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中国の秘密結社と演劇  新刊

中国の秘密結社と演劇
著者 田仲 一成
ジャンル 東洋学
芸術
出版年月日 2024/11/10
ISBN 9784862854223
判型・ページ数 菊判・456ページ
定価 本体6,000円+税
在庫 在庫あり
 

目次

(カラー口絵4頁)

前言

上篇 青幇と演劇の関係

第1章 「青幇」の沿革と組織
 第1節 明清時代の漕運
  Ⅰ 沿革/Ⅱ 水手/Ⅲ 制度の変遷
 第2節 水手の行動
  Ⅰ 糧船水手の械闘/Ⅱ 羅教とのつながり/Ⅲ 反清復明――民族英雄(反清義士)/Ⅳ 糧船の運営と水手の行動
 第3節 陸上の糧船幇と水手
  Ⅰ 水運の廃止/Ⅱ 糧船幇の残存――旱碼頭/Ⅲ 水運時代の組織・職業の継承

第2章 民国期上海の青幇
 第1節 増谷達之輔報告
  Ⅰ【江淮泗】人物表/Ⅱ【興武四】人物表/Ⅲ【興武六】人物表/Ⅳ【嘉海衛】人物表/Ⅴ【嘉興衛】人物表/Ⅵ【鎮前】人物表/Ⅶ【双鳳】人物表/Ⅷ【嘉白】人物表/Ⅸ【杭四】人物表
 第2節 増谷報告と『清門考源』の関係
  Ⅰ 上海居住者の特定/Ⅱ 排列順序/Ⅲ 記述内容/Ⅳ 調査の目的
 第3節 増谷報告に見る上海青幇の特徴
  Ⅰ 水運時代の残影/Ⅱ 警察権力への指向/Ⅲ 商工業者との相互依存

第3章 青幇人物小伝
 第1節 興武六
  Ⅰ 大字輩――黄金栄,張仁奎,張之江,樊瑾成/Ⅱ 通字輩――張嘯林/Ⅲ 無字輩――杜月笙
 第2節 嘉興衛
  Ⅰ 大字輩――劉登階/Ⅱ 通字輩――顧竹

第4章 上海青幇と上海劇壇
 第1節 劇場所有者
  Ⅰ 金大戯院――金廷蓀,青幇通字派/Ⅱ 更新舞台――董兆斌,青幇無字派/Ⅲ 栄記共舞台――張善琨,青幇通字派/Ⅳ 鑫記大舞台――范恒徳,青幇無字派/Ⅴ 天蟾舞台――顧竹軒,青幇通字派/Ⅵ 卡爾登劇院――周翼華,幇籍なし
 第2節 劇場別経営者,所属俳優
  Ⅰ 共舞台/Ⅱ 天蟾舞台/Ⅲ 卡爾登大戯院/Ⅳ 大舞台/Ⅴ 黄金大戯院/Ⅵ 更新舞台/Ⅶ 大世界/Ⅷ 新世界/Ⅸ 永安/Ⅹ 新々楽園
 第3節 俳優
  Ⅰ 上海に寓居した京劇俳優/Ⅱ 劇場別の所属俳優――大舞台,卡爾登,天蟾舞台,共舞台
 第4節 青幇幇派別・字輩別から見た上海京劇俳優
  Ⅰ 江淮泗/Ⅱ 興武四/Ⅲ 興武六/Ⅳ 嘉海衛/Ⅴ 嘉白/Ⅵ 幇派不明

上篇 結語 上海劇壇が青幇と関係を持つ社会的背景


下篇 紅幇と劇界

第1章 南洋における天地会会党
 第1節 シンガポールに流寓せる会党の遺跡
  Ⅰ 五虎祠と陳育崧氏の研究/Ⅱ 五虎祠神位の内部記載/Ⅲ 五虎祠神位人物の籍貫と生卒年代
 第2節 道光咸豊間潮州会党蜂起とシンガポール天地会会党との関係
  Ⅰ 黄悟空の蜂起/Ⅱ 呉忠恕の蜂起
 第3節 呉忠恕の蜂起と弾詞・演劇
  Ⅰ 潮州歌冊《呉忠恕》/Ⅱ 潮州劇《呉忠恕》

第2章 シンガポールに残る天地会の遺風
 第1節 シンガポールの潮州人組織
  Ⅰ 粤海清廟/Ⅱ 粤海清廟の祭祀組織と巡遊・演劇
 第2節 シンガポールに残る天運の年代標記
  Ⅰ 閩北系居民/Ⅱ 閩南系居民/Ⅲ 潮汕系居人/Ⅳ 海南人(瓊州)
 第3節 シンガポールに残る天地会符号
  Ⅰ シンガポールにおける天地会符字の遺存/Ⅱ 台湾天地会符号との関係

第3章 香港に残る天地会の遺風
 第1節 天運の標記
  Ⅰ 潮州人/Ⅱ 海陸豊人/Ⅲ 福佬人/Ⅳ 客粤系
 第2節 天地会・白蓮教の遺風
  Ⅰ 広西天地会文献/Ⅱ 新界客家に残る天地会関帝対聯/Ⅲ 新界客家に残る天地会観音対聯
 第3節 天地父母奉祀の遺風
  Ⅰ 竹園天地父母祠/Ⅱ 柴湾天地父母祠/Ⅲ 徳教による祭祀儀礼

第4章 天地会会党と演劇
 第1節 天地会と粤劇俳優
  Ⅰ 李文茂(李雲茂)/Ⅱ 瓊花会館/Ⅲ 戯船[紅船]/Ⅳ 八和会館
 第2節 天地会入会式における演劇上演
  Ⅰ 洪門大会/Ⅱ 中堂教子/Ⅲ 橋辺飲水/Ⅳ 定国斬関〔奸〕/Ⅴ 打道〔倒〕鉄龍陣蘇羅 
 第3節 天地会の戯曲
  Ⅰ 六国封相/Ⅱ 趙少卿/Ⅲ 九環刀濺情仇血

総結 中国の秘密結社と皇帝権力

附録Ⅰ 青幇主要人物伝記資料
附録Ⅱ 潮州歌冊『呉忠恕全歌』8巻
参考文献目録
あとがき
索引
英文目次

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内容説明

近代中国には青幇・紅幇と呼ばれる秘密結社が存在した。戦時中,日本軍が上海を統治する際,協力を得ようとしたのもこの秘密結社であった。本書はこれまで十分研究されてこなかった中国の秘密結社と演劇の関係を初めて解明した先駆的業績である。果たして秘密結社とはどのように誕生し,演劇とどのように結び付いたのか。
上篇では,青幇と演劇の関係を論じる。華北・華中の青幇は,大運河を使い南方の米を北京に運んだ糧米船の水手を起源とする。著者は,日本の興亜院調査班として上海で青幇の調査に従事した増谷達之輔の報告を,その基礎資料と合わせて綿密に精査して,劇場経営の賭けごと的要素と上海租界の治安維持という問題が青幇と演劇人を結び付けたことを解明する。
下篇では,華南の紅幇と劇界の関係を,現地調査に基づき分析する。洪門や天地会とも呼ばれる紅幇は,広東の珠江デルタの水路を,赤く塗った大型舟艇で移動しながら反清活動を行ったことに由来する。長い間謎に包まれてきたシンガポール社公廟に祀られた人物像の解明,香港の廟にみる装飾の発見,戯船である紅船の復元図,粤劇の演目など複数の要素を手がかりに,演劇との関係を追究する。中国の秘密結社は,劇場や遊郭を経営した日本の任侠集団とも類似するが,権力の転覆を狙い徹底的に弾圧を受けた点に決定的な特徴があった。
さらに潮州語の歌集『呉忠恕全歌』の梗概と原文を付す。
演劇を巡る社会構造のみならず,当時の壮絶な人生を伝えて余りある,陰の中国近現代史としても魅力的作品。

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