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ヨーロッパ史学史

探究の軌跡

ヨーロッパ史学史
著者 佐藤 真一
ジャンル 歴史
出版年月日 2009/05/25
ISBN 9784862850591
判型・ページ数 A5・332ページ
定価 本体3,800円+税
在庫 在庫あり
 

目次

I 古代ギリシアの歴史叙述
 概 観
一 歴史叙述の誕生――ヘロドトス
イオニアの自然哲学/ヘロドトスの生涯/『歴史』の序文と構成/ヘロドトスの歴史叙述――ペルシア戦争の背景と経過/伝承の保存と批判/ヘロドトスと超越的なもの
二 批判的歴史叙述の追求――ツキディデス
生涯とその時代/真実の探究/ペロポネソス戦争の原因とアテナイの敗因
三 問題意識と歴史家の条件――ポリュビオス
ローマの対外発展と地中海世界/ポリュビオスの生涯/『歴史』の執筆意図と構成/ローマの興隆と混合政体/「実用的」歴史/事実の探究と歴史家の課題/公平さの追求と党派性

 Ⅱ キリスト教の歴史観
 概 観
一 「時の中心」と救済史――ルカ
紀元一世紀/ルカ文書/ルカ文書の著者問題/ルカ文書の成立年代/ルカについて知りうること/歴史家としてのルカ――史料収集,世界史への編入,演説の意義/救済史家ルカ
二 「神の国」と「地の国」――アウグスティヌス
「永遠の都」ローマの陥落/アウグスティヌスの生涯/『神の国』の構成/ローマの発展と災厄/「神の国」の系譜/『神の国』の史学史的意義――循環説の批判

 Ⅲ 近代歴史学の形成
 概 観
一 現実政治と歴史叙述の世俗化――マキァヴェッリ
『君主論』の反道徳性/イタリアと国際情勢/強力な君主の待望/『君主論』と歴史/『ディスコルシ』と共和政ローマ/『カストルッチョ・カストラカーニ伝』/『フィレンツェ史』/シャルル8世のイタリア進入と歴史の教訓
二 宗派時代の教会史叙述――フラキウスとバロニウス
ヴォルムス帝国議会(1521)以後の宗派対立/宗教改革と教会史叙述/フラキウスの生涯/『マクデブルクの諸世紀教会史』/バロニウスと教会史/『教会年代記』/二大教会史叙述の相違と共通点
三 「博識の時代」における史料の収集と批判――マビヨン
1681年の意義/修道士マビヨン/サン・モール会の学問研究とマビヨン/マビヨンの調査旅行/『古文書学』の成立/『古文書学』と真偽の判断/晩年の論争
四 啓蒙の世紀と救済史観の排除――ヴォルテール
フランスの絶対王政と狂信に対する批判/歴史家ヴォルテール――『カール12世の歴史』と『ルイ14世の世紀』/『風俗試論』/ヴォルテールの歴史研究
五 近代歴史学の基礎づけ――ランケ
ランケの成長/神学・文献学専攻の学生ランケ/フランクフルト時代における歴史家ランケの形成/ベルリン大学教授としてのランケ/マクシミリアン2世と『近世史の諸時代について』

 Ⅳ 第一次世界大戦後の歴史学
 概 観
一 第一次世界大戦と国家理性の行方――マイネッケ
マイネッケの三大主著/「八月の日々の高揚」と戦争目的論争/1917年の経過と国民意志の両極化/1918年。敗北と革命/『国家理性の理念』の成立/ランケの「楽観主義」とマイネッケ/政治と道徳
二 アナール学派と「心性史」――マルク・ブロック
「アナール学派」と歴史学の革新/ブロックの生涯と学問状況/『奇跡を行なう国王』/『フランス農村史の基本性格』と『封建社会』/銃弾に倒れた歴史家/遺著『歴史のための弁明』

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内容説明

歴史的なものの考え方の特質とは何か。歴史学とはいかなる学問か。古代ギリシアから現代のアナール学派にいたる歴史叙述の歴史を個々の歴史家とその著作に即して辿ることにより,ヨーロッパ史学史全体の見取り図を描こうとする意欲作である。
〈Ⅰ古代ギリシアの歴史叙述〉では歴史の父ヘロドトスと科学的な歴史叙述の祖であるツキディデス,共和政ローマの発展を描いたポリュビオスを扱う。
〈Ⅱキリスト教の歴史観〉は『ルカ福音書』と『使徒言行録』など救済史観を展開したルカ文書とローマ市陥落を契機とするキリスト教批判に対する弁明としてアウグスティヌス『神の国』の意義を語る。
〈Ⅲ近代歴史学の形成〉は救済史観を批判し歴史叙述を世俗化したマキァヴェッリ,宗派戦争時代の教会史で活躍したフラキウスとバロニウス,徹底した史料の吟味に支えられたマビヨン『古文書学』などに光をあて,社会史,文化史に注目し進歩史観を生み出したヴォルテール,そして近代歴史学の父であるランケの歴史学上の位置を明確にする。
〈Ⅳ第1次世界大戦後の歴史学〉では国粋主義の昂揚期に政治と道徳の葛藤に苦闘したマイネッケと日本史学にも多大な影響を与えたアナール学派の創始者で心性史を開拓したブロックの偉業を紹介する。

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