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否定神学と〈形而上学の克服〉  新刊

シェリングからハイデガーへ

否定神学と〈形而上学の克服〉
著者 茂 牧人
ジャンル 哲学・思想
宗教
出版年月日 2024/01/20
ISBN 9784862853981
判型・ページ数 A5・290ページ
定価 本体4,500円+税
在庫 在庫あり
 

目次

序 文


第Ⅰ部 シェリングの否定神学的省察

第一章 テュービンゲン時代のパウロ解釈
 第一節 テュービンゲン時代のカントの影響
 第二節 シェリングのパウロ解釈
  1 パウロの自己理解としての使徒像
  2 当時の論争の中のパウロの姿
  3 シェリングのパウロの神学解釈
  4 シェリングのキリスト教の解釈
 結び

第二章 神の神秘と人間の自由
 第一節 シェリングの自由
 第二節 人間の自由の根拠としての神の構造
  1 実存と根底
  2 無底(Ungrund)の働き
 第三節 神の生成
 第四節 神の創造の時間性
 結び

第三章 悪の問いと弁神論
 第一節 〈善の欠如〉としての悪の原理批判
 第二節 流出説からシェリングへ
 第三節 ポテンツ論
 結び

第四章 叡智界の創造論――シェリング『諸世界時代』を中心にして
 第一節 叡智界の創造――創造論と自由論の交叉するところ
 第二節 二元論と汎神論との組み合わせとしての三元性の構造
 第三節 統一原理としての「何ものも意欲しない意志」
 結び

第五章 哲学的キリスト論と聖書解釈
 第一節 シェリングの思索の前提
 第二節 三一性の神の構造について
 第三節 哲学的キリスト論
  1 受肉
  2 十字架に至るまでの従順
  3 復活の命――否定神学的考察
 結び


第Ⅱ部 ハイデガーの神学への影響とシェリング解釈

第六章 ハイデガーの神学への影響とシェリング講義
 第一節 ハイデガーの思索のプロテスタント神学への影響と批判
  1 ブルトマンの流れ
  2 バルトの流れ
  3 バルトの弟子ノラー
 第二節 ハインリッヒ・オット
 第三節 アルフレッド・イェーガー
 結び

第七章 ハイデガーの無底解釈をめぐって――「シェリング演習」(一九二七/二八年)をもとにして
 第一節 自由論講義(一九三六年)について
 第二節 「シェリング演習」(一九二七/二八年)の無底について
 第三節 シェリングの無底(Ungrund)とハイデガーの深淵/脱根底(Abgrund)
 結び


第Ⅲ部 ハイデガーの否定神学的思索と〈形而上学の克服〉

第八章 現象学の学問論
 第一節 論理のもつ真理性
 第二節 現象学の概念
 第三節 真理概念
 第四節 顕現しないもの(das Unscheinbare)
 第五節 真理の根拠としての同語反復
 結び

第九章 覆蔵性をめぐって――一九三〇年「真理の本質について」諸講演原稿をもとにして
 第一節 一九三〇年諸講演原稿の解釈について
  1 フレンツキの解釈
  2 ロザレスの解釈
  3 ブラッサーの解釈
 第二節 一九三〇年諸講演の超越論哲学のモチーフ
 第三節 一九三〇年諸講演の〈形而上学の克服〉のモチーフ
 結び

第一〇章 宗教哲学における真理論
 第一節 ハイデガーにおける真理論
 第二節 真理概念の哲学上の論点
 第三節 ハイデガーの真理概念から導出される神学
 第四節 結び 真理概念の二つの論点

第一一章 〈形而上学の克服〉のモチーフ――ルター・パスカル・キルケゴール
 第一節 ルターのモチーフ
 第二節 パスカルのモチーフ
 第三節 キルケゴールのモチーフ
 結び

あとがき
参考文献
ドイツ語要旨
索引

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内容説明

前著『ハイデガーと神学』では,ハイデガーの思索と省察を初期から後期にかけて,否定神学あるいは隠れたる神の神学を伝統の中に位置づけ,そこから〈形而上学の克服〉を論じた。それに対し読者からは「ハイデガーをキリスト教思想で理解するのは,ヨーロッパの思想家なのだから当たり前である」などとの批判を受けた。しかしハイデガーはルターから強い影響を受けたが,後期の言語論,ヘルダーリン論,シェリング論,真理論,また,深淵/脱根底を通して哲学的な思索を展開した。
それらの批判を受けて,本書ではシェリングの考察からハイデガーのシェリング解釈をへて,ハイデガーの真理論を論じる。中でも特にシェリングの無底(Ungrund)の理解から,ハイデガーの真理論における深淵/脱根底(Abgrund)の働きを導出し,理性では理解できない否定神学的省察により〈形而上学の克服〉を遂行した。
著者はシェリング『人間的自由の本質』を読みなおし,神の中の根底や無底の働き,つまり神の中の自然や外部性・異他性の働きこそが,自由と悪の問題の端緒であり,解決のための鍵であることを見出した。さらにシェリングの無底の働きは,ハイデガーの深淵/脱根底の働きへと継承されていると解釈した。
ハイデガーはルターの〈十字架の神学〉から着想を得て,さらにパスカル,キルケゴールを踏まえつつ,シェリングの無底と自己の深淵/脱根底の省察から,神を最高存在者とする存在・神・論としての形而上学の批判と克服を遂行したのである。

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