ホーム > トマス・アクィナスにおける「愛」と「正義」
内容説明
近代においてカントの義務論倫理学以降,正しい行為の規準としての正義に関心が集中し,古代・中世の目的論的な倫理学や徳倫理など愛を重視する倫理学は,愛が規範と馴染みづらいこともあり顧みられなくなった。愛と正義はいわば倫理学的に対抗的な主題と見なされてきた。
本書は,倫理学における〈愛の位置づけ〉という観点から,トマスがアリストテレスの徳倫理の導入で果たした役割と有効性を明らかにする。著者は,アリストテレスが「自然本性」という概念のうちに生命活動が自己を実現する方向性を示し,「徳」をその生命エネルギーの源泉をなす構造的秩序としている点に光をあて,トマスがそれらの側面を受容しつつ,どう変容させたかをテキストに即して考察する。
トマスの思想空間は思いのほか多面的な広がりをもち,包括的・全体的理解に至るのが困難であるが,本書はプラトン=アウグスティヌスの伝統的な思想史とアリストテレス思想を受容し総合していったトマス思想の新たな地平を拓くとともに,現代倫理学においてより高い倫理を求めるうえで,近代的な正義を超えた愛の倫理の可能性を示唆する問題作である。
本書は,倫理学における〈愛の位置づけ〉という観点から,トマスがアリストテレスの徳倫理の導入で果たした役割と有効性を明らかにする。著者は,アリストテレスが「自然本性」という概念のうちに生命活動が自己を実現する方向性を示し,「徳」をその生命エネルギーの源泉をなす構造的秩序としている点に光をあて,トマスがそれらの側面を受容しつつ,どう変容させたかをテキストに即して考察する。
トマスの思想空間は思いのほか多面的な広がりをもち,包括的・全体的理解に至るのが困難であるが,本書はプラトン=アウグスティヌスの伝統的な思想史とアリストテレス思想を受容し総合していったトマス思想の新たな地平を拓くとともに,現代倫理学においてより高い倫理を求めるうえで,近代的な正義を超えた愛の倫理の可能性を示唆する問題作である。