ホーム > ライプニッツの最善世界説
目次
凡例
略記法
序
日本語版への序
序章 弁神論――論証しない学知?
a. 弁神論の諸基礎と諸要件
b. 悪についての法学的,神学的,人間学的アプローチ
c. 弁神論のもつ弁護的な側面と教説的な側面
d. 可能な最善世界の現実存在は論証されうるか?
e. 神は最善以外のものを選択できるか?
f. 学知と信仰
第Ⅰ部 諸可能世界の最善とは何か?
第1章 世界をつくるもの――共可能性,完全性,調和
1.1. 世界の統一性,唯一性,偶然性
1.2. 空間と時間の秩序,および世界の諸条件
1.3. 諸可能世界と,非共可能性の根
1.4. 結論
第2章 ライプニッツにおける完全性,調和,そして神による選択――いかなる意味で世界は最善なのか?
2.1. 可能な最善宇宙の創造というテーゼの確立――「ネガティヴな」道
2.2. 最も決定された形式としての最善――「ポジティヴな」道
2.3. 各々の完全性と普遍的な調和
第Ⅱ部 最善なるものは進歩を排除するか?
第3章 永劫回帰に反して――1694–1696年以前における世界の進歩と精神の至福
3.1. 進歩の「一般的規則」と精神の至福に関する議論
3.2. 進歩に対する制限と進歩の必然性――事物の能力と神の選択
3.3. 永劫回帰の拒否と普遍的救済の問題
3.4. 結論
第4章 世界は進歩するのか?――ライプニッツにおける世界の進展モデル
4.1. 進歩の意味
4.2. 進歩のさまざまなモデル
4.3. 停滞モデルの解釈と量的完全性
4.4. 増加モデルの解釈と質的完全性
4.5. 結論
第Ⅲ部 諸精神の王国
第5章 精神の本性と特殊性
5.1. 単純なものと複合的なものとの関係に関する問題
5.2. モナドの完全性の程度
5.3. 結論――秩序と進歩
第6章 愛――同一性と表出
6.1. 一義性――「誠実で純粋な」愛
6.2. 相互性――愛の「螺旋」
6.3. 活動性――「人間のものを神的なものへ移す」
6.4. 結論
第Ⅳ部 可能な最善の世界での行為
第7章 ライプニッツにおける道徳の地位とその諸原理の起源
7.1. 道徳の哲学者ライプニッツ?
7.2. 道徳の定義とその適用領域の問題
7.3. 道徳における原理と論証
7.4. 論証と,蓋然的なものの論理学
7.5. 結論
第8章 無神論者は有徳でありうるか?
8.1. 無神論――哲学的な問題?
8.2. 神の知性と力能――道徳への二重の依存
8.3. 倫理の相対的自律と宗教の役割
8.4. 有徳な無神論者の可能性,そして真と善のあいだの区別
8.5. 結論
終章 フランスにおけるオプティミスムの運命(1710–1765年)――あるいは「問題」としての弁神論
a. 最初の受容(1710–1716年)――『弁神論』へのイエズス会士たちの期待感
b. 追悼文,そして最初の嫌疑(1716–1721年)
c. 断絶(1737年),そしてオプティミスムの創案
d. 『百科全書』――空疎になったオプティミスム
e. 結論
訳者解説
人名索引
事項索引
訳者紹介
略記法
序
日本語版への序
序章 弁神論――論証しない学知?
a. 弁神論の諸基礎と諸要件
b. 悪についての法学的,神学的,人間学的アプローチ
c. 弁神論のもつ弁護的な側面と教説的な側面
d. 可能な最善世界の現実存在は論証されうるか?
e. 神は最善以外のものを選択できるか?
f. 学知と信仰
第Ⅰ部 諸可能世界の最善とは何か?
第1章 世界をつくるもの――共可能性,完全性,調和
1.1. 世界の統一性,唯一性,偶然性
1.2. 空間と時間の秩序,および世界の諸条件
1.3. 諸可能世界と,非共可能性の根
1.4. 結論
第2章 ライプニッツにおける完全性,調和,そして神による選択――いかなる意味で世界は最善なのか?
2.1. 可能な最善宇宙の創造というテーゼの確立――「ネガティヴな」道
2.2. 最も決定された形式としての最善――「ポジティヴな」道
2.3. 各々の完全性と普遍的な調和
第Ⅱ部 最善なるものは進歩を排除するか?
第3章 永劫回帰に反して――1694–1696年以前における世界の進歩と精神の至福
3.1. 進歩の「一般的規則」と精神の至福に関する議論
3.2. 進歩に対する制限と進歩の必然性――事物の能力と神の選択
3.3. 永劫回帰の拒否と普遍的救済の問題
3.4. 結論
第4章 世界は進歩するのか?――ライプニッツにおける世界の進展モデル
4.1. 進歩の意味
4.2. 進歩のさまざまなモデル
4.3. 停滞モデルの解釈と量的完全性
4.4. 増加モデルの解釈と質的完全性
4.5. 結論
第Ⅲ部 諸精神の王国
第5章 精神の本性と特殊性
5.1. 単純なものと複合的なものとの関係に関する問題
5.2. モナドの完全性の程度
5.3. 結論――秩序と進歩
第6章 愛――同一性と表出
6.1. 一義性――「誠実で純粋な」愛
6.2. 相互性――愛の「螺旋」
6.3. 活動性――「人間のものを神的なものへ移す」
6.4. 結論
第Ⅳ部 可能な最善の世界での行為
第7章 ライプニッツにおける道徳の地位とその諸原理の起源
7.1. 道徳の哲学者ライプニッツ?
7.2. 道徳の定義とその適用領域の問題
7.3. 道徳における原理と論証
7.4. 論証と,蓋然的なものの論理学
7.5. 結論
第8章 無神論者は有徳でありうるか?
8.1. 無神論――哲学的な問題?
8.2. 神の知性と力能――道徳への二重の依存
8.3. 倫理の相対的自律と宗教の役割
8.4. 有徳な無神論者の可能性,そして真と善のあいだの区別
8.5. 結論
終章 フランスにおけるオプティミスムの運命(1710–1765年)――あるいは「問題」としての弁神論
a. 最初の受容(1710–1716年)――『弁神論』へのイエズス会士たちの期待感
b. 追悼文,そして最初の嫌疑(1716–1721年)
c. 断絶(1737年),そしてオプティミスムの創案
d. 『百科全書』――空疎になったオプティミスム
e. 結論
訳者解説
人名索引
事項索引
訳者紹介
内容説明
ライプニッツの『弁神論』(1710年)は,ヴォルテールやカントによって誤解され,哲学史の中で長らく正当に評価されてこなかった。しかし本書では,『弁神論』が形而上学・認識論・倫理学・神学を統合した体系的な哲学書であり,近代哲学において決定的な役割を果たしたことを明らかにする。
ライプニッツによれば,神は無限の可能世界の中から,最も調和のとれた世界を選択せざるを得なかった,と主張する。しかし「最善」とは単に善が最大化された状態ではなく,多様性と秩序,善と悪,自由と必然が最適に調和する状態を指す。彼の議論は,「数学的な論証」ではなく,「道徳的な論証」(=証明)を通じて最善世界の合理性を示す試みである。本書は,ライプニッツがどのように「最善世界説」を神の自由,倫理,世界の秩序と結びつけたのかを精緻に分析する。
また本書は『弁神論』におけるライプニッツの議論を,その同時代の批判や受容史とともに分析する。ピエール・ベールの懐疑論に対し,ライプニッツが神の知恵と世界の秩序をどのように擁護したのかを詳述し,彼の「弁護的な側面」と「教説的な側面」の区別を明確にする。さらに18世紀フランスにおける「オプティミスム論争」やカント,ヘーゲルからの批判・評価などを取り上げ,ライプニッツ思想の歴史的意義を検証する。
本書は,『弁神論』の理論的意義とその影響を読み解き,ライプニッツ研究のみならず,近代思想の展開を理解するための必読の書である。
ライプニッツによれば,神は無限の可能世界の中から,最も調和のとれた世界を選択せざるを得なかった,と主張する。しかし「最善」とは単に善が最大化された状態ではなく,多様性と秩序,善と悪,自由と必然が最適に調和する状態を指す。彼の議論は,「数学的な論証」ではなく,「道徳的な論証」(=証明)を通じて最善世界の合理性を示す試みである。本書は,ライプニッツがどのように「最善世界説」を神の自由,倫理,世界の秩序と結びつけたのかを精緻に分析する。
また本書は『弁神論』におけるライプニッツの議論を,その同時代の批判や受容史とともに分析する。ピエール・ベールの懐疑論に対し,ライプニッツが神の知恵と世界の秩序をどのように擁護したのかを詳述し,彼の「弁護的な側面」と「教説的な側面」の区別を明確にする。さらに18世紀フランスにおける「オプティミスム論争」やカント,ヘーゲルからの批判・評価などを取り上げ,ライプニッツ思想の歴史的意義を検証する。
本書は,『弁神論』の理論的意義とその影響を読み解き,ライプニッツ研究のみならず,近代思想の展開を理解するための必読の書である。