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信仰と幸い

キリスト教の本質―クラウス・リーゼンフーバー小著作集Ⅲ

信仰と幸い
著者 クラウス・リーゼンフーバー
ジャンル 哲学・思想
宗教
シリーズ クラウス・リーゼンフーバー小著作集
出版年月日 2015/10/30
ISBN 9784862852205
判型・ページ数 4-6・628ページ
定価 本体5,000円+税
在庫 在庫あり
 

目次

序文/聖書略語

第Ⅰ部 主の祈り――イエスの教えた神との関わり

はじめに

第一章 天におられるわたしたちの父よ
 一 自己発見の道
 二 神自身によって神自身へ
 三 イエスにおける「父よ」という呼びかけ
 四 主である神
 五 新しい誕生
 六 わたしたちの父よ

第二章 御名が聖とされますように
 一 「父よ」が導くもの
 二 神の聖性とは
 三 神とその名
 四 わたしたちの内なる神の栄光

第三章 御国が来ますように
 一 御国を願う動き
 二 神の国とは
 三 神の到来の在り方

第四章 御心が天に行われるとおり,地にも行われますように
 はじめに
 一 神の御心との直面
 二 御心に溶け込む
 三 「天」と「地」における御心

第五章 わたしたちの日ごとの糧を今日もお与えください
 はじめに
 一 食べるということ
 二 神の与える糧
 三 糧を求める
 四 永遠の命の糧
 五 今日の糧
 六 わたしたちの糧

第六章 わたしたちの罪をお赦しください。わたしたちも人を赦します
 はじめに
 一 自分の内に罪を認める
 二 神の前に罪人である
 三 罪を痛悔し告白する
 四 赦しによる新しい人格
 五 わたしたちも人を赦します

第七章 わたしたちを誘惑におちいらせず,悪からお救いください。アーメン
 はじめに
 一 試みの根源
 二 試みの意味
 三 アーメン

あとがき

補遺 十字を切ること
 一 恵みと十字
 二 祝福すること
 三 神の名によって
 四 父と子と聖霊の御名によって
 五 十字という印

第Ⅱ部 信じるとは――「信条」を理解する
第一章 信じます
 一 信じるという根本的な行為
 二 信条の起源
 三 「(わたしは)信じます」
 四 信仰の対話的・共同体的構造
 五 信仰における自由と従順
 六 神との直接的関わり
 七 言葉への傾聴

第二章 天地の創造主,全能の神
 一 信じる行為の対象である全能
 二 世界・社会・個人に対する神の創造的関わり
 三 神の存在としての全能
 四 諸可能性の根拠としての全能
 五 神の意志における全能と摂理
 六 神の全能と人間の自由意志
 七 神の全能と悪の克服
 八 キリストにおける愛としての全能

第三章 神である父
 一 「全能の神」と「父なる神」
 二 イエスの父,人間の父
 三 父の偉大さをたたえる
 四 父の慈しみを信頼する
 五 父に呼びかける
 六 父と共に働く

第四章 父の独り子
 一 信仰の対象
 二 救い主を求める人間
 三 御子のみ救い主たりうる
 四 主イエス・キリスト
 五 主への信仰に生きる

第五章 おとめマリアから生まれ
 一 歴史と永遠
 二 イエスの名に現れる受肉の神秘
 三 神が「成る」ということ
 四 イエスの生き方における受肉の存続
 五 兄弟となったキリスト
 六 おとめマリアから

第六章 苦しみを受けて葬られ
 一 キリストの十字架――信仰の焦点
 二 死という人間の事情
 三 イエスの存在における受肉と死の関係
 四 死に向かうイエス
 五 父の業である十字架

第七章 死者のうちから復活して父の右におられる主
 一 命への問いと復活の信条
 二 死者のうちから
 三 死から復活への移行
 四 弟子たちに対する現れ
 五 復活したイエスは主である
 六 霊によるイエスの内的な支配
 七 信仰による主との関わり

第八章 聖霊を信じます
 一 時間性を超える命
 二 聖霊の働きとその内的現存
 三 聖霊の神性とキリストとのつながり
 四 聖霊の結ぶ実

第九章 聖なる普遍の教会
 一 躓きとなりうる教会
 二 基盤である教会
 三 旧約における教会の手本
 四 イエスによる教会の基礎づけ
 五 聖霊による教会の成立
 六 教会の本質を示す象徴
 七 教会の普遍性と聖性

第一〇章 聖徒の交わり
 一 共に完成に至る
 二 神の聖性への参与
 三 神における共同性の起源
 四 家族のような共同体
 五 共同体の根源である愛
 六 兄弟愛と神からの愛の一致
 七 兄弟愛の具体化

第一一章 罪の赦し
 一 救済史の実りである赦し
 二 罪の事実と本質
 三 赦しへの期待
 四 イエスによる赦し
 五 教会において霊によって授けられる赦し
 六 三位一体の神による無償の恵み
 七 赦しによる新しい創造と誕生

第一二章 体の復活,永遠の命を信じます
 一 命への問い
 二 人間の完成と神の完成
 三 体という人間存在の全体,またその一次元
 四 人間にとって本質的な身体性
 五 聖書による永遠の命への見通し
 六 終末における神の遍在と世界の完成
 七 現在における永遠の始まり

補遺 聖霊の神学と霊性
 一 聖霊の認識の基礎
 二 教義の発展
 三 霊的生活の根源としての聖霊

第Ⅲ部 幸い
第一章 幸い
第二章 イエスにとっての幸い
 一 幸いという難問
 二 イエスの周りにある喜び
 三 イエスに見られる存在の喜び
 四 他者のうちに喜ぶイエスの幸い
 五 愛による幸い
 六 福音を伝える幸い
 七 受難と復活における他者中心性と幸い
 八 神自身の人間中心的な喜び

第三章 幸いへの道
 一 信仰の確信と幸い
 二 幸いの言表不可能性
 三 行為における幸い
 四 幸いを支える言葉
 五 御言葉との関わりを保つ幸い

第四章 幸いなる貧しさ
 一 真福八端の基調
 二 幸いなる貧しさ

第五章 心の貧しさ
 一 所有の意味と起源
 二 「心の貧しさ」の位置づけ
 三 貧しさという心の態度
 四 イエスの精神
 五 神における新しい命

第六章 幸いなる悲しみ
 一 福音と人間の感情
 二 悲しみの福音
 三 悲しみの存在論
 四 悲しみと人間の態度
 五 悲しみの多様な内容
 六 神の慰め

第七章 内なる人の柔和
 一 悲しみから柔和への移行
 二 柔和へのイエスの招き
 三 人間の徳
 四 霊の賜物
 五 真理と善への同意
 六 内なる人への転換
 七 人と神への開き

第八章 飢え渇きのすすめ
 一 自己満足の克服
 二 人間という飢え渇く者
 三 「義」に対する飢え渇き
 四 キリストによる神の義

第九章 苦しみを癒す憐れみ
 一 人生の苦悩と憐れみ
 二 飢え渇きから憐れみへ
 三 神に由来する憐れみ
 四 憐れみにおける他者の発見
 五 憐れみと赦し

第一〇章 神を見て喜ぶ心
 一 真福八端の頂点
 二 幸福の中身である「神」
 三 幸福を得る「見る」という行為
 四 神を見る清い心

第一一章 平和をもたらす幸い
 一 イエスのビジョン
 二 神を見て新たに生まれること
 三 平和の源である観想
 四 平和の実現
 五 平和を知らない「世」
 六 平和をもたらすように遣わされる

第一二章 迫害のなかの幸い
 一 迫害のもとに成長する神の国
 二 義のために
 三 福音のための働きと苦しみ
 四 苦しみのうちにひそむ幸い

初出一覧/主要著作一覧/索引

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内容説明

著者は中世哲学研究では多数の著述や編集を手がけ,わが国の学界に多大な貢献をしてきた。本著作集は来日して四十有余年にわたる宗教者としての活動の足跡を集大成したものである。多くの信者と向き合い,参禅体験や西田哲学の探求など日本の文化と社会に深くかかわりながら説教や講話,文筆活動をとおして多くの日本人にキリスト教を伝えてきた。

本巻では,信仰における超越との関わりとは何かということが詳細に論じられる。第Ⅰ部「主の祈り」では,イエスが弟子たちに真の祈りの原型として教えた言葉の解釈から,人間が神へどのように関わっていくべきかが語られる。第Ⅱ部「信じるとは」では,教会の信仰告白である古代の信仰の要約「信条」を取り上げ,世界の創造から完成へと至る救済史的展望の中核に位置づけられるイエスの生涯と教えについて考察される。第Ⅲ部「幸い」では,神の恵みによる幸いを唱える福音の叙述(真福八端)を主題に,神の現存に向かって透明になる人間の姿が描写される。

本書はキリスト教の信仰内容を解説するだけではなく,信仰が呼び起こす永遠への開きを,人間が生きるための意義を浮き彫りにする力として理解し,神学的・哲学的・人間論的な課題に対して新しい光を与える生き生きとした叙述で展開されているため,読者は新たな発見の喜びに出会うであろう。

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