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縄文の儀器と世界観

社会変動期における精神文化の様相

縄文の儀器と世界観

新潟大学人文学部研究叢書12

著者 阿部 昭典
ジャンル 歴史
出版年月日 2015/03/30
ISBN 9784862852083
判型・ページ数 菊判・272ページ
定価 本体5,000円+税
在庫 在庫あり
 

目次

序章 研究視点と本書の構成
第1章 縄文時代中期末葉における土偶衰退・消滅
1 はじめに
2 東北地方における土偶の消長に関する見解
3 東北地方における中期末葉の土偶の事例
4 東北地方における土偶の動態
5 縄文時代中期末葉における土偶衰退の意義
第2章 縄文時代後期前葉における土偶の有脚化とその意義
1 はじめに
2 東北地方の後期前葉土偶の編年研究
3 中期末葉の土偶形態
4 後期前半期の土偶形態
5 土偶有脚化の意義──地域性と地域間の影響関係
6 まとめ
第3章 縄文時代の斧状土製品の研究
1 はじめに
2 斧状土製品の分布と分類
3 斧状土製品の特色と変遷
4 斧状土製品の変遷過程
5 斧状土製品の機能・用途に関する考察
6 斧状土製品の出現の意義とその系譜
7 おわりに
第4章 縄文時代の鐸形土製品に関する一考察
1 はじめに
2 研究略史
3 鐸形土製品の特色
4 鐸形土製品の用途について
5 おわりに
第5章 縄文時代における徳利形土器の儀礼的側面
1 はじめに
2 ミニチュア土器の定義・機能用途の問題点
3 縄文時代中期末葉の徳利形土器
4 中期末葉から後期初頭のその他のミニチュア土器
5 まとめ
第6章 東北地方北部における石刀の顕在化
1 はじめに
2 東北地方北部~北海道西南部の後期前葉の石刀
3 石刀製作工程について
4 石刀の顕在化のプロセス
5 石刀の機能・用途について
6 まとめ
第7章 縄文的世界観における「第二の道具」
1 「第一の道具」と「第二の道具」の認識
2 「第二の道具」の研究法
(1)ライフサイクル論
(2)土偶変形に見る縄文人の思考
(3)鐸形土製品に関する自然科学分析と実験考古学的手法
(4)ミニチュア土器の機能・用途について
(5)大形石棒の基礎的研究
(6)石刀に残された痕跡の意味
(7)三角形岩版の用途研究
(8)「第二の道具」の研究法について
3 「第二の道具」と環状列石──「道具」と「場」の関わり
第8章 縄文研究における「景観論」
1 「景観論」の提唱
2 屋内空間構造の研究史
3 民俗例・民族誌に見る屋内空間のコスモロジー
4 竪穴住居跡に見られる空間分割・認識
5 竪穴住居の入口と集落構造のなかの入口方向(主軸方向)
6 竪穴住居の空間認識と世界観
7 集落境と周辺景観の認識──「空間」と「時間」
終章 縄文時代の社会変動期における精神文化
1 はじめに
2 「第二の道具」論の方法と課題
3 「景観論」の今後の展望
4 中期末葉における社会変動と精神文化のかかわり
5 おわりに

引用参考文献・挿図出典/索引

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内容説明

本書は東北地方北部を対象として,縄文時代中期末葉から後期前葉の文化的・社会的変動期における精神文化や儀礼行為のあり方を遺跡や出土物を通して解明し,新たな分析法や研究視点を試みながら,この時期の儀器や世界観について多角的に考察したものである。
狩猟や生産,調理などに使われた実用的な道具に対して,機能や用途が明らかでない「第二の道具」と呼ばれる縄文時代の儀器は,土偶をはじめ斧状土製品やミニチュア土器など多種多様である。「第二の道具」のもつ象徴的意味づけを考察することにより,当時の儀礼行為がどのようなものであったかを検討する。
さらに縄文的景観を分析するため,自然的景観,人工的景観,観念的景観という3つの概念を使い,独自の世界観のなかで形成された景観や地形などの空間認識や,その認識が投影された住居・集落の構造を解明,とくに観念的領域で発揮された「第二の道具」の効果を,分布領域や形態の変遷など多くの図版を用いて詳細に分析することにより明らかにした。
考古学的な客観データを積み重ね,相互に比較検討しつつ先行研究を踏まえて総合的に解釈した本書は,縄文時代研究の奥深さと着実な進展を示す成果である。

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