ホーム > ハーマンの「へりくだり」の言語
目次
序章 「愛言者」ハーマン
第一章 ハーマンにおける言語と文体―― その研究史概観
一 ハーマンの言語観と神秘的文体――ゲーテ
二 個別性の思想と難解な文体――ヘーゲル
三 非合理主義者ハーマンの「言語理論」――ウンガー
四 第二次大戦後の研究
五 本研究の立場と目標
第二章 「へりくだり」のコミュニケーションモデル
一 へりくだりの概念とハーマンのロンドン著作集
二 子供向け自然学に関するハーマンとカントの共同プロジェクト
三 カント宛の最初の手紙
四 カント宛の二通目の手紙
五 カント宛の三通目の手紙
六 カントの教育学
七 ハーマンとカントにおける「敢えて賢くあれ!」
八 子供への「へりくだり」―― ベンヤミンとの関連で ……
九 「へりくだり」のコミュニケーションと共通感覚
第三章 言語コミュニケーションの起源
一 ヘルダー『言語起源論』の前後
二 ヘルダーのズュースミルヒ批判
三 ズュースミルヒにおける完成された建物としての言語
四 建物としての言語、あるいは人間の道具としての言語
五 ハーマンの言語起源論―ズュースミルヒとヘルダーの間で
六 言語起源論とコミュニケーション
第四章 ハーマンにおける音声コミュニケーション
一 「語りたまえ、汝を見まつらんがために」
二 「語ることは翻訳すること」
三 言語起源における音声
四 音声による言語コミュニケーション
第五章 18世紀における正書法をめぐる議論に見る音声と文字
一 正書法と文字論
二 『字母hの新たな弁明』における文字の機能
三 『二枚の銅貨』における文字の意義
四 ハーマンの文字論とその意義
第六章 文字と図像(索引の機能)
一 索引か、あるいは著作か
二 かりそめのパラテクストとしての「索引P」
三 著者の自画像
四 パロディーとしての索引
五 符号としての字母P
六 愛言者と読者層とのコミュニケーション
七 「索引P」と挿絵とによる枠構造
八 生ける声と死んだ文字? ―― ヘルダーの文字観との比較で
九 ハーマンにおける文字の図像性
第七章 翻訳というコミュニケーション
一 ハーマンの「翻訳論」?
二 ハーマンの翻訳概念
三 「翻訳」概念とへりくだりのコミュニケーション
第八章 書簡による言語コミュニケーション
一 書簡性とは
二 書簡性への入口としてのシャフツベリ翻訳
三 書簡体の試み 草稿『ある父親の手紙』
四 最初の著作『ソクラテス追憶録』における書簡性
五 『五つの牧会書簡』における書簡性
六 挑発する書簡――著作家と読者との関係における書簡性
終章 対話性と書簡性
謝辞 あとがきにかえて
第一章 ハーマンにおける言語と文体―― その研究史概観
一 ハーマンの言語観と神秘的文体――ゲーテ
二 個別性の思想と難解な文体――ヘーゲル
三 非合理主義者ハーマンの「言語理論」――ウンガー
四 第二次大戦後の研究
五 本研究の立場と目標
第二章 「へりくだり」のコミュニケーションモデル
一 へりくだりの概念とハーマンのロンドン著作集
二 子供向け自然学に関するハーマンとカントの共同プロジェクト
三 カント宛の最初の手紙
四 カント宛の二通目の手紙
五 カント宛の三通目の手紙
六 カントの教育学
七 ハーマンとカントにおける「敢えて賢くあれ!」
八 子供への「へりくだり」―― ベンヤミンとの関連で ……
九 「へりくだり」のコミュニケーションと共通感覚
第三章 言語コミュニケーションの起源
一 ヘルダー『言語起源論』の前後
二 ヘルダーのズュースミルヒ批判
三 ズュースミルヒにおける完成された建物としての言語
四 建物としての言語、あるいは人間の道具としての言語
五 ハーマンの言語起源論―ズュースミルヒとヘルダーの間で
六 言語起源論とコミュニケーション
第四章 ハーマンにおける音声コミュニケーション
一 「語りたまえ、汝を見まつらんがために」
二 「語ることは翻訳すること」
三 言語起源における音声
四 音声による言語コミュニケーション
第五章 18世紀における正書法をめぐる議論に見る音声と文字
一 正書法と文字論
二 『字母hの新たな弁明』における文字の機能
三 『二枚の銅貨』における文字の意義
四 ハーマンの文字論とその意義
第六章 文字と図像(索引の機能)
一 索引か、あるいは著作か
二 かりそめのパラテクストとしての「索引P」
三 著者の自画像
四 パロディーとしての索引
五 符号としての字母P
六 愛言者と読者層とのコミュニケーション
七 「索引P」と挿絵とによる枠構造
八 生ける声と死んだ文字? ―― ヘルダーの文字観との比較で
九 ハーマンにおける文字の図像性
第七章 翻訳というコミュニケーション
一 ハーマンの「翻訳論」?
二 ハーマンの翻訳概念
三 「翻訳」概念とへりくだりのコミュニケーション
第八章 書簡による言語コミュニケーション
一 書簡性とは
二 書簡性への入口としてのシャフツベリ翻訳
三 書簡体の試み 草稿『ある父親の手紙』
四 最初の著作『ソクラテス追憶録』における書簡性
五 『五つの牧会書簡』における書簡性
六 挑発する書簡――著作家と読者との関係における書簡性
終章 対話性と書簡性
謝辞 あとがきにかえて
内容説明
プロイセンの思想家で「北方の博士」と呼ばれたJ・G・ハーマン(1730-88)は,ドイツ文学史や精神史において「疾風怒濤やロマン派の先駆者」,「難渋な文体」で啓蒙主義を批判した神学的な非合理主義者といったレッテルを貼られてきた。反面,ゲーテの「その時代で最も頭脳明晰な人物」という言葉に象徴されるように,ロマン主義への影響とともに,カントをはじめとする当時の啓蒙主義者たちには大きな刺激となり,彼の弟子であり友人でもあったヘルダーをはじめシュレーゲル,シェリング,グリム,キェルケゴールからディルタイ,ハイデガー,ベンヤミンなど今日まで広範な知識人にさまざまな影響を与えてきた。
ハーマンの思索の鍵概念「へりくだり」とは「上から下へと降りてくる」が原義である。それは神が人間イエスとなって人間へとへりくだり,人々が理解しうる聖書の言葉を生み出した。彼は「へりくだり」の思想を神学的概念や信仰告白にとどめず,それが著者と読者との関係のアナロジーとしてコミュニケーションを支えていると考えた。
著作家ハーマンは内面において「文人」または「愛言者(文献学者)」の召命を受けたという自覚のもとに「ことば」を武器にコミュニケーション活動を行ったのである。
著者はハーマンの言語と文体についての研究史を踏まえて,言語起源論をはじめ音声言語と文字言語の関係,翻訳や書簡のもつ意味を解明して,「へりくだり」の思想の成り立ちと展開,さらにその構造を明らかにする。
ハーマンの思索の鍵概念「へりくだり」とは「上から下へと降りてくる」が原義である。それは神が人間イエスとなって人間へとへりくだり,人々が理解しうる聖書の言葉を生み出した。彼は「へりくだり」の思想を神学的概念や信仰告白にとどめず,それが著者と読者との関係のアナロジーとしてコミュニケーションを支えていると考えた。
著作家ハーマンは内面において「文人」または「愛言者(文献学者)」の召命を受けたという自覚のもとに「ことば」を武器にコミュニケーション活動を行ったのである。
著者はハーマンの言語と文体についての研究史を踏まえて,言語起源論をはじめ音声言語と文字言語の関係,翻訳や書簡のもつ意味を解明して,「へりくだり」の思想の成り立ちと展開,さらにその構造を明らかにする。