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現代ヨーロッパの人間学

精神と生命の問題をめぐって

現代ヨーロッパの人間学
著者 金子 晴勇
ジャンル 哲学・思想
出版年月日 2010/05/10
ISBN 9784862850829
判型・ページ数 菊判・384ページ
定価 本体5,600円+税
在庫 在庫あり
 

目次

序 論
はじめに/人間学における伝統的な三分法/世俗化による精神の亡霊化/シェーラーの「問い」とカッシーラーの「知的中心の喪失」/世俗化社会における人間の危機と霊性の喪失
1 現代ヨーロッパの思想状況と人間学の意義
第一次世界大戦後の思想状況/ワイマール文化/実存思想と現象学/学問の危機と再建への動向/精神的危機の原因/諸科学の発展と実証主義/『宇宙における人間の地位』の成立状況
2 シェーラー人間学とその二元論的構成
はじめに/シェーラー人間学の特質/シェーラーの間主観性学説/宗教的作用としての霊性の意義
3 カッシーラーの人間学と心身論
はじめに/シェーラー二元論の評価と問題点の指摘/シンボル機能にもとづく人間学
4 プレスナーとゲーレンの哲学的人間学
はじめに/プレスナーの哲学的人間学/ゲーレンの人間学/批判的考察/プレスナーにおける三分法の形態と意味/ゲーレンの危機意識と代替説
5 実存哲学と人間学
はじめに/ハイデガーとヤスパースによる人間学批判/実存哲学の他者理解
6 現象学的人間学の展開
はじめに/フッサールの『現象学と人間学』および形而上学の問題/メルロ=ポンティの現象学的人間学/シュトラッサーにおける現象学と人間科学との対話/インガルデンの文化的人間学/宗教の現象学的解明
7 解釈学的人間学
はじめに/シェーラーの解釈学的人間学/ディルタイの解釈学的方法/ガダマーの解釈学と作用史的方法/リクールと解釈学的人間学
8 対話論的人間学
はじめに/ブーバーによるシェーラー人間学の批判/ブーバーの対話的人間学/同時代の対話的思想家たち
9 社会学的人間学
はじめに/コントとマルクスに対するシェーラーの批判/シェーラーの社会学的人間学/バーガーの弁証法的社会学説/カール・マンハイムの知識社会学/共同体における人格と価値/人格の三類型と共同体/付論 日本人の社会性の特質
10 生物学的人間学
はじめに/ゴールドシュタインにおける生命と精神/ユクスキュルの環境理論/ボルクの特殊化と停滞理論/ポルトマンの「子宮外早世の一年」学説/ボイデンディークの人間学/ローレンツの学説/ヨーロッパ近代の世俗化と科学主義の問題
11 医学的人間学と心身相関理論
はじめに/ルサンティマンの精神病理学的研究/フロイトの自然主義的愛とその批判/ビンスワンガーの現象学的人間学/フランクルの「実存分析」/ヴィクトール・フォン・ヴァイツゼッカーの心身相関論/医学における深層心理学的な人間学
12 キリスト教神学の人間学
はじめに/弁証法神学における人間学論争(バルトとブルンナーおよびゴーガルテン)/ニーバー兄弟のキリスト教人間学/ティリッヒの哲学的神学と人間学/パネンベルクの神学的人間学/テイヤール・ド・シャルダンの宇宙論的人間学/ベンツの神秘主義的人間学
終章 ヨーロッパにおける人間学的三分法の運命

付属資料
 エルンスト・カッシーラー『現代哲学における「精神」と「生命」』

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内容説明

「わたしたちは人間学の時代に生きている。人間についての包括的な学問が,現代では,精神的努力を傾けるべき主要目標となっており,学問研究の多くの部門が人間学に集中している。」(パネンベルク)
現代人間学はマックス・シェーラー『宇宙における人間の地位』(1928年)をもって始まる。刊行当初からその基本姿勢が「精神と生命の二元論」であるとの批判がわき起こり,この批判を中心に人間学研究は多様な展開を見た。カッシーラーやプレスナー,ゲーレンらが独自の知見を示すとともに,メルロ=ポンティは現象学的人間学の立場からシェーラーの問題意識を継承,展開した。また現代の人間学はシェーラーが試みたように人間科学の成果を積極的に取り入れて,個別的な学問領域において大いに発展している。
本書は,さまざまな形で進展する人間学の実相に精神と生命の視点から迫り,その成果の全体像を見事に叙述した,他に類のない貴重な業績である。
半世紀に及ぶ著者による人間学研究は『ヨーロッパ人間学の歴史』に続く本書をもって集大成され,記念碑的業績として長く読み続けられるであろう。

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