人文学の論理
五つの論考
著者 | エルンスト・カッシーラー 著 齊藤 伸 訳 |
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ジャンル | 哲学・思想 |
出版年月日 | 2018/12/10 |
ISBN | 9784868252878 |
判型・ページ数 | 4-6・246ページ |
定価 | 本体3,200円+税 |
在庫 | 在庫あり |
目次
I
1. 古代における自然と人間:秩序の成立
2. キリスト教におけるロゴスの概念
3. 哲学的合理主義における精神と現実:デカルトの二元論
4. 自然の論理から人文学の論理へ:ヴィーコとヘルダー
5. 歴史主義:ヘルダーによる精神の現象学
6. 生産的な過程としての言語習得
7. 18世紀における形而上学の絶対主義の終焉
8. 「シンボル形式」の一つとしての科学
9. 「シンボル形式の哲学」の意義
II
1. 古代の二元的世界像から自然科学的一元論へ:「進化」の概念
2. ユクスキュルの環境理論:生物の設計図と人間の自由
3. 人間に固有な世界としての「表象界」
4. 技術的文化の完成による人間の自己喪失:言語の問題
5. 芸術の人文学的価値
6. 芸術における主観と客観の相互浸透
第2論考:事物の知覚と表情の知覚
1. 19世紀における自然主義と歴史主義の分裂
2. 知覚の現象学:知覚における「それ」と「汝」
3.「物理的なもの」における「理念的なもの」:「意味」の登場
4.「始発点」としての表情の知覚から「終着点」としての事物の知覚へ
5.「我」と「汝」の世界の構築:「機能」としての自己意識
6. 人間における表現形式の能動性:「共通世界」の構築
7. シンボル形式における二重の機能:分離と再統合
第3論考:自然の概念と文化の概念
I
1. 文化概念の論理的特性における3つの様相
2. 文化の論理:言語と芸術における構造・形式の問題
3. 様式概念と価値概念
4. 人文学と経験的心理学の方法論:ヘルマン・パウル,カール・ビューラー
5. それぞれの学における「特殊」と「普遍」
6. 現実の知覚に関する問題
7. 間主観的世界としての人間文化
II
1. テーヌの芸術哲学:自然主義による批判
2. 人文学における3つの説明原理:人種・環境・時代
3. 人間の「全体像」がもとづく根拠
第4論考:形式の問題と因果の問題
1. 形式的思考と因果的思考
2. 自然科学と人文学の断絶
3. 生物学における全体性の概念
4. 心理学における全体性の概念
5. 人文学の形式としての「シンボル形式」
6. 言語の起源に関する問い
7. 哲学における「懐疑」:構造の問題と因果の問題
8. 「飛躍」としての人間文化
第5論考:「文化の悲劇」について
1. 人間文化の正当性:ルソーからカントへ
2. 文化における自我の無力:ゲオルク・ジンメル
3. 文化の神秘主義
4. 人間文化の弁証法的特質:「汝」との出会い
5. 精神的発展の弁証法としての「ルネサンス」
6. 制定の産物としての言語の変容
7. 創造的な過程における持続と刷新
8. 芸術の類型論とベネデット・クローチェ
9. 抒情詩における不変な形式
10. 宗教的理念の運動
11. 文化の生成:「シンボル形式」の機能
解説
訳者あとがき
注
人名索引
内容説明
本書はエルンスト・カッシーラー(1874-1945)が渡米する前に母語のドイツ語で執筆した最後の書物(1942年刊)である。人文科学と自然科学の論理は異なることを明快に論じている。科学と技術が競い合っていた1940年代,人文学固有の権利が損なわれるなかで,人文学の対象を自然科学の物差しで測れば,まったく違ったものになることを強調し,人文学独自の方法論について考察する。
人文学の対象とは何か,事物の知覚と表情の知覚,自然の概念と文化の概念の違い,形式的思考と因果的思考について,文化の悲劇,など人文学をめぐる多彩な主題に光を当て,人文学の豊かな可能性を検討する。
リッケルトによる個性記述的と言われる文化科学に対し,言語,芸術,神話,宗教,科学など,カッシーラーが〈シンボル形式〉と呼ぶ精神の機能によって,人間がどのように文化の世界を構築するかを示す。シンボル形式の哲学によりカントの「理性批判」を「文化批判」へと展開し,さらにシェーラーの影響を受け「哲学的人間学としての文化哲学」を確立,最後に「文化の悲劇」と対決することにより,文化のもつ機能と人間に及ぼす作用を明らかにする。
科学と技術が先鋭化する今日,人文学や教養の危機が叫ばれるなかで本書の意義はますます高まっている。