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目次
はじめに(大沼由布)
第Ⅰ部 聖なるものと旅のナラティヴ
1 体と心と言葉の旅――英仏版『マンデヴィルの旅行記』とイングランド像(大沼由布)
はじめに
1 イングランド人の語り手
2 執筆言語としてのフランス語
3 英仏版の違い
おわりに
2 境界を越えて旅した聖グースラークと『聖グースラーク伝』(石黒太郎)
はじめに
1 数々の「境界」を越えて旅したグースラーク
2 境界を越えた言葉の集まった『聖グースラーク伝』
3 中英語聖人伝における移葬のナラティヴ(菅野磨美)
はじめに
1 中世聖人伝における移葬
2 「ラプトゥス」(raptus)としての移葬
3 聖ウィニフレッドの移葬
おわりに
4 内なる目で辿る聖地――リンカン・ソーントン写本における受難瞑想とエルサレムへの仮想巡礼(杉山ゆき)
はじめに
1 ソーントンのキリスト中心主義的信仰と聖地への憧憬
2 「魂の内なる目」による仮想巡礼――『受難の神秘』の瞑想的な読書
おわりに
5 初期近代イングランドの旅行記における描写の視点――エルサレムの記述を中心に(髙橋三和子)
はじめに
1 巡礼記におけるエルサレムの描写――中世後期から初期近代へ
2 ファインズ・モリソンの地図的視点からの描写
3 ジョージ・サンズの旅行者の視点からの描写
おわりに
第Ⅱ部 越境とアイデンティティ
6 彼我の境の想像と越境――中英語ロマンスにおける地理的移動とアイデンティティの形成(趙 泰昊)
はじめに
1 聖地への巡礼と償罪のための十字軍遠征
2 『ウォリックのガイ』における巡礼としての東方遠征
3 サラセンの改宗と信仰の証明
おわりに
7 曖昧な国境――旅と自己同一性の揺らぎ(小川真理)
はじめに――作品の成立と受容
1 地理的・宗教的境界の曖昧さ
2 ベヴィスとイングランドのつながり
3 イングランドに定着できないベヴィス
8 ジョン・ガワーのバラード連作――詩的対話へのいざない(小林宜子)
1 同時期のフランスにおけるバラード連作の流行
2 『50篇のバラード』における引用と引喩
3 海峡横断的な騎士と詩人のネットワーク
第Ⅲ部 異端と正統の境界
9 放浪する説教者ジョン・ボール――ロラード派直前の異端(赤江雄一)
はじめに
1 『大年代記』におけるボールの裁判をめぐる記述
2 農民反乱以前のボール――開封書状録と破門通知書
3 司教区内通達の時系列比較から見えるもの
10 ここが無限だ,ここで跳べ――レジナルド・ピーコックと神の存在証明(井口 篤)
1 運動としての神への旅路
2 ピーコックと神の存在証明
3 有限が無限へと溶け出す地平へ
4 無限への「ありそうで自然な」飛躍
11 改変されたカテキズム――ホプトン・ホール写本の『一般信徒のための教理問答』(西川雄太)
はじめに
1 「司牧に関する手引書」の伝統――第4ラテラノ公会議からペッカム・シラバスまで
2 ゲイトリッジ版『一般信徒のための教理問答』
3 ホプトン・ホール写本版『一般信徒のための教理問答』
おわりに
第Ⅳ部 マテリアリティからみる移動
12 越境するメメント・モリ――中世末期のロンドン周辺における往生術写本の移動と受容(新居達也)
1 Douce 322――都市エリートから女子修道院へ
2 Harley 1706――2つの女子修道院と「純潔な寡婦」
3 敷居に立つ死――抒情詩「死の警告」と写本コンテクスト
おわりに
13 教訓的テクストの移動とミセラニー写本の文化的解釈の可能性――15世紀ノリッジの商人が所有していた2写本の新たな考察(工藤義信)
序
1 初期の写本所有者と読者の範囲
2 自己を顕示する所有物としての写本
3 商人階層の読書文化
結語
14 世界に散らばる装飾写本――マンスフェルト祈禱書を辿って(池田真弓)
はじめに
1 20世紀後半から現在まで――表舞台への登場から散逸へ
2 親写本の再構築
3 父から娘へ――祈禱書制作の経緯
4 祈禱書制作地の推定――北か南か
5 祈禱書のその後――バルバラの手から離れて
おわりに
15 海を渡った聖ロクス――初期刊本にみる疫病の聖人崇敬(徳永聡子)
1 旅した聖ロクス
2 聖ロクス伝の本文伝播
3 イングランドでの印刷――『黄金伝説』と『15のO』への挿入
おわりに(徳永聡子)
松田隆美先生ご著作・論文一覧(菅野磨美)
索引
執筆者紹介
第Ⅰ部 聖なるものと旅のナラティヴ
1 体と心と言葉の旅――英仏版『マンデヴィルの旅行記』とイングランド像(大沼由布)
はじめに
1 イングランド人の語り手
2 執筆言語としてのフランス語
3 英仏版の違い
おわりに
2 境界を越えて旅した聖グースラークと『聖グースラーク伝』(石黒太郎)
はじめに
1 数々の「境界」を越えて旅したグースラーク
2 境界を越えた言葉の集まった『聖グースラーク伝』
3 中英語聖人伝における移葬のナラティヴ(菅野磨美)
はじめに
1 中世聖人伝における移葬
2 「ラプトゥス」(raptus)としての移葬
3 聖ウィニフレッドの移葬
おわりに
4 内なる目で辿る聖地――リンカン・ソーントン写本における受難瞑想とエルサレムへの仮想巡礼(杉山ゆき)
はじめに
1 ソーントンのキリスト中心主義的信仰と聖地への憧憬
2 「魂の内なる目」による仮想巡礼――『受難の神秘』の瞑想的な読書
おわりに
5 初期近代イングランドの旅行記における描写の視点――エルサレムの記述を中心に(髙橋三和子)
はじめに
1 巡礼記におけるエルサレムの描写――中世後期から初期近代へ
2 ファインズ・モリソンの地図的視点からの描写
3 ジョージ・サンズの旅行者の視点からの描写
おわりに
第Ⅱ部 越境とアイデンティティ
6 彼我の境の想像と越境――中英語ロマンスにおける地理的移動とアイデンティティの形成(趙 泰昊)
はじめに
1 聖地への巡礼と償罪のための十字軍遠征
2 『ウォリックのガイ』における巡礼としての東方遠征
3 サラセンの改宗と信仰の証明
おわりに
7 曖昧な国境――旅と自己同一性の揺らぎ(小川真理)
はじめに――作品の成立と受容
1 地理的・宗教的境界の曖昧さ
2 ベヴィスとイングランドのつながり
3 イングランドに定着できないベヴィス
8 ジョン・ガワーのバラード連作――詩的対話へのいざない(小林宜子)
1 同時期のフランスにおけるバラード連作の流行
2 『50篇のバラード』における引用と引喩
3 海峡横断的な騎士と詩人のネットワーク
第Ⅲ部 異端と正統の境界
9 放浪する説教者ジョン・ボール――ロラード派直前の異端(赤江雄一)
はじめに
1 『大年代記』におけるボールの裁判をめぐる記述
2 農民反乱以前のボール――開封書状録と破門通知書
3 司教区内通達の時系列比較から見えるもの
10 ここが無限だ,ここで跳べ――レジナルド・ピーコックと神の存在証明(井口 篤)
1 運動としての神への旅路
2 ピーコックと神の存在証明
3 有限が無限へと溶け出す地平へ
4 無限への「ありそうで自然な」飛躍
11 改変されたカテキズム――ホプトン・ホール写本の『一般信徒のための教理問答』(西川雄太)
はじめに
1 「司牧に関する手引書」の伝統――第4ラテラノ公会議からペッカム・シラバスまで
2 ゲイトリッジ版『一般信徒のための教理問答』
3 ホプトン・ホール写本版『一般信徒のための教理問答』
おわりに
第Ⅳ部 マテリアリティからみる移動
12 越境するメメント・モリ――中世末期のロンドン周辺における往生術写本の移動と受容(新居達也)
1 Douce 322――都市エリートから女子修道院へ
2 Harley 1706――2つの女子修道院と「純潔な寡婦」
3 敷居に立つ死――抒情詩「死の警告」と写本コンテクスト
おわりに
13 教訓的テクストの移動とミセラニー写本の文化的解釈の可能性――15世紀ノリッジの商人が所有していた2写本の新たな考察(工藤義信)
序
1 初期の写本所有者と読者の範囲
2 自己を顕示する所有物としての写本
3 商人階層の読書文化
結語
14 世界に散らばる装飾写本――マンスフェルト祈禱書を辿って(池田真弓)
はじめに
1 20世紀後半から現在まで――表舞台への登場から散逸へ
2 親写本の再構築
3 父から娘へ――祈禱書制作の経緯
4 祈禱書制作地の推定――北か南か
5 祈禱書のその後――バルバラの手から離れて
おわりに
15 海を渡った聖ロクス――初期刊本にみる疫病の聖人崇敬(徳永聡子)
1 旅した聖ロクス
2 聖ロクス伝の本文伝播
3 イングランドでの印刷――『黄金伝説』と『15のO』への挿入
おわりに(徳永聡子)
松田隆美先生ご著作・論文一覧(菅野磨美)
索引
執筆者紹介
内容説明
遥か『オデュッセイア』の時代から,旅すること,移動することは文学に不可欠な要素であった。移動が盛んであった中世ヨーロッパ社会でも,旅の記録は巡礼記や旅行記,愛や冒険を描く中世ロマンス,聖人伝,年代記,百科事典など様々なジャンルの作品に記された。
今ここに,中世英文学の気鋭の研究者が集い,イングランドにおける多様なナラティヴ(語り)を繙いて,言語の併用,文化交流,思想の流動,写本の伝播も含めた広義の移動という視角から中世社会に光を当てる。
第Ⅰ部「聖なるものと旅のナラティヴ」では,旅行記や聖人伝など物理的な移動に関係する記述や写本の挿絵などの分析を通し,移動にどのような思想や事情が伴い,何をもたらすのかを浮き彫りにする。
第Ⅱ部「越境とアイデンティティ」は,ラテン語から英語やフランス語など俗語が使用される多言語社会の中で,移動がアイデンティティや文化の形成といかに結びつき,影響したのかを明らかにする。
第Ⅲ部「異端と正統の境界」は,歴史文書やキリスト教神学書,宗教書の緻密な解析を通して,中世人の精神的な移動の有りようを描く。
第Ⅳ部「マテリアリティからみる移動」は写本や初期刊本を取り上げ,書物の伝播や受容の問題を論じる。
本書は個々のテーマを分断せず,各章が有機的に結びついて,ナショナリティの形成や異文化交流など,現代の課題にも豊かな示唆を与える独創的で良質な共同論集。
今ここに,中世英文学の気鋭の研究者が集い,イングランドにおける多様なナラティヴ(語り)を繙いて,言語の併用,文化交流,思想の流動,写本の伝播も含めた広義の移動という視角から中世社会に光を当てる。
第Ⅰ部「聖なるものと旅のナラティヴ」では,旅行記や聖人伝など物理的な移動に関係する記述や写本の挿絵などの分析を通し,移動にどのような思想や事情が伴い,何をもたらすのかを浮き彫りにする。
第Ⅱ部「越境とアイデンティティ」は,ラテン語から英語やフランス語など俗語が使用される多言語社会の中で,移動がアイデンティティや文化の形成といかに結びつき,影響したのかを明らかにする。
第Ⅲ部「異端と正統の境界」は,歴史文書やキリスト教神学書,宗教書の緻密な解析を通して,中世人の精神的な移動の有りようを描く。
第Ⅳ部「マテリアリティからみる移動」は写本や初期刊本を取り上げ,書物の伝播や受容の問題を論じる。
本書は個々のテーマを分断せず,各章が有機的に結びついて,ナショナリティの形成や異文化交流など,現代の課題にも豊かな示唆を与える独創的で良質な共同論集。