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東アジア祭祀芸能比較論

東アジア祭祀芸能比較論
著者 田仲 一成
ジャンル 東洋学
芸術
出版年月日 2023/07/25
ISBN 9784862853875
判型・ページ数 菊判・514ページ
定価 本体6,000円+税
在庫 在庫あり
 

目次

前言

第1章 中国の祭祀芸能
 第1節 祈福系の祭祀芸能
  一 沿革
  二 北方中国の祈福芸能
  三 南方中国の祈福芸能
 第2節 攘災系の祭祀芸能
  一 沿革
  二 北方中国の追儺儀礼
  三 南方中国の追儺儀礼
 第3節 鎮魂系の祭祀芸能
  一 沿革
  二 英霊の鎮魂
  三 烈婦の鎮魂
  四 無名孤魂の鎮魂儀礼――水陸道場
  五 十王斎と目連戯
 第4節 小結

第2章 朝鮮の祭祀芸能
 第1節 祈福系の祭祀芸能
  一 沿革
  二 近世百戯と現代百戯
 第2節 攘災系の祭祀芸能Ⅰ――宮廷儺戯・雑戯
  一 沿革
  二 唐制儺礼の継受
 第3節 攘災系の祭祀芸能Ⅱ
  一 類型と分布
  二 黄海道・京畿道の仮面戯――鳳山タルチュム
  三 嶺南地区の仮面戯――水営野遊
  四 東海岸地区の仮面戯――河回別神Kut
  五 沿革と伝播についての考察
 第4節 鎮魂系の祭祀芸能
  一 沿革
  二 英霊憑依
  三 十王斎
  四 龍王祭――水幽
 第5節 小結

第3章 日本の祭祀芸能
 第1節 祈福系の祭祀芸能
  一 沿革――大陸百戯の渡来
  二 渡来芸の遺存――春日若宮おん祭りの田楽芸
  三 農村祭祀に残る渡来芸
  四 伎楽Ⅰ――法隆寺
  五 伎楽Ⅱ――毛越寺(日本化した伎楽)
 第2節 攘災系の祭祀芸能
  一 沿革――大陸追儺の渡来
  二 春日若宮おん祭りの蘭陵王
  三 法隆寺の追儺式
  四 東大寺修二会(お水取り)の法呪師芸
  五 大分の修正鬼会
 第3節 鎮魂系の祭祀芸能Ⅰ
  一 沿革――仏教の地獄と救済―地獄観念―観心十界図
  二 地獄芝居Ⅰ――鬼来迎
  三 地獄芝居Ⅱ――壬生狂言「賽の河原」
 第4節 鎮魂系の祭祀芸能Ⅱ
  一 沿革――地方芸能の能
  二 吉良川田楽(翁・三番神・小林)
  三 能郷の猿楽
  四 黒川能
 第5節 小結
  一 祭祀芸能の持続性・役務性・独占性
  二 年齢集団の観念

第4章 中朝祭祀芸能の比較
 第1節 祈福系祭祀芸能の比較
  一 中国胡戯と百済伎楽
  二 百済伎楽と李朝仮面戯
 第2節 攘災系祭祀の比較
  一 唐制衣冠と朝鮮衣冠
  二 明代衣冠と朝鮮衣冠
 第3節 鎮魂系祭祀芸能の比較
  一 中国水陸画と朝鮮甘露幀
  二 中国散楽と朝鮮散楽
 第4節 小結――儒教儀礼の共有

第5章 朝日祭祀芸能の比較
 第1節 祈福系祭祀芸能の比較
  一 降神儀礼
  二 朝鮮の和合擬態と日本の和合擬態
 第2節 攘災系祭祀芸能の比較
  一 行道
  二 朝鮮の笑劇と日本の笑劇
 第3節 鎮魂儀礼の比較
  一 朝鮮の野祭と日本の施餓鬼
  二 朝鮮の龍王祭と日本の舟送り
 第4節 小結――民俗の共通性
 補論 朝日仮面劇をめぐる論争
  趙東一「田仲一成「日本と韓国の神事芸能の比較――中国を媒介にした一考察」に対する所見」
  趙東一氏の補足説明
  田仲一成の反論要旨

第6章 中日祭祀芸能の比較
 第1節 祈福系儀礼の比較
  一 中国の胡戯と日本の胡飲酒
  二 中国の土地神と日本の翁
 第2節 攘災系祭祀芸能の比較
  一 中国の開山神と日本の開山神
  二 中国の追儺神と日本の追儺神
 第3節 鎮魂系祭祀芸能の比較
  一 中国の再生儀礼と日本の再生儀礼
  二 中国の孤魂祭祀と日本の施餓鬼供養
 第4節 小結

第7章 三国祭祀芸能の対照
 第1節 豊饒儀礼(農耕儀礼)の対照
  一 中国の農耕儀礼――演春
  二 朝鮮の農耕儀礼――田唄
  三 日本の農耕儀礼――田遊び
 第2節 攘災儀礼(発散儀礼)の対照
  一 中国の発散儀礼――滑稽戯
  二 朝鮮の発散儀礼――笑謔の戯
  三 日本の発散儀礼――地方芸能に見る諧謔戯
 第3節 鎮魂儀礼(地獄儀礼)の対照
  一 中国の地獄儀礼――功徳・十王図
  二 朝鮮の地獄儀礼――十王迎え
  三 日本の地獄儀礼――地獄図
 第4節 小結――朝鮮における演劇未発

第8章 劇文学の比較
 第1節 逐疫の呪文
  一 式三番の千歳の呪文
  二 南戯『白兎記』の呪文
 第2節 爛熟期の中国戯曲と日本近世戯曲の比較
  一 三大南戯
  二 戯曲構造の比較
  三 戯曲構成法の比較
 第3節 西洋と東洋の劇文学の異同――悲劇の比重
  一 問題の所在
  二 西洋演劇における壮美観
  三 中国文学史上の壮美観
  四 明代戯曲中における壮美感の弱化
  五 東洋壮美感の微弱性
 第4節 総結

附録Ⅰ 黒川能歴年上演演目表(1839-2010)
附録Ⅱ 黒川狂言歴年上演演目表(1974-2010)
附録Ⅲ 大野舞台猿楽図誌(天保7年〔1841〕序刊,東洋文庫蔵)

参考文献目録
あとがき
索引
英文目次

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内容説明

宗教儀礼から広く展開した祭祀芸能は,神や鬼など多様な表現手段として仮面劇を活用し,古来より祭祀儀礼を担ってきた。日本の伝統芸能である能や狂言,また地域の祭りにみる田楽などもそうした祭祀芸能として発生し,中国や朝鮮半島との交流の中で発展してきた。
本書は,これまで誰も成し遂げてこなかった,中国・朝鮮・日本の祭祀芸能を,文献の渉猟と長年にわたる現地調査に基づいて比較,分析し,東アジアの芸能全体の発生・展開・伝播の状況を俯瞰した画期的な業績である。
本書前半では,三国に一章ずつを割り当て,①豊作や幸福を神に祈る祈福祭祀芸能,②災害を免れることを神に願う攘災祭祀の芸能,③横死者の祟りを鎮めることを神に求める鎮魂祭祀の芸能,という三つの芸能に分けて,その歴史的沿革と現状を概観する。
その上で後半では,中国と朝鮮,朝鮮と日本,中国と日本という二国関係において,上記三種の芸能にどのような影響が認められるかを解明する。さらには三国間でどのような共通点と相違点があるか,また社会や市場の違いが仮面劇の盛衰をいかに決めたのか,村落共同体の有無の影響など,芸能を規定する社会構造の違いをも浮き彫りにする。最後に,西洋の演劇や美学との比較を通じて東アジアにおける悲劇の位置づけを論じる。
中国演劇史研究で多くの業績を上げてきた著者が満を持して上梓する本書は,比較を通じ中国史や日本芸能史に新たな視座を提供するとともに,伝統芸能や現代演劇に関心をもつ読者に演劇の奥深い魅力を伝えてやまない。

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