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フッサールの倫理学

生き方の探究

フッサールの倫理学
著者 吉川 孝
ジャンル 哲学・思想 > 現象学
出版年月日 2011/11/10
ISBN 9784862851185
判型・ページ数 A5・304ページ
定価 本体5,000円+税
在庫 在庫あり
 

目次

序章
一 本書の問題設定
二 フッサールの倫理学
三 フッサール現象学における倫理学の位置
四 研究方法
五 先行研究
第一章 感情としての志向性――ブレンターノの倫理学と1890年代の志向性理論
一 ブレンターノにおける心的現象
二 ブレンターノにおける心情活動の合理性
三 「基礎論理学のための心理学的研究」における表象の分析
四 感情としての志向・充実
五 先現象学的分析から普遍的相関性のアプリオリの発見へ
第二章 客観化作用と非客観化作用――『論研』の志向性理論における倫理学の可能性
一 心理学主義の克服
二 表現と意味
三 客観化作用としての志向的体験
四 非客観化作用の解明
五 非客観化作用の表現
六 『論研』における倫理学の可能性
第三章 意志,行為,感情の現象学――ミュンヘン・ゲッティンゲン学派の可能性
一 プフェンダーの意志の現象学
二 ライナッハの行為の現象学
三 シェーラーの感情の現象学
第四章 哲学の理念と価値構成のジレンマ――理性批判としての現象学的哲学
一 現象学と理性批判
二 現象学的還元と絶対的理性の理想
三 哲学の理念
四 認識の現象学とその射程
五 価値構成のジレンマ
六 ジレンマの突破と一つの理性
第五章 理論理性の優位――『イデーンI』とゲッティンゲン倫理学
一 実践理性のノエシス・ノエマ分析
二 『イデーンI』の理性概念
三 『イデーンI』の表現論
四 形式的倫理学における定言命法論
五 価値の客観性と公平な観察者
第六章 志向性への批判――ハイデガー,レヴィナス,リクール,アンリの現象学
一 ハイデガーにおける志向性の存在
二 レヴィナスにおける享受の志向性
三 リクールの意志の現象学
四 アンリにおける生の情感性
第七章 フッサールの自己批判――実践的志向性の新たな探究
一 知覚における情緒的契機
二 ゲッティンゲン倫理学における定言命法論の限界
三 「意志の現象学」における志向性の再考
四 『イデーンⅡ』における人格論
第八章 倫理学的転回――フライブルク時代の志向性理論と現象学
一 ドイツ観念論の感情概念の受容
二 実践理性の包括性
三 倫理学的転回
第九章 実践理性の現象学――『改造』論文の倫理学
一 人間の有限性と自己創造
二 職業的生――世界の価値から生の価値へ
三 倫理的生――愛から洞察へ
四 試しとしての生――革新の倫理学
第十章 倫理学的転回の射程
一 主知主義をめぐって
二 相対主義をめぐって
三 利己主義をめぐって
四 自己形成の合理性
五 理性の責任
終章 生き方について哲学はどのように語るのか
一 意味概念の変化(存在的意味・精神的意味・生の価値)
二 「強い評価」の倫理学
三 「厚い概念」の倫理学

付録 問いの現象学
一 非客観化作用としての問い――『論研』における疑問文の現象学的解釈
二 言語行為としての問い―― ダウベルトとライナッハにおける問いの現象学
三 信念の様相としての問い――『イデーンI』における表現論と志向的分析
四 判断の実践性格としての問い―― 「意志の現象学」から『経験と判断』へ
五 現象学的還元としての問い

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内容説明

本書は1890年代から1920年代前半までのフッサール現象学の発展を倫理学の観点から考察し,論理学の認識論的基礎づけという理論理性の問いから出発したフッサールが,実践理性の学問としての倫理学を確立するプロセスのなかで,いかに自らの現象学そのものの意味を変化させていったかを解明する。
フッサール(1859-1938)は『論理学研究』(1901-03)から『イデーンⅠ』(1913)に至り現象学に倫理学を組み入れた体系を確立し,さらに自己批判を通して20年代初頭には生き方を探究する倫理学の大枠を完成させ,ロンドン講演(1922)や『改造』論文(1922-24)で公表した。そこでは現象学全体が倫理学的問題設定を軸にして動くようになり,現象学の倫理学化・実践哲学化としての倫理学的転回が生じた。
また著者は1910年代から20年代にわたる静態的現象学から発生的現象学への移行と特徴づけられてきた時期を,現象学そのものの倫理学的転回という別の視座から光を当てた。
80年代後半から新資料が公刊されるにつれ,「論理学の基礎づけ」という課題と並び,「倫理学の基礎づけ」もみずからの課題として早い時期から取り組まれていたことを明らかにし,周辺的な課題と見なされてきた「倫理学」が,フッサール現象学において占める意義を明らかにした意欲作である。

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