超越体験
宗教論―クラウス・リーゼンフーバー小著作集I
著者 | クラウス・リーゼンフーバー 著 |
---|---|
ジャンル | 哲学・思想 宗教 |
シリーズ | クラウス・リーゼンフーバー小著作集 |
出版年月日 | 2015/08/10 |
ISBN | 9784862852151 |
判型・ページ数 | 4-6・434ページ |
定価 | 本体3,800円+税 |
在庫 | 在庫あり |
目次
第1章 語ることと聴くこと
一 言語と哲学
二 言語の根本規定
三 意味としての言語
四 構造としての言語
五 行為としての言語
六 歴史と言葉
七 存在と言葉
第2章 ニヒリズムに臨む宗教
一 近代のニヒリズムの歴史
(1)近代の起源とその精神史/(2)十九世紀のニヒリズム
二 ニヒリズムの本質と現代におけるその形態――(1)ニヒリズムの根本構造
(1)無の理解の諸形態/(2)ニヒリズムの本質規定の試み
三 ニヒリズムの本質と現代におけるその形態――(二)現代のニヒリズムの根本構造
(1)現代の諸様相とニヒリズムの関係/(2)現代におけるニヒリズムの一形態/(3)現代のニヒリズムに見られる多義性
四 ニヒリズムに臨む宗教の課題
(1)宗教の内的刷新/(2)世界への開き/(3)人間性の擁護/(4)宗教的実践への道
第3章 作製的理性と意義の肯定――科学・技術時代における宗教の未来に向けて
一 自然科学的・技術的な思考形態の問題
(1)歴史的概観/(2)自然科学的・技術的な思考形態の基本的特徴/(3)科学的・技術的な思考形態が及ぼす一般的影響
二 宗教的次元の解明としての意義了解
(1)科学的・技術的な合理性の受容/(2)意義への問い/(3)救済の探究
三 宗教的行為の理解に向けて
(1)宗教的な根本的行為の内的構造/(2)意義肯定の修練のために
第4章 意義の発見から神との出会いへ
一 現代の精神性
二 意義の発見
三 意義経験の記述
四 意義の諸要素
五 神との出会いと宗教行為の源泉
第5章 超越理解と神経験
一 人間存在の基礎づけである無制約者
(1)神の間題と自己に対する問い/(2)自由な存在としての人間/(3)自由と目的設定/(4)自由の基礎づけとしての善の解明/(5)無制約的善の現実性
二 経験に現れる神
(1)経験における無制約者への問い/(2)経験によって生きる人間/(3)神経験/(4)意義の経験と神との出会い/(5)神経験と人間の自己発見/(6)神経験の究極的な形
三 神の暗闇における人間
(1)自己譲渡の存在者としての人間/(2)神に対する自己贈与/(3)とらえがたい神による自己の変容/(4)信仰と愛による神との接触
第6章 祈りの人間論的構造
一 問題設定
二 人間論的基礎づけ――人間の開き
(1)開きという事実/(2)開きの方向性/(3)開きの本来的性質
三 祈りの人間学――神に向かう開きの遂行としての祈り
(1)自由の自己開示としての祈り/(2)祈りの構造
四 祈りと世界への関わり
(1)現実に対する誠実さ/(2)祈りにおける世界/(3)祈りと世界邂逅との相互関係
第7章 根本決断の構造――自由と信仰行為の関連をめぐって
一 自由の問題史
二 問題設定と方法
(1)根本決断の概念/(2)方法/(3)根本命題
三 自己との一致
(1)自己への回帰/(2)問題としての自己/(3)自己受容
四 超越者に開かれる自由
(1)他者からの自己規定/(2)根底である他者/(3)他者から開かれる自己の可能性/(4)聴こうとする決心/(5)聴くことによる自由の拡大
五 根本決断の実現
(1)言葉から現実への進展/(2)信じる自由/(3)他者による自由の決断/(4)自己の新しい中心/(5)愛する自由
六 反省的自己規定
(1)本性的な自己の意義の規定/(2)世界内での具体化
七 神学の伝統における根本決断
第8章 現代思想における黙想
一 現象を見ること
二 意義を了解すること
三 言葉を聴くことと沈黙すること
四 心を統一すること
五 汝に向かう自由
第9章 非対象的瞑想の理解のために
一 現代における非対象的瞑想
二 禅の諸特性
三 哲学的解釈のために
(1)静寂と言葉/(2)精神の自己経験/(3)存在経験と神経験
四 非対象的瞑想をめぐる神学的諸側面
(1)祈りにおける神という「汝」/(2)根源から動かされること――イエスと愛/(3)信仰と経験の間に保つべき差異
第10章 存在認識と啓示の哲学
一 問題設定
二 認識において現れる啓示としての現実
三 啓示の根本的内容
四 啓示認識の段階性
(1)感覚的現象における超越の啓示/(2)純粋な完全性の肯定/(3)限界の超克としての否定/(4)沈黙の闇における認識
五 救済史的啓示の構造
第11章 生きる拠りどころとしての言葉
一 言葉の研究と言葉との出会い
二 聴き手における言葉のはたらき
初出一覧/主要著作一覧/全巻目次/索引
内容説明
著者は上智大学中世思想研究所長の重責を担い,中世哲学研究では多数の著述や編集を手がけ,わが国の学界に多大な貢献をしてきた。本著作集は研究者としてではなく,来日して四十有余年にわたる宗教者としての活動の足跡を集大成したものである。多くの信者と向き合い,参禅経験や西田哲学の探求など日本の文化と社会に深くかかわりながら説教や講話,文筆活動をとおして多くの日本人にキリスト教を伝えてきた。
本巻は著者の宗教的体験と古代から現代にいたるヨーロッパの宗教と思想にたいする膨大な知見を踏まえつつ,〈キリスト教とは何か? 宗教とは何か?〉を超越体験として明らかにした画期的な作品である。
世界とは全体をなしており,この全体の意義と根拠を吟味するとき,その理解は常に限界に直面する。そのため諸々の事象を手がかりに存在の真理を推察するほかない。著者は現実全体や存在の意義を探ろうとする哲学と,第一根源の光から人生の意義や目標に触れようとする宗教の両面から世界と人間の真実に迫る。
生きることの意味を思索し,哲学と宗教の視点から人間精神の視野を全体の根源的な焦点に向けて開こうとする営みは,宗教を正面から考える習慣のない私たちにとって,かけがえのない書物になるに違いない。
関連記事
- 「クラウス・リーゼンフーバー小著作集」(全五巻),完結しました! - 2015.12.22