後期旧石器時代の終末期に,北海道から本州にもたらされた湧別技法白滝型の細石刃石器群。その製作技術と石材の分析を通じて,海峡をはさみダイナミックに変容する旧石器人類の動態と環境適応を解明する基盤的研究。黒曜石の原産地や石材消費の変遷にも迫る。
哲学史において誤解されてきたライプニッツ『弁神論』の理論的意義を再評価する。最善世界説を神の自由,倫理,世界の秩序と結びつけ,道徳的論証により擁護した議論を精緻に分析。さらにカントの批判など受容史を考察し,近代哲学への影響を明らかにする。
ハイデッガーと新カント派のリッカートが交わした43通の往復書簡を収録。1900年代初頭に隆盛を極めていた新カント派の研究と批判によりハイデッガーが思索を練り上げ『存在と時間』(1927年)へ至る姿などを垣間見ることができる有意義な資料。
朝鮮戦争時に北朝鮮で米軍が捕獲した大量の内部文書から北朝鮮の実情を知る文書を選び,邦訳編集した。全体を四編に分け,「共産党・諸組織」,「保安」,「土地改革」,「農業・糧政」として紹介・解説する。ソ連軍政期の実態と共産党主導の組織活動と政治経済事情を解明。
近代日本はヨーロッパをモデルにして,市民生活から生産技術,学問と教育など多岐に渡り展開した。欧米人が基礎教養として身に付けてきた行動様式の由来や,キリスト教文化が人々の生活を高めてきたさまざまな経緯を深く知るために必読の一書。
中国の秘密結社「青幇」と「紅幇」はどのように誕生し,演劇とどのように結び付いたのか。日本軍による当時の調査資料と著者の現地調査に基づき,演劇を巡る社会構造を分析する先駆的業績。当時の壮絶な人物伝をも伝えて,陰の中国近現代史としても魅力的な作品。
日本の文芸論において,自然の呼びかけに応答した人々の美しい心を表わしてきた「花」の伝統を踏まえた世阿弥の二十数編におよぶ能楽論と謡曲について,全体としての文脈を吟味しその基本構造を解明する独自の試み。「花」の自己変容と生のあり方を探究する。