ホーム > ランケと近代歴史学の成立
目次
略記号
序 研究の現状と本書のねらい
1 ヘンツの投じた波紋
2 ランケ研究の新しい知見
3 ヘンツによる研究史批判
4 同時代人の見たランケと今後の研究課題
5 本書のねらいと構成
第I部 歴史家ランケの形成
第一章 ランケの成長――ライプツィヒの学生時代まで
1 少年期ランケ
2 神学・文献学専攻の学生ランケ
第二章 フランクフルト時代――歴史家ランケの形成
1 カリキュラムと授業準備の広がり
2 歴史家としての自覚
3 『ロマン・ゲルマン諸民族の歴史』(一八二四)の公刊
4 『近世歴史家批判』と史料批判の深化
5 ベルリン大学への招聘
第Ⅱ部 史料収集と史料批判
第一章 ランケとニーブーア
1 交流の発端
2 南方研究旅行中のニーブーア宛三書簡
第二章 ランケと史料――刊行史料,ヴェネツィア報告書,帝国議会文書
1 ベルリン王立図書館所蔵の文書
2 南方研究旅行と史料探索
3 『教皇史』および『宗教改革時代のドイツ史』と史料
第三章 史料研究と普遍的展望
1 ニーブーアとヘーゲル
2 近代歴史学の基礎
3 ベルリン大学での「演習」による指導
第Ⅲ部 近代歴史学と救済史観との区別
第一章 ランケの『教皇史』とウルトラモンタニスムス
1 『教皇史』の波紋
2 『教皇史』成立の背景と「序文」
3 ウルトラモンタニスムスの台頭――ヘルメス主義弾圧,ケルン教会紛争,『歴史政治論誌』
4 フランス語訳。ドイツ語原本と禁書指定
5 近代歴史学とウルトラモンタニスムス
第二章 救済史観と近代歴史学の立場
1 「キリスト教の起源」についての叙述
2 ボシュエとランケ
第Ⅳ部 新しい歴史感覚――「個性」と「発展」
第一章 マイネッケの「歴史主義」論
第二章 ベルヒテスガーデン講義と進歩史観への疑問
第三章 『世界史』における中世暗黒観の克服
第Ⅴ部 現実政治とランケ
第一章 ナポレオン戦争からウィーン体制へ
第二章 ベルリンのサロンとウィーンでの交流
1 ラーエル・ファルンハーゲンのサロン
2 ランケの南方研究旅行と現実認識の深まり
第三章 七月革命の波紋――『歴史政治雑誌』,ゲッティンゲン七教授事件
1 七月革命の反響
2 『歴史政治雑誌』の刊行
3 『歴史政治雑誌』の基本方針
4 「フランスとドイツ」等の諸論稿
5 ゲッティンゲン七教授事件
第四章 一八四八/四九年革命とプロイセン王への意見書
1 革命の年 一八四八年
2 三月革命の勃発と意見書
3 立憲制の受容および「プロイセンとドイツ」
4 欽定憲法に添えるべき国王の宣言草稿
5 フランクフルト国民議会の決定に対して
6 ラードヴィッツの「連合」政策
第五章 ドイツ統一と第二帝政期の内政
1 普墺戦争と普仏戦争
2 文化闘争と社会主義勢力の興隆
第Ⅵ部 ランケと歴史学研究の組織化
第一章 『モヌメンタ(ドイツ中世史料集成)』刊行への助力
第二章 ランケとバイエルン科学アカデミー歴史委員会
1 ランケと歴史委員会への貢献
2 マクシミリアン二世とランケの交流
3 歴史委員会の創設とランケ
4 「歴史委員会」と「ドイツ史アカデミー」
5 開会演説におけるマクシミリアン王追悼
6 歴史委員会の成果とランケ
7 歴史委員会,マクシミリアン王とランケ
第三章 『歴史学雑誌』の創刊
1 ジーベルとランケ
2 ジーベルのミュンヒェン大学就任(一八五六)
3 『歴史学雑誌』の創刊にむけて
4 『歴史学雑誌』の基本方針
結語 ランケと近代歴史学
あとがき
初出一覧
参考文献
索引
序 研究の現状と本書のねらい
1 ヘンツの投じた波紋
2 ランケ研究の新しい知見
3 ヘンツによる研究史批判
4 同時代人の見たランケと今後の研究課題
5 本書のねらいと構成
第I部 歴史家ランケの形成
第一章 ランケの成長――ライプツィヒの学生時代まで
1 少年期ランケ
2 神学・文献学専攻の学生ランケ
第二章 フランクフルト時代――歴史家ランケの形成
1 カリキュラムと授業準備の広がり
2 歴史家としての自覚
3 『ロマン・ゲルマン諸民族の歴史』(一八二四)の公刊
4 『近世歴史家批判』と史料批判の深化
5 ベルリン大学への招聘
第Ⅱ部 史料収集と史料批判
第一章 ランケとニーブーア
1 交流の発端
2 南方研究旅行中のニーブーア宛三書簡
第二章 ランケと史料――刊行史料,ヴェネツィア報告書,帝国議会文書
1 ベルリン王立図書館所蔵の文書
2 南方研究旅行と史料探索
3 『教皇史』および『宗教改革時代のドイツ史』と史料
第三章 史料研究と普遍的展望
1 ニーブーアとヘーゲル
2 近代歴史学の基礎
3 ベルリン大学での「演習」による指導
第Ⅲ部 近代歴史学と救済史観との区別
第一章 ランケの『教皇史』とウルトラモンタニスムス
1 『教皇史』の波紋
2 『教皇史』成立の背景と「序文」
3 ウルトラモンタニスムスの台頭――ヘルメス主義弾圧,ケルン教会紛争,『歴史政治論誌』
4 フランス語訳。ドイツ語原本と禁書指定
5 近代歴史学とウルトラモンタニスムス
第二章 救済史観と近代歴史学の立場
1 「キリスト教の起源」についての叙述
2 ボシュエとランケ
第Ⅳ部 新しい歴史感覚――「個性」と「発展」
第一章 マイネッケの「歴史主義」論
第二章 ベルヒテスガーデン講義と進歩史観への疑問
第三章 『世界史』における中世暗黒観の克服
第Ⅴ部 現実政治とランケ
第一章 ナポレオン戦争からウィーン体制へ
第二章 ベルリンのサロンとウィーンでの交流
1 ラーエル・ファルンハーゲンのサロン
2 ランケの南方研究旅行と現実認識の深まり
第三章 七月革命の波紋――『歴史政治雑誌』,ゲッティンゲン七教授事件
1 七月革命の反響
2 『歴史政治雑誌』の刊行
3 『歴史政治雑誌』の基本方針
4 「フランスとドイツ」等の諸論稿
5 ゲッティンゲン七教授事件
第四章 一八四八/四九年革命とプロイセン王への意見書
1 革命の年 一八四八年
2 三月革命の勃発と意見書
3 立憲制の受容および「プロイセンとドイツ」
4 欽定憲法に添えるべき国王の宣言草稿
5 フランクフルト国民議会の決定に対して
6 ラードヴィッツの「連合」政策
第五章 ドイツ統一と第二帝政期の内政
1 普墺戦争と普仏戦争
2 文化闘争と社会主義勢力の興隆
第Ⅵ部 ランケと歴史学研究の組織化
第一章 『モヌメンタ(ドイツ中世史料集成)』刊行への助力
第二章 ランケとバイエルン科学アカデミー歴史委員会
1 ランケと歴史委員会への貢献
2 マクシミリアン二世とランケの交流
3 歴史委員会の創設とランケ
4 「歴史委員会」と「ドイツ史アカデミー」
5 開会演説におけるマクシミリアン王追悼
6 歴史委員会の成果とランケ
7 歴史委員会,マクシミリアン王とランケ
第三章 『歴史学雑誌』の創刊
1 ジーベルとランケ
2 ジーベルのミュンヒェン大学就任(一八五六)
3 『歴史学雑誌』の創刊にむけて
4 『歴史学雑誌』の基本方針
結語 ランケと近代歴史学
あとがき
初出一覧
参考文献
索引
内容説明
伝統的な歴史学や進歩主義的な歴史学に疑問を抱いたランケ(1795-1886)は,新たな歴史学の可能性を探求した。本書はその歩みを明らかにするとともに,ランケの全体像を多くの資料を駆使して描いた,わが国で初めての画期的業績である。
3年半に及ぶウィーンやイタリアを中心とした史料収集の旅に象徴されるように,ランケは膨大な史料群と向き合いつつ徹底した史料批判を通して,そのつど新たな著作を世に問うた。常に具体的な史料を精密に分析し,同時に普遍史という大局的視点からの考察を通して,学としての歴史学を形成していった。
20世紀に入り政治史や法制史,経済史,文化史などが展開し,さらに人々の様々な側面に光を当てるアナール学派や社会史の活躍は,歴史科学を豊かで多彩なものにした。しかし多くの歴史家が活動する反面,近代の歴史学がいかに確立してきたかを知る人は少ない。
ランケは神学と自然科学の狭間でどのような新しい歴史学を目指したのか。近代国家の形成に向かう歴史過程で,フランス革命や三月革命など押し寄せる自由の運動と向き合いながら,実践的な国家統治の可能性を求めて,彼は葛藤した。そこには現代の歴史家がグローバル化の中で担うべき課題に通じるものがある。今や経験ではなく,歴史に学ぶべき時代になった。歴史学の原点に立ち戻り,歴史する心,歴史叙述とは何かを考えるための格好の書である。
3年半に及ぶウィーンやイタリアを中心とした史料収集の旅に象徴されるように,ランケは膨大な史料群と向き合いつつ徹底した史料批判を通して,そのつど新たな著作を世に問うた。常に具体的な史料を精密に分析し,同時に普遍史という大局的視点からの考察を通して,学としての歴史学を形成していった。
20世紀に入り政治史や法制史,経済史,文化史などが展開し,さらに人々の様々な側面に光を当てるアナール学派や社会史の活躍は,歴史科学を豊かで多彩なものにした。しかし多くの歴史家が活動する反面,近代の歴史学がいかに確立してきたかを知る人は少ない。
ランケは神学と自然科学の狭間でどのような新しい歴史学を目指したのか。近代国家の形成に向かう歴史過程で,フランス革命や三月革命など押し寄せる自由の運動と向き合いながら,実践的な国家統治の可能性を求めて,彼は葛藤した。そこには現代の歴史家がグローバル化の中で担うべき課題に通じるものがある。今や経験ではなく,歴史に学ぶべき時代になった。歴史学の原点に立ち戻り,歴史する心,歴史叙述とは何かを考えるための格好の書である。