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トマス・アクィナスの自己認識論
著者 | フランソワ・グザヴィエ・ピュタラ 著 保井 亮人 訳 |
---|---|
ジャンル | 哲学・思想 > 中世哲学 |
シリーズ | 知泉学術叢書 |
出版年月日 | 2021/10/20 |
ISBN | 9784862853479 |
判型・ページ数 | 新書・616ページ |
定価 | 本体6,500円+税 |
在庫 | 在庫あり |
目次
凡例
日本語版に寄せて
序文
1 研究課題の限定
2 アウグスティヌス『三位一体論』
2.1 自己認識の重要性
2.2 暗黙的認識(nosse)と明白な認識(cogitare)
2.3 自己認識の深淵
3 アリストテレス
第1章 感覚的な立ち帰り
1 運動の移行性
2 知覚の移行性
3 感覚的立ち帰りの不可能性
4 共通感覚の自己認識
4.1 経験的事実
4.2 「共通感覚」による解釈
5 共通感覚に対する批判
5.1 『真理論』10問9項
5.2 『真理論』1問9項
5.3 『真理論』1問9項の曖昧な点
6 感覚の不完全な立ち帰り
6.1 思考力との類比
6.2 人間の感覚的認識における立ち帰りの始まり
6.3 テキスト的根拠
第2章 立ち帰りの成立条件
1 直接的な働き
1.1 他のものの認識の優位
1.2 自己の認識可能性
1.3 結論
2 習慣的認識
2.1 意識に上らない現前
2.2 精神の現前の存在論
3 立ち帰りの二つの原因
第3章 前反省的意識
1 直接的働きと前反省的働きの同一性
2 対象の現前
3 前反省的意識の対象
4 結論
第4章 立ち帰りの様々な形態
1 表象像へのふり返り
1.1 表象像への還帰
1.2 ふり返りの存在論的条件
2 はね返りによる立ち帰り
3 抽象的分析
4 批判的判断――『真理論』10問8項
4.1 真理の絶対性
4.2 第一原理の指摘
4.3 批判的判断
5 厳密な意味での立ち帰り
5.1 立ち帰りの何性の分析
5.2 立ち帰りの働き
5.3 完全な立ち帰り――『真理論』1問9項
5.4 テキストによる確証
第5章 自己認識の全体像
1 神
1.1 神の完全な自己認識
1.2 すべてのものの認識
1.3 神における完全な立ち帰り
2 天使
2.1 導入
2.2 天使の本性と知性について
2.3 天使の認識
2.4 天使の自己認識
2.5 神への依存
3 自己認識と神の像
3.1 神に還る普遍的運動
3.2 像の段階
4 霊としての天使と人間
4.1 分離霊魂
4.2 霊としての人間霊魂
結論
1 要約
2 先行研究の検討
付論 長らく公刊されていなかった問題
訳者あとがき
文献表
索引(人名・事項・著作)
日本語版に寄せて
序文
1 研究課題の限定
2 アウグスティヌス『三位一体論』
2.1 自己認識の重要性
2.2 暗黙的認識(nosse)と明白な認識(cogitare)
2.3 自己認識の深淵
3 アリストテレス
第1章 感覚的な立ち帰り
1 運動の移行性
2 知覚の移行性
3 感覚的立ち帰りの不可能性
4 共通感覚の自己認識
4.1 経験的事実
4.2 「共通感覚」による解釈
5 共通感覚に対する批判
5.1 『真理論』10問9項
5.2 『真理論』1問9項
5.3 『真理論』1問9項の曖昧な点
6 感覚の不完全な立ち帰り
6.1 思考力との類比
6.2 人間の感覚的認識における立ち帰りの始まり
6.3 テキスト的根拠
第2章 立ち帰りの成立条件
1 直接的な働き
1.1 他のものの認識の優位
1.2 自己の認識可能性
1.3 結論
2 習慣的認識
2.1 意識に上らない現前
2.2 精神の現前の存在論
3 立ち帰りの二つの原因
第3章 前反省的意識
1 直接的働きと前反省的働きの同一性
2 対象の現前
3 前反省的意識の対象
4 結論
第4章 立ち帰りの様々な形態
1 表象像へのふり返り
1.1 表象像への還帰
1.2 ふり返りの存在論的条件
2 はね返りによる立ち帰り
3 抽象的分析
4 批判的判断――『真理論』10問8項
4.1 真理の絶対性
4.2 第一原理の指摘
4.3 批判的判断
5 厳密な意味での立ち帰り
5.1 立ち帰りの何性の分析
5.2 立ち帰りの働き
5.3 完全な立ち帰り――『真理論』1問9項
5.4 テキストによる確証
第5章 自己認識の全体像
1 神
1.1 神の完全な自己認識
1.2 すべてのものの認識
1.3 神における完全な立ち帰り
2 天使
2.1 導入
2.2 天使の本性と知性について
2.3 天使の認識
2.4 天使の自己認識
2.5 神への依存
3 自己認識と神の像
3.1 神に還る普遍的運動
3.2 像の段階
4 霊としての天使と人間
4.1 分離霊魂
4.2 霊としての人間霊魂
結論
1 要約
2 先行研究の検討
付論 長らく公刊されていなかった問題
訳者あとがき
文献表
索引(人名・事項・著作)
内容説明
自己認識については新プラトン主義やアウグスティヌスを通して多くの考察がなされ,また近現代哲学では主観性として主題化された。しかしこの中間に自己認識を扱わない長い時代があったと言われる。
自分自身に立ち帰るとは,主観性および自己認識に還帰することであり,自己認識に基づいてはじめて自分の外部のものが認識できることになる。
トマスは抽象的探究には多くの関心を示したが,個別的意識については断片的なテキストしか残さなかった。著者はその理由を明らかにするとともに,「立ち帰り」の観点から自己意識に光を当て,本格的にその意味を検討する。「立ち帰り」とは知性が自分の働きや本性を分析することであり,アリストテレスに繋がる直接的働きと,アウグスティヌスの系譜である霊魂の自己現前としての習慣的認識の二つの見方がある。トマスは両者の現実主義と内面の道を調和し独自の見地を展開する。
本書ではトマスの真理論や神学大全などのテキストにより自己認識を論じ,続編では13世紀後半の50年にわたる6人の哲学者が検討される。「直観」という偉大な考えを生んだ文化的土壌を理解するうえで彼らの自己認識論を考察することは,自然で適切な方法である。両書を通して,古代から現代に至る自己認識論のもつ射程を知ることは,今後の哲学研究に多くの刺激を与えるに違いない。
自分自身に立ち帰るとは,主観性および自己認識に還帰することであり,自己認識に基づいてはじめて自分の外部のものが認識できることになる。
トマスは抽象的探究には多くの関心を示したが,個別的意識については断片的なテキストしか残さなかった。著者はその理由を明らかにするとともに,「立ち帰り」の観点から自己意識に光を当て,本格的にその意味を検討する。「立ち帰り」とは知性が自分の働きや本性を分析することであり,アリストテレスに繋がる直接的働きと,アウグスティヌスの系譜である霊魂の自己現前としての習慣的認識の二つの見方がある。トマスは両者の現実主義と内面の道を調和し独自の見地を展開する。
本書ではトマスの真理論や神学大全などのテキストにより自己認識を論じ,続編では13世紀後半の50年にわたる6人の哲学者が検討される。「直観」という偉大な考えを生んだ文化的土壌を理解するうえで彼らの自己認識論を考察することは,自然で適切な方法である。両書を通して,古代から現代に至る自己認識論のもつ射程を知ることは,今後の哲学研究に多くの刺激を与えるに違いない。