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解体と遡行

ハイデガーと形而上学の歴史

解体と遡行
著者 村井 則夫
ジャンル 哲学・思想
出版年月日 2014/11/15
ISBN 9784862851994
判型・ページ数 A5・376ページ
定価 本体6,000円+税
在庫 在庫あり
 

目次


第一章 始源への遡行――ハイデガーと前ソクラテス期の哲学者たち
序 終末と始源
一 ハイデガーとギリシア哲学
存在の多義性と存在の問い/現象学と歴史経験
二 ハイデガーと前ソクラテス期
構造から歴史への移行/始源への遡行
三 古代ギリシアにおける存在経験と言語経験
自然の再解釈/歴史と解釈/解釈学の変貌
四 原初の思索者たち
アナクシマンドロス――現存と脱現存の接合/パルメニデス――存在と襞/ヘラクレイトス――「現」の成立
結語 始源と遡行
第二章 スコラ学からアウグスティヌスへ――初期ハイデガーと中世哲学
序 思考の由来
一 新スコラ学の風土
中世哲学からの出発/後期スコラ学と新カント学派
二 スコラ学の流動化
思弁文法学と超越論的論理学/意味と知/存在様態の両義性
三 スコラ学の解体と教父思想
スコラ学からの離反/アウグスティヌスへの接近
四 アウグスティヌスと超越論性
愛と探究/第二の超越論性
五 実存論的様態論の形成
記憶と分散/超越論的思考の原型
結語 ドイツ神秘思想と中世末期の知性論
第三章 振動と分散――ハイデガーのライプニッツ解釈をめぐって
序 哲学の迷宮
一 モナドとしての現存在
論理学から存在論へ――超越論的論理学の存在論化/衝迫――モナドの暗い底
二 視点性と自己性
遠近法眼差しの問題/有限性と自我性
三 根拠の次元へ「よりもむしろ」と「存在の彼方」
振動と分散/根拠への遡行
結語 自由と深淵
第四章 中間領域としての人間――カントの人間学からハイデガーの脱人間学へ
序 人間学の問い
一 「人間学」の背景と位置づけ
宇宙論から人間論へ/人間とは何か
二 「人間学」の変遷――カントからドイツ人文主義へ
「実用的見地からの人間学」と修辞学/ヘーゲルとドイツ人文主義
三 「人間学」からの離脱――ハイデガーのカント解釈
現存在の分散と様態/有限性と分散
結語 超越論的人間学の課題
第五章 媒介の論理とその彼方――ハイデガーのヘーゲル『精神現象学』解釈をめぐって
序 二つの現象学
一 方法的媒介と知の成立
媒介と循環/知の成立
二 媒介と交叉配列(キアスム)の論理
弁証法と超越論的論理学/知の成立と「として」構造
三 「力」の超越論的作動
地平の論理から知の自己露呈へ/振動する媒体としての「力」
四 生命と時間性
自己性と生命/媒介の生成に向けて
五 媒介と否定性
懐疑(スケプシス)と超越論的苦痛/媒介・無・差異
結語 超越論性の痛み
第六章 媒介と差異――ドイツ人文主義とハイデガーの言語論
序 人文主義と媒介の問題
一 言語と超越論性
超越論的媒介性の次元――ドイツ人文主義の言語論/純粋理性のメタ批判と言語起源論――ハーマンとヘルダー
二 媒体としての言語――フンボルトの言語論
起源から超越論性へ/記号から媒体へ/活動性(エネルゲイア)としての言語と世界観
三 媒介と現存在――ハイデガーの言語論
言語論・存在論・現象学/言語の成立と遂行/媒介と図式
四 媒介から差異へ
ハイデガーとドイツ人文主義/起源と根源
結語 差異と裂開
第七章 地平と遠近法――ハイデガーの『ニーチェ』第一巻における地平論の帰趨
序 地平と限界線
一 地平的図式と遠近法
力への意志の一般的性格/カオスの図式化としての認識
二 地平論と永劫回帰
循環と時間性/瞬間性としての永劫回帰
三 地平と真理
人間化と脱人間化/地平論の破綻
結語 「地平とはさらに別の他なるもの」
第八章 存在の思索と分極の力学――ハイデガーとニーチェにおける修辞学・解釈学・文献学
序 ロゴス論の再構成
一 ニーチェにおける文献学・修辞学・解釈学
同一性の解体と構成/解釈と仮象性
二 ハイデガーにおける修辞学・解釈学・文献学
解釈学と修辞学の実存論化/ハイデガーのニーチェ解釈
三 ロゴス論の極限へ
解釈学の根拠づけ/形而上学の形而上学
結語 「として」の文献学へ向けて

初出一覧/索引/欧文目次

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内容説明

ハイデガーは2500年以上にわたる古代から現代までの多くの哲学者と対話することにより,独自の思想圏を形成してきた。そこでのテクスト解釈は主著『存在と時間』へと収斂していくが,そこで解決しえなかった課題をさらに展開するために,新たな対話と解釈が試みられ,ハイデガーの思索に独特な相貌を与えていく。
著者はハイデガーが読み込んだ,前ソクラテス期の哲学者(始源への遡行)から中世のスコラ学・アウグスティヌス(超越論的思考),そして近世のライプニッツ(振動と分散),カント(中間領域としての人間),ヘーゲル(媒介の論理とその彼方),さらにはフンボルトのドイツ人文主義(媒介としての言語)やニーチェ(地平と遠近法,修辞学・解釈学・文献学)にいたる多くのテクスト解読の現場に降り立って,ハイデガーがどのように原テクストを読み替えて自己の思想の中に取り入れていったのかを,原テキストとの差異とともに考察し,ハイデガー思想誕生の瞬間を解明した画期的な業績である。
ハイデガーの主題である,思考の起源への遡行,存在論史の解体,哲学史の再構成という多様な問題群が交叉して表出する叙述は,読者を新たな理解へと導くだろう。

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