目次
第1文書 「恩恵を欠いた人間の力と意志に関する問題」1516年
第1命題
第2命題
第3命題
解説 恩恵と自由意志の問題
第2文書 スコラ神学を論駁する討論 1517年
共通の言説の駁論 / 共通の見解の駁論 / スコトゥスと
ガブリエル〔・ビール〕駁論 / スコトゥスとガブリエル
駁論 / スコトゥス及びガブリエル駁論 / ほぼ共通の見解
の駁論 / ガブリエル駁論 / ガブリエル駁論 / 多くの人
たちの風習に反対して / ガブリエル駁論 / スコラ学者た
ちに対する駁論 / ある人々に対する駁論 / すべてのスコ
ラ学者たちに対する駁論 / 哲学者たちに対する駁論 / ス
コラ学者たちに対する駁論 / 道徳問題に対する駁論 / 共
通の言説に対する駁論 / 最近の論理学者たちに対する駁
論 / 枢機卿に対する駁論 / 同様の人たちとキャンブレー
の枢機卿に対する駁論 / スコラ学者たちに対する駁論 /
ガブリエルに対する駁論 / オッカムに対する駁論 / 枢機
卿およびガブリエルに対する駁論 / ガブリエルに対する
駁論 / スコラ学者たちに対する駁論 / 多くの博士たちに
対する駁論 / ガブリエルに対する駁論 / オッカム・枢機
卿・ガブリエルに対する駁論 / 枢機卿に対する駁論
解説
第3文書 「ハイデルベルク討論」1518年
神学的な提題
哲学からの提題
ハイデルベルクの修道会において,西暦紀元1518年5月に討論された命題の証明
解説
第4文書 ヨハン・エック博士の中傷に反対する修道士マルティン・ルターの討論と弁明 1519年
修道士マルティン・ルターは最善の読者に挨拶を送る
解説
第5文書 『スコラ神学者ラトムス批判』1521年
序文
第1章 ラトムスの序文に対する回答
1 ルーヴァン大学と反キリストの教皇
2 福音の教義と「慎み深さ」の関係
3 教皇勅書の扱い方と高位聖職者の弊害
4 神の言葉は暴動を引き起こさない
5 教皇の言葉と聖書の真理に関する討論
6 異端的な著作の焼却問題
7 ラトムスの叙述方法と教父たちの権威
8 ルターの第1命題:「神は不可能なことを命じる」の批判
9 第2命題:「洗礼の後にも罪は残る」
10 第3命題:「すべて死に値する罪は祭司たちに告白すべきである」
11 最終命題:「すべて善なるわざは聖なる旅人においては罪である」
第2章A ラトムスが攻撃する第1条項:「すべて善いわざは罪である」
1 ラトムスの聖書解釈の問題点,バビロン捕囚の歴史的な意味
2 イエス・キリストの教会の霊的な意味
3 聖書の言葉の解釈法,比喩や代喩法の知識
4 アウグスティヌスの規則「比喩は役立たない」の評価
5 聖書解釈法,とくに代喩法の考察
6 「神の恩恵なしには信仰者は神の前に立つことができない」「義人にして同時に罪人」
7 聖書によるルターの主張の証明
8 道徳的な義人と義を創造する人の違い
9 「怒り」の時代と「恩恵」の時代――罪人に注がれる神の恩恵
10 律法の義と信仰の義,福音と律法の区別(Ⅱコリント3・10以下の解釈)
11 イザヤ書第64章の解釈に対する結語
第2章B ラトムスが批判する他の聖書箇所,コヘレト7・20「善を行って罪を犯さない善人はこの地上にはいない」
1 ラトムスの批判,ルターの解釈では聖人の栄誉が攻撃されている。
2 コヘレトの言葉と列王記上第8章46節との比較
3 聖書本文の言語的考察
4 関連する聖書本文の扱い方
5 論理学を学習する必要
6 二重の非難が反対者に妥当する
7 罪は人間の本質に関わる
8 ヒエロニュムス批判
9 神の恩恵によって善を実行する人の祈り
10 義人に残存する罪に関する聖書の証言
11 信仰の確かさは罪深さにではなく,神の言葉にもとづく
第2章C 罪の概念規定:聖書の転義的解釈(tropologia)と義認論の転嫁(imputatio)
1 罪概念のスコラ的四区分と聖書の単純な教え
2 聖書の解釈学,比喩的表現の問題
3 聖書の転義的表現と罪のキリストへの転嫁
4 聖書的な罪概念とアリストテレスの範疇,支配する罪と支配された罪
5 教父の伝統,特にアウグスティヌスとの対決
6 パウロにおける罪の認識と証言
7 聖書の罪概念の要約:信仰義認論および支配する罪と支配される罪
8 自説に対する牧会的な配慮
9 要約,残存する罪は恩恵によって支配された罪である
10 教父の伝統と聖書の関係
第3章 ローマの信徒への手紙第7章の講解について
1 ラトムスのテーゼ:洗礼後の罪は本来的な意味で罪ではなく,弱さに過ぎない
2 罪のパウロ的な厳密な規定とラトムス的な消極的な規定
3 恩恵の下にある罪と恩恵の外にある罪
4 理性的根拠や共通感覚の無益
5 恩恵と罪の秘儀
6 律法による罪の認識,本性の壊敗と神の怒り(内的悪と外的悪)
7 福音による罪の勝利,信仰義認と神の恩恵(内的善と外的善)
8 結論,恩恵による赦しの完全性と罪を清める賜物
9 教父の伝統と聖書との関係
10 福音書とパウロ書簡からの証明
11 経験の証明:わざと信仰の確実性
12 信仰とはキリストの御翼の下に逃れ,キリストと一体化することである
13 論争の根本問題:信仰のみ,キリストのみ,聖書のみ
14 ラトムスは仮説だけ述べて確たる主張がない。アウグスティヌスとルター
15 残存する罪に対する二つの拠り所:キリストの義と賜物
16 罪概念のスコラ学的区分の問題
17 ローマの信徒への手紙(7・14-25)のラトムスによる意訳
18 聖書の本文とは相違する新造語の駁論――たとえばホモウシオス
19 義人にして同時に罪人の証言:ローマの信徒への手紙7・14以下
20 罪は罪として残存し,そこには区別がない
21 ローマの信徒への手紙7・16以下のルターによるパラフレーズ(意訳)
22 ラトムスへの最後の呼びかけ
『スコラ神学者ラトムス批判』の要約
1 本書の主題:恩恵と罪,律法と福音,キリストと人間
2 教義学の鍵としてのキリストの二本性説,キリスト論と救済論の関連
3 スコラ神学に対する警告と聖書の源泉への呼びかけ
4 ハンス・ヨナスへの結びの言葉
解説 『スコラ神学者ラトムス批判』について
総説 ルターによるスコラ神学批判
あとがき
索引
内容説明
ルターは初期の聖書講義を通して新しい神学思想を着想し,ローマ書講義が終わった1517年,「スコラ神学を批判する討論」を公開した。これは神学的に危険な要素をはらんでいたが,教会当局からの干渉はなかった。その数週間後に「95カ条の提題」で贖宥問題を取り上げたが,これは神学的にはさほど重要ではなかった。しかし政治的には重視され,民衆が理解しやすかったこともあり,ドイツだけでなくヨーロッパ各地で多大な反響を引き起こした。これによって宗教改革の火ぶたが切って落とされたのである。
1521年のヴォルムスの国会以後,宗教改革は現実味を増しルターの思想は危険視され,遂にヴァルトブルク城に幽閉された。そこで聖書のドイツ語訳に従事しつつ,初期討論集への批判に対する反批判を試みた「スコラ神学者ラトムス批判」を執筆し,初期ルター神学が豊かに展開した。
後期スコラ神学とはオッカムの影響を受けたガブリエル・ビールの思想を指す。その中心思想は修道目的である,神により義人と判断される「義認」を得るための準備についての学説である。いわゆる恩恵と自由意志のどちらを優先するかという問題であり,ルターは自由意志を優先するビールを批判し,関連の文書を発表した。本書は宗教改革の基本となる難解な一連の文書の待望の翻訳と紹介である。関連書籍
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