ホーム > 経験の裂け目
目次
Ⅰ パトス的な背景における意義作用と欲望
パトス,情感,および感情/志向的感情作用と気分性/意義作用と欲望との相互内在としての志向/何かが何かとして現出すること/固定化,阻害,混乱/代〔理〕表象〔再現前化〕と脱現前/目標の循環における努力/法の圏域における意志/欠如と欲求/あらかじめ当事者であること/傷害とトラウマ化
Ⅱ 遠くから触れること
触ることと触ること以上のこと/印象と強さの段階/接触と隣接性/心を打つと感じること/肌の近さと遠さ/離れと再接近/触れうるものと触れえないもの/手出しすることと厚かましさ
Ⅲ 触発からアピール〔訴え〕へ
1.私たちを触発する《何か》のない触発/《何か》への要請/誰かに宛てられた要請と宛てられていない要請/アピールとなる触発/触発とアピールの不可避性/命法の二義性とパラドクス/禁止された暴力,妨げられた暴力,そして被った暴力/中立化による無関心性/観察,根拠づけ,そして間接的証言
Ⅳ 経験のズレ
綜合的な秩序のひな型/底なしの多様性/分割と差異/時空的ズレ/分割的な諸次元と諸審級
Ⅴ 自らの外へ,私たちの間で
異他なるもののスキャンダル/牽引力/退去,惹きつけること,突き離すこと/区分け,分割,そして分散/分割した自己と区分けされた自己/他なるものにおける自己二重化/休止と区切り/かき乱された均整/条件づけられた非対称性,対称性,超-対称性
Ⅵ 秩序の内部と外部で
作動する秩序/開かれた接合/秩序の境界の踏み越え/踏み越えのバリエーション/規則の第三の審級/侵犯の二義性/秩序への再編入/秩序の敷居の下をいくこと/秩序とカオス
Ⅶ 精神分析上の経験の炸裂
精神分析の哲学上の不快さ/意識の自己別離/歪曲,抑圧,そして断念/意味形成と願望充足の彼方/不可能な補償としての症候/トラウマ的な影響/他者の中に自己を求めるナルチス/超-自我の他なる声/自己自身との抗争における生
Ⅷ 経験への技術の介入
テクノロジーのパラダイム,統合され,支配され,解き放たれた技術/技術論的還元と現象工学の挑発/志向性,シンボル的表象,規制回路/意味地平,連合パターン,神経のネットワーク/テクノロジー的アプリオリ性という記号における自己産出/自己関係,自己退去,自己言及的システム/自然の発展と技術の発展との間に開かれた鋏/他人の脳の神経生物学的な観察/他者の物[的身]体の医学的治療/生命工学の生命実体への侵入/胎児から人格へ/誕生と死の薄明のなかで/代理の経験/技術から逃れていくもの
パトス,情感,および感情/志向的感情作用と気分性/意義作用と欲望との相互内在としての志向/何かが何かとして現出すること/固定化,阻害,混乱/代〔理〕表象〔再現前化〕と脱現前/目標の循環における努力/法の圏域における意志/欠如と欲求/あらかじめ当事者であること/傷害とトラウマ化
Ⅱ 遠くから触れること
触ることと触ること以上のこと/印象と強さの段階/接触と隣接性/心を打つと感じること/肌の近さと遠さ/離れと再接近/触れうるものと触れえないもの/手出しすることと厚かましさ
Ⅲ 触発からアピール〔訴え〕へ
1.私たちを触発する《何か》のない触発/《何か》への要請/誰かに宛てられた要請と宛てられていない要請/アピールとなる触発/触発とアピールの不可避性/命法の二義性とパラドクス/禁止された暴力,妨げられた暴力,そして被った暴力/中立化による無関心性/観察,根拠づけ,そして間接的証言
Ⅳ 経験のズレ
綜合的な秩序のひな型/底なしの多様性/分割と差異/時空的ズレ/分割的な諸次元と諸審級
Ⅴ 自らの外へ,私たちの間で
異他なるもののスキャンダル/牽引力/退去,惹きつけること,突き離すこと/区分け,分割,そして分散/分割した自己と区分けされた自己/他なるものにおける自己二重化/休止と区切り/かき乱された均整/条件づけられた非対称性,対称性,超-対称性
Ⅵ 秩序の内部と外部で
作動する秩序/開かれた接合/秩序の境界の踏み越え/踏み越えのバリエーション/規則の第三の審級/侵犯の二義性/秩序への再編入/秩序の敷居の下をいくこと/秩序とカオス
Ⅶ 精神分析上の経験の炸裂
精神分析の哲学上の不快さ/意識の自己別離/歪曲,抑圧,そして断念/意味形成と願望充足の彼方/不可能な補償としての症候/トラウマ的な影響/他者の中に自己を求めるナルチス/超-自我の他なる声/自己自身との抗争における生
Ⅷ 経験への技術の介入
テクノロジーのパラダイム,統合され,支配され,解き放たれた技術/技術論的還元と現象工学の挑発/志向性,シンボル的表象,規制回路/意味地平,連合パターン,神経のネットワーク/テクノロジー的アプリオリ性という記号における自己産出/自己関係,自己退去,自己言及的システム/自然の発展と技術の発展との間に開かれた鋏/他人の脳の神経生物学的な観察/他者の物[的身]体の医学的治療/生命工学の生命実体への侵入/胎児から人格へ/誕生と死の薄明のなかで/代理の経験/技術から逃れていくもの
内容説明
本書でいう「経験」とは,イギリス経験主義やカントの「経験と超越」に見られるような意味ではない。フッサールが1922-23年の講義「哲学入門」で独自の現象学の意義を語ろうとした「超越論的経験」を踏まえたものである。「経験」とは事実としての経験ではない。「経験と超越」そのものが成立してくる土壌としての日常の経験そのものである。それはメルロ=ポンティが「沈黙した経験を言葉にもたらそうとする」ときの生きた経験に他ならない。
著者によれば生きた経験とは「間で」起こるという。それは主観-客観の間ではなく,「間」が生じているそこから主観と客観が生成してくる事態である。この「間」は相互に触発しあう「共触発」をへて,「出来事」としての特性を明らかにし,それは「遭遇と応答」という基本構造において豊かな表現力を獲得する。遭遇の先行性が同時に無意識をも包含した応答の事後性を通して常に踏み越えられている「裂け目」でもある。
著者は古代から近世の広範なテクストを駆使しつつ,メルロ=ポンティ,フーコー,デリダ,レヴィナス,ヴァレラなど,最先端の現代思想と対話することにより新たな展開を提示する必読の文献である。
著者によれば生きた経験とは「間で」起こるという。それは主観-客観の間ではなく,「間」が生じているそこから主観と客観が生成してくる事態である。この「間」は相互に触発しあう「共触発」をへて,「出来事」としての特性を明らかにし,それは「遭遇と応答」という基本構造において豊かな表現力を獲得する。遭遇の先行性が同時に無意識をも包含した応答の事後性を通して常に踏み越えられている「裂け目」でもある。
著者は古代から近世の広範なテクストを駆使しつつ,メルロ=ポンティ,フーコー,デリダ,レヴィナス,ヴァレラなど,最先端の現代思想と対話することにより新たな展開を提示する必読の文献である。