ホーム > 人間と宇宙的神化
目次
序 章
第1章 自然・本性(ピュシス)の開かれた構造
証聖者マクシモスの生涯と歴史/自然・本性のダイナミズム/信の動的かたち
第2章 「善く在ること」(アレテー)の成立をめぐって
問題の誕生の場に/円環的自己還帰的な構造/神の受肉したかたちとしてのアレテー
第3章 人間的自由と善の問題
自由な意志・択びの介在/悪と罪/超越的善と自己
第4章 情念と自己変容――身体・質料の復権
情念の起源とその終極/情念の浄めと変容
第5章 身体性の問題
魂と身体との自然・本性的結合 /魂の先在説に対する批判――魂と身体との同時的生成 /変容可能性を担うものとしての身体性
第6章 人間本性の変容と開花への道――「神と人との協働」と「信」をめぐって
神性・善性への意志的応答と聴従/神的働きと信との関わり――神的働き・恵みと人間的自由との協働/「信の測り」における関係性の論理
第7章 異なり,分裂,そして再統合――他者の問題
五つの異なりと分裂/創造と罪/万物の再統合への道/アレテーの統合と愛/他者と絶対他者
第8章 エクレシアの諸相と,その全一的かたち
「神の似像」および「世界の似像」としてのエクレシア/「人間の似像」および「魂の似像」としてのエクレシア/聖書が人間であり,世界が人間であること――ものの成立に関わる結合力と,善の問題/典礼のわざの象徴的意味/アレテーの成立と全一的交わりへの道
第9章 受肉と神化の問題――神人的エネルゲイアと人間
神化の意味と射程/神化の道の階梯/神化の道の内的契機/受肉をめぐる論の歴史的概観/受肉と神化との関わり――キリストにおける二つのエネルゲイア/脱自的な愛の経験から,その根拠へ――内なるキリストの発見/受肉の現在――結語に代えて
第1章 自然・本性(ピュシス)の開かれた構造
証聖者マクシモスの生涯と歴史/自然・本性のダイナミズム/信の動的かたち
第2章 「善く在ること」(アレテー)の成立をめぐって
問題の誕生の場に/円環的自己還帰的な構造/神の受肉したかたちとしてのアレテー
第3章 人間的自由と善の問題
自由な意志・択びの介在/悪と罪/超越的善と自己
第4章 情念と自己変容――身体・質料の復権
情念の起源とその終極/情念の浄めと変容
第5章 身体性の問題
魂と身体との自然・本性的結合 /魂の先在説に対する批判――魂と身体との同時的生成 /変容可能性を担うものとしての身体性
第6章 人間本性の変容と開花への道――「神と人との協働」と「信」をめぐって
神性・善性への意志的応答と聴従/神的働きと信との関わり――神的働き・恵みと人間的自由との協働/「信の測り」における関係性の論理
第7章 異なり,分裂,そして再統合――他者の問題
五つの異なりと分裂/創造と罪/万物の再統合への道/アレテーの統合と愛/他者と絶対他者
第8章 エクレシアの諸相と,その全一的かたち
「神の似像」および「世界の似像」としてのエクレシア/「人間の似像」および「魂の似像」としてのエクレシア/聖書が人間であり,世界が人間であること――ものの成立に関わる結合力と,善の問題/典礼のわざの象徴的意味/アレテーの成立と全一的交わりへの道
第9章 受肉と神化の問題――神人的エネルゲイアと人間
神化の意味と射程/神化の道の階梯/神化の道の内的契機/受肉をめぐる論の歴史的概観/受肉と神化との関わり――キリストにおける二つのエネルゲイア/脱自的な愛の経験から,その根拠へ――内なるキリストの発見/受肉の現在――結語に代えて
内容説明
東方ギリシア教父,ビザンティンの伝統の集大成者である7世紀の証聖者マクシモスの思想を明らかにした,わが国初の本格的業績。彼は西洋の源泉たる思想潮流を代表し,ヘブライ・キリスト教の伝統の上に古代ギリシア思想を摂取し,それらを統合した。
東方教父に見られる自然と人間,ものと言葉との内的共感・一体化を感取する心性は,日本古来の心情とも呼応して空海の世界にも通ずるものである。
マクシモスの自然・ピュシスにおいては,近代の自然科学に見られる人間と対立した対象的自然把握は根底から突破され,さらに古代ギリシア的なピュシス(自然・本性)と人間観は無限性へと開かれた動的な構造として捉え直され超克されている。そこでは人間とあらゆる自然,万物が無限なるものである善性と神性に結合され多様にして一なる交わりへと形成されていく人間と宇宙的神化(神的生命への与り)の位相が明らかにされる。
その言葉(ロゴス)に虚心に耳を傾けるならば,遙か古の異質な思想伝統と見なされる東方教父,ビザンティン世界が時代,民族,風土を超えて私たちの魂の根底に語りかけてくるのを見出すであろう。
東方教父に見られる自然と人間,ものと言葉との内的共感・一体化を感取する心性は,日本古来の心情とも呼応して空海の世界にも通ずるものである。
マクシモスの自然・ピュシスにおいては,近代の自然科学に見られる人間と対立した対象的自然把握は根底から突破され,さらに古代ギリシア的なピュシス(自然・本性)と人間観は無限性へと開かれた動的な構造として捉え直され超克されている。そこでは人間とあらゆる自然,万物が無限なるものである善性と神性に結合され多様にして一なる交わりへと形成されていく人間と宇宙的神化(神的生命への与り)の位相が明らかにされる。
その言葉(ロゴス)に虚心に耳を傾けるならば,遙か古の異質な思想伝統と見なされる東方教父,ビザンティン世界が時代,民族,風土を超えて私たちの魂の根底に語りかけてくるのを見出すであろう。