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瞬間・脱落・歓喜

ニーチェと永劫回帰の思想

瞬間・脱落・歓喜
著者 岡村 康夫
ジャンル 哲学・思想
出版年月日 2023/10/10
ISBN 9784862853912
判型・ページ数 4-6・560ページ
定価 本体4,500円+税
在庫 在庫あり
 

目次

凡例

序 到来する狂気

第一章 永劫回帰の思想の到来
 第一節 悪霊の囁き
 第二節 ツァラトゥストラの受胎と分娩
 第三節 さらばもう一度!

第二章 もう一歩先へ!――七つの序言
 第一節 プラトン主義の誤謬
 第二節 自己批判の試み
 第三節 自由精神
 第四節 新しい遠近法
 第五節 最後の一歩
 第六節 快癒する者
 第七節 新しい展望

第三章 それにもかかわらず――『この人を見よ』
 第一節 無限の光の充溢
 第二節 頽廃にして新しい始まり
 第三節 栄養,場所と気候,気晴らし
 第四節 今も読まれず,将来も読まれず
 第五節 ディオニュソス的肯定と永劫回帰の思想
 第六節 戦闘的考察
 第七節 精神の岐路
 第八節 日向ぼっこする海獣
 第九節 奔放な舞踏歌
 第十節 ツァラトゥストラが襲った
 第十一節 未来の哲学の序曲
 第十二節 最も不気味なものの到来
 第十三節 実り豊かな秋の浪費
 第十四節 ドイツ的とは何か
 第十五節 私の運命

第四章 偶像の黄昏――『偶像の黄昏』
 第一節 気晴らし,日向ぼっこ,道草
 第二節 頽廃者としてのソクラテス
 第三節 理性と感性
 第四節 新しい始まり
 第五節 生に敵対するもの
 第六節 四つの大きな誤謬
 第七節 人類の改善者たち
 第八節 ドイツ人に欠けているもの
 第九節 近代という時代の様相
 第十節 古代の人々に負うもの

第五章 キリスト教への呪詛――『反キリスト者』
 第一節 誠実さと修練と無関心と
 第二節 近代批判
 第三節 神学・哲学批判
 第四節 キリスト教のユダヤ的由来
 第五節 イエス像の歪曲
 第六節 禍音の使者
 第七節 キリスト教批判
 第八節 キリスト教と仏教
 第九節 キリスト教とマニ教
 第十節 古代ギリシャ・ローマ世界とルネサンスの事業
 第十一節 反キリスト教的命題

第六章 ニーチェとヴァーグナー
 第一節 ヴァーグナーの場合(一八八八年,トリノ書簡)
 第二節 ニーチェ対ヴァーグナー

おわりに

あとがき
参考文献
索引

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内容説明

フリードリヒ・ニーチェ(1844-1900)の生涯と彼の思想展開の極致は1888年にある。この年,彼の最終的境位となる5冊の著作が書き上げられ,執筆生活はこれで終わる。
著作のうち『この人を見よ』では晩年の根本境涯を開く「出来事」である「永劫回帰の思想」が語られる。その「出来事」は彼固有のものであると同時に西洋形而上学,西洋文化の固有性として理解できる。
晩年の思想展開は新たな境涯の開けとなり,1881年の「永劫回帰の思想」の到来が決定的となった。この年から1888年に至る彼の極めて豊かな思索活動は「力への意志」や「遠近法」を中心に新たな「始まり」の訪れとなる。その「始まり」はニヒリズムの徹底としての突発的非連続的「始まり」であり,形而上学的世界理解を逆転的飛躍的に「もう一歩先へ」踏み出すものであった。形而上学的理解の枠組みであるイデアと現象,実在と仮象,物自体と現象あるいは彼岸と此岸などの枠組みそのものが突破される。
永遠に回帰する「瞬間」とは我々自身が真摯な自己対峙を通して決すべき「瞬間」である。「脱落」とは「神は死んだ」後の「霊感」や「啓示」の経験を言う。「瞬間」と「脱落」は否定的体験ではなく,逆転的飛躍的体験であり,喜びに溢れる感謝の言葉となり,語り,歌い,さらには笑い,踊って伝えようとした「歓喜」であった。
ドイツ神秘思想やシェリングの研究者である著者が,学生時代から抱いてきたニーチェの実像に挑む意欲作である。

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