目次
序論 キリスト教人間学の学問的特質
Ⅰ 現代人間学の成立とキリスト教人間学
第1節 第一次世界大戦後の思想状況
第2節 学問の危機と再建への道
第3節 現代における人間学の誕生
第4節 キリスト教人間学の特質
Ⅱ 聖書の人間観の特質
第1節 キリスト教の歴史的成立
第2節 創造思想
第3節 契約思想
第4節 宗教思想
第5節 倫理思想
第6節 人間の概念
第7節 罪悪思想
Ⅲ キリスト教人間学の歴史的発展
第1節 キリスト教と異文化との接触
第2節 キリスト教古代の人間学
第3節 中世の人間学
第4節 宗教改革時代の人間学
第5節 近代の人間学
第6節 解体の時代における人間学
Ⅳ 現代のキリスト教人間学
第1節 シェーラーとプレスナーの人間学
第2節 現代のキリスト教人間学――バルト,ブルンナー,ニーバー,ティリッヒ,パネンベルク
第3節 日本におけるキリスト教人間学の確立
Ⅴ キリスト教人間学の主要課題
第1節 キリスト教人間学の三分法――霊性・理性・感性
第2節 「神の像」と「人間の尊厳」
第3節 性善説と性悪説――良心概念の検討
第4節 対話と応答的人間
第5節 人間と人格の区別
第6節 罪とその救い
第7節 信仰と認識作用
第8節 信仰と愛のわざ
第9節 キリスト者の試練
第10節 人格共同体
第11節 生と死――キリスト教の死生論
Ⅵ 人間と文化
第1節 宗教と文化
第2節 キリスト教文化の諸類型
第3節 キリスト教による文化総合の試み
第4節 教会と文化
Ⅶ 人間の社会性
第1節 人間と社会形態
第2節 キリスト教の社会倫理
第3節 日本的人倫組織とキリスト教
第4節 恥の文化と良心の文化
第5節 愛の諸相
第6節 教養・教育・死の理解
Ⅷ キリスト教的な霊性
第1節 キリスト教霊性思想史の一般的な展開
第2節 霊性の機能
第3節 東西の霊性についての比較
第4節 仏教的な霊性との対話
第5節 キリスト教の深化と普遍化
Ⅸ 人間と歴史
第1節 歴史の起源と目標
第2節 歴史と人間形成
第3節 世俗化と大衆化
第4節 カイロスとロゴス
第5節 歴史と終末論
付論1 フランクルの三つの価値――創造価値・体験価値・態度価値
付論2 カイロスとロゴス――時が来れば実現する神の言葉
あとがき
参考文献
索引(人名,事項)
内容説明
半世紀以上にわたり人間学を探究してきた著者が,キリスト教人間学について,系統的,組織的に論述した他に類のない画期的概説である。キリスト教概論,キリスト教史として読めると同時に,キリスト教の多様な側面を描いたヨーロッパ文化論としても示唆に富む内容となっている。
聖書の人間観からその歴史的発展と現代に至る人間観の変遷をたどるとともに,人間観の主要課題:霊性・理性・感性,神の像,良心,対話,人格,罪,信仰の認識,愛,試練,人格共同体,生と死などを丁寧に説明し,さらにキリスト教社会における,人間と社会,人間の社会性,キリスト教の霊性,人間と歴史など広範なテーマを詳述する。
哲学,思想,文学,芸術から歴史,法学など幅広いヨーロッパ研究者の基本的素養になると共に,ヨーロッパ文化に関心を持つ読者にとっても,ヨーロッパの思想と文化の基底に流れる人間のあり方を見事に描いた本書は,座右の書として長く活用できる書物となろう。
キリスト教文化圏の人間理解とは何か。古代から中世に及ぶ複雑でダイナミックなその歴史は,近代になり世俗化して広範に展開するが,世俗主義とニヒリズムや自然科学などの影響も受けて,信仰自体が衰退し現代に至った。
環境問題をはじめ貧困や感染症,そして多様に浸潤する社会的病理現象など,今日,人類が直面する課題に対してキリスト教の可能性を問う,示唆に富む一書である。