目次
第1章 霊操の性格とその成立
1 はじめに
2 近代修道霊性史におけるイエズス会
3 『霊操』の構造とその本質
4 イグナティウス・デ・ロヨラの生涯と『霊操』の成立
5 隠修士の伝統と霊操
6 「無学」による挫折とイエズス会の教育活動への展開
7 結語
第2章 『イエズス会学事規程』におけるイエズス会学校
1 はじめに
2 イエズス会の学校教育への参入と『イエズス会学事規程』
3 下級コレギウム
4 上級コレギウム
5 結語
第3章 A・ヴァリニャーノの外的旅路――その生涯と業績
1 はじめに
2 来日までの旅路
3 ヴァリニャーノの「危機」と適応主義への道
4 適応主義にもとづく日本布教
5 結語
第4章 A・ヴァリニャーノの内的旅路――日本における布教方針を支えた「識別」
1 はじめに
2 ヴァリニャーノの内面の旅路における問題場面の意味
3 1579年12月10日付書簡――ヴァリニャーノの「識別」
4 ヴァリニャーノの「識別」に関する書簡の意味
5 結語
第5章 キリシタン時代における日本のイエズス会学校教育
1 はじめに
2 イエズス会による学校建設まで
3 ヴァリニャーノの教育構想
4 セミナリヨ
5 ノヴィシアードおよびコレジヨ
6 教区神学校
7 結語
第6章 『日本のカテキズモ』――A・ヴァリニャーノの日本仏教批判
1 はじめに
2 『日本のカテキズモ』
3 『日本のカテキズモ』の特色
4 『日本のカテキズモ』における日本仏教批判の意図
5 『日本のカテキズモ』における日本仏教批判の検討
6 結語
終章
注
索引(人名・書名・事項)
内容説明
東インド巡察師A・ヴァリニャーノの活動を通して,キリシタン時代のイエズス会の教育事業を軸に日本への宣教活動を独自な視点から紹介する。
イエズス会は近代の修道霊性と学校教育に決定的な影響を与えた。創立者イグナティウス・ロヨラの「霊操」に基づく「個人としての自律的霊性」や「教育活動への展開」により,今日まで学校教育への影響は多大であったが,それは当時最高の高学歴者集団だったことに由来する。イエズス会教育の基本『イエズス会学事規程』(1599年)の教育理念は,キリスト教的人文主義とスコラ学の総合にあった。ヴァリニャーノは日本人の合理性を考え最先端の自然科学を紹介し,トリエント公会議の最新の神学を日本に伝えた。またギリシア語とギリシア古典に代えて日本語教育と日本の古典教育を採用し,先駆的な現地への適応主義の立場で対応した。本書では日本に建設されたセミナリヨ,ノヴィシアード(修練院),コレジヨ,教区神学校などの沿革や教育内容を明らかにする。
またヴァリニャーノは日本仏教への批判書『日本のカテキズモ』を著すが,真の対話とはならず,それは彼の「理性の言語」と宗教的体験に基づく「宗教の言語」とのすれ違いによるものだった。