目次
日本語版への序文
はじめに
序章
重商主義
言語
本書の内容
第一章 重商主義をめぐる論争
歴史的反応
ヘクシャー
豊かさか国力か
重商主義の経済史
ケインズと重商主義
レントシーキング社会としての重商主義
開発と低開発
シュモラーへの回帰か
重商主義再考――その方向づけ
第二章 豊かさと国力
他国の水域での漁業
ナポリ王国
スペイン
フランス
ドイツ諸邦
ルートヴィヒ・フォン・ゼッケンドルフ(1626-92)
ヨハン・ヨアヒム・ベッヒャー(1635-82)
フィリップ・ヴィルヘルム・フォン・ヘルニク(1640-1714)
ヴィルヘルム・フォン・シュレーダー(1640-88)
第三章 貿易差額説
富の創出
国王の財源における貨幣
インフレーションへの支持
流動資産としての貨幣
王国のストックの増加
外国が支払う所得
衰退
貿易差額主義の回顧
第四章 1620年代の論争
1620年代の論争
市場の過程
高利の問題
新たな転機か
第五章 新しい貿易の科学
17世紀のイングランド
貿易と経済に関する論争
【論争のトピック 1640-90年】
規制会社と自由貿易
利子率
貨幣
新しい貿易の科学
ジョサイア・チャイルド(1630-99)
ニコラス・バーボン(1640-98)
チャールズ・ダヴナント(1656-1714)
ジョン・ロック(1632-1704)
サイモン・クレメント(-1720)
ウィリアム・ペティ(1623-87)
連続性と変化
第六章 重商主義とは何か
訳者あとがき
原注
索引
内容説明
重商主義とは,「人を欺く言葉であり,理論や実践,政策に関して一貫性を欠く実在しない観念的存在で」,「混乱をもたらす様々な方法を用い,多数の目的に使われ」,それは「不幸な言葉」「国家形成の教義」「自由貿易システムと正反対のもの」さらに「特徴的政策は保護主義と経済の国家管理」等々,多くの見解が生じた。
「重商主義とは何か?」 それは書物,手引,小冊子,パンフレット,年鑑などにより,政治的な議論から商業,貿易,海運業,製造業の利益の役割,外国の熟練労働者の移住,利子率の低下と事業への刺激,いかに国家を豊かにするかといった広範な問題群を扱った。
著者は重商主義を16-18世紀の近世に出現した一連の言説として捉え,国力と豊かさとの関係が課題であったとする。経済成長,貿易の展開,運輸と金融の発展,市場経済,独占,国家形成などを背景に形成された重商主義を,経済学説史と経済史の両面から考察,イギリスを中心に,ナポリ王国,スペイン,ドイツ諸邦,フランスなどの実情を検討し,その歴史と理論を解明する。
わが国の重商主義研究はマルクス主義の枠組みが主流だったが,本書は重商主義が近代経済学の基礎を築いたとして,各分野の研究者に多くの新鮮な視点を提供する。