,17世紀のキリシタン現象がもつ歴史的射程を見事に描いて,研究史上に新たな1ページを開いた記念碑的作品である。