ホーム > 現代の哲学的人間学

現代の哲学的人間学

間主観性の人間学とは何か

現代の哲学的人間学
著者 金子 晴勇
ジャンル 哲学・思想
出版年月日 2022/04/30
ISBN 9784862853622
判型・ページ数 新書・392ページ
定価 本体5,000円+税
在庫 在庫あり
 

目次

はじめに

序論 哲学的人間学の意義
 現代における人間学の成立
 人間学の誕生の背景
 人間学としての哲学の意義と問い
 人格の観点,とりわけ対話による再考の意義
 現象学的人間学の視点について
 人間学の新しい可能性について
 おわりに

第Ⅰ部 哲学的人間学の歴史と根本問題

Ⅰ 哲学的人間学の現代的な展開
 1 歴史的な回顧――ソクラテス,アウグスティヌス,カント
 2 シェーラーの『宇宙における人間の地位』
 3 カッシーラーの文化的人間学
 4 プレスナーの脱中心性の人間学
 5 ゲーレンの生物学的人間学
 6 メルロ=ポンティの現象学的人間学

Ⅱ 現代の生物学と医学における人間学の発展
 はじめに
 1 ポルトマンの人間生物学
 2 ボイテンディークの発見
 3 医学的人間学の登場
 4 医学的人間学による深層心理の解明

Ⅲ 人間学の新しい可能性
 はじめに
 1 シェーラーの間主観性の人間学
 2 対話的な人間学
 3 対話による協働――共同形式と生の高揚
 おわりに

Ⅳ 他者認識と間主観性――マックス・シェーラー学説の批判的検討
 はじめに
 1 他者認識のアポリア
 2 超越論的主観性から間主観性へ
 3 非対象的な人格に対する理解
 4 社会的にアプリオリなもの,「汝の直観的明証性」
 5 他我の知覚理論と体験流
 6 内的知覚における「表現」の役割
 おわりに

Ⅴ 間主観性の人間学――人間の内なる社会の考察
 はじめに
 1 日常生活の間主観的性格
 2 人間の内なる社会の問題
 3 人間の内なる社会とは何か
 4 間主観的な関係行為と人間の内なる社会

Ⅵ 哲学的人間学の根本問題
 1 宇宙における人間の地位
 2 人間と自然
 3 事物認識と人間認識
 4 心身の問題
 5 認識能力の人間学的考察
 6 人間と人格

第Ⅱ部 文化・社会・宗教との関連

Ⅶ 人間と文化
 はじめに
 1 「話す」行為と言語文化
 2 「作る」行為と芸術文化
 3 「祈る」行為と宗教文化

Ⅷ 人間と社会
 1 人間存在の社会性
 2 「間」の範疇および「相互性」・「間柄性」・「共同性」
 3 個人と社会との関係
 4 社会化のプロセス
 5 社会的創造作用としての愛の作用
 6 原関係と関係行為の弁証法
 7 人格の三類型と共同体
 8 日本人の社会性の特質

Ⅸ 人間と宗教――霊性の機能論的考察
 1 自然的な素質としての霊性
 2 所与としての霊性
 3 自然的霊性と啓示を受容する宗教的な霊性
 4 霊性の諸機能
 5 創造と愛のわざ
 6 霊性の論理

Ⅹ 現代人間学における心身相関説――シェーラーと現代の医学的人間学からの考察
 はじめに
 1 心身論の歴史における人間学的二区分法と三区分法
 2 ルサンティマンの精神病理学的研究
 3 シェーラー人間学に対する批判
 4 現代の医学的人間学の試み
 5 心身の統合機能としての「霊性」の役割

終章 哲学的人間学の現代的意義
 1 人格と他者
 2 心の機能の深淵と射程
 3 聴覚の機能と霊性
 4 人間学の間主観的構成
 5 霊性の機能的研究の意義
 6 哲学的人間学を間主観的に解明する意義

あとがき
参考文献
索引

このページのトップへ

内容説明

人間学については古代から現代まで多くの学説がある。プラトンの観念論的人間学をはじめ,ヘブライズム信仰による人間学,哲学と信仰を統合するアウグスティヌスや中世の人間学,啓蒙時代の理性的で自然主義的な人間学,ヘーゲル哲学を解体したフォイエルバッハやキルケゴールの人間学など。そのなかで哲学的人間学の成立にはカントとマックス・シェーラーの貢献が多大であった。
哲学的人間学は,シェーラー『宇宙における人間の地位』(1928年)をきっかけに,同年にヘルムート・プレスナーが『有機体の諸段階と人間――哲学的人間学入門』を刊行し,人間の存在を全体的に考察する学問として確立した。
シェーラーは,新たな展開をした生物学や個別諸科学と現象学的方法により,人間学の基盤を確立した。彼は価値倫理学と形而上学を経て人間学に至ったが,同時に禁欲原理としての「精神」の中に「人間の特殊地位」を見出した。さらにプレスナーは有機的自然界に対する「人間の特殊地位」を人間の「脱中心性」により捉えた。
人間学とは「自己自身についての知識」である。自己認識こそ芸術,宗教,哲学における知的探求の目的である。本書は一世紀にわたる多様な研究成果を,対話と関主観性の観点から総合的に考察した,最新の本格的概説書である。

このページのトップへ

このページのトップへ