対話的現象学の理念
著者 | シュテファン・シュトラッサー 著 齊藤 伸 訳 |
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ジャンル | 哲学・思想 哲学・思想 > 現象学 |
出版年月日 | 2017/04/15 |
ISBN | 9784862852557 |
判型・ページ数 | 4-6・268ページ |
定価 | 本体3,300円+税 |
在庫 | 在庫あり |
目次
参考文献
はしがき
第1講義 意識の現象学的考察
1. 序論 岐路に立つ現象学者
2. 現象学における直観的および反思弁的特質
3. 還元的-弁証法的哲学としての現象学
4. 志向性の哲学としての現象学
5. 発生の哲学としての現象学
6. 要約と結論
第2講義 フッサールの哲学における「世界」の概念
1. はじめに 問題点
2. 「世界」の三つの概念
3. 地平と世界
4. 一つの世界と多数な世界
5. 世界の還元に関する問題
6. 結論
第3講義 世界の現象学から対話的現象学へ
1. 世界の問題に対する複数の視点
2.「我」に対する「汝」はいかにして存在するか
3. 思考可能性(cogitabilitas)の問題
4. 対話的構成
第4講義 自覚の成長
1. 他の自我を認識すること
2. 自覚的になることはいかにして始まるか
A. 発達の前―客観的段階
B. 第二段階:慣習による客観化
C. 第三段階:言語による客観性
3. 結論
第5講義 自由の増大
1. 自由とその意味
2.有限な自由はいかにして可能か
3. 結論
第6講義 信の成長
1. 序論 「汝」についての問い
2. 対話的哲学の困難さ
3. 信(faith)
4. 生命と世界
5. 我-汝関係におけるダイナミックな視点の重要性
6. 結論
解説
訳者あとがき
注
人名索引
内容説明
現象学は論理実証主義をはじめ言語分析や構造主義からの批判,またフッサールの超越論的現象学では間主観性の問題が解けないという内部からの批判にさらされ,志向性分析の有効性が問われてきた。しかしかつて哲学的探求から排除されてきた地球と景観,建築と住居,舞踊と遊戯,笑いと泣き,恐怖と嫌悪など,拡大された関心の地平は現象学の影響によるものである。著者は現象学の主要テーマを再解釈し,現象学運動が直面する袋小路から抜け出すための道を探究する。
本書はフッサールの「精神」に則って,彼以後の現象学者たちを批判検討し,新たな可能性を模索する。とりわけメルロ=ポンティの現象学を受容し,そこにブーバーの「我―汝」関係による対話的思考を織り込み,独自の「対話的現象学」を構想した。現象学にとって肝要なことは,科学との「対話」である。それにより科学を理解する道が開け,その限界が見定められる。対峙し合う両者に相応な権利を認め,両者に対話を促す。
本書は「対立・敵意・衝突は,わたしが〈汝〉に関わりうる方法」の一つであり,実際に人間が「汝」である他者と出会うとはいかなる事態かを現象学的に解明した本格的業績である。