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中央銀行論

セントラル・バンキングの本質を求めて

中央銀行論
著者 小栗 誠治
ジャンル 経済学
出版年月日 2022/12/15
ISBN 9784862853769
判型・ページ数 菊判・400ページ
定価 本体5,300円+税
在庫 在庫あり
 

目次

はしがき

序章 中央銀行論の再構築をめざして


第Ⅰ部 銀行券の債務性とシーニョレッジ

第1章 銀行券の本質と債務性
 はじめに
 第1節 銀行券の債務性を認める見解
 第2節 銀行券の債務性を認めない見解
 第3節 通常の意味での債務性に疑問を持つ見解
 第4節 不換銀行券=商品貨幣としての信用貨幣――不換銀行券の債務性論のフロンティア
 第5節 評価――結びにかえて

第2章 セントラル・バンキングとシーニョレッジ
 はじめに
 第1節 セントラル・バンキングの本質とシーニョレッジの歴史
 第2節 シーニョレッジの定式化
 第3節 銀行券と硬貨の具体的な会計方法
 第4節 シーニョレッジの大きさ
 第5節 シーニョレッジの政府への納付
 結び

第3章 銀行券の会計的把握
 はじめに
 第1節 通貨の債務性と統一的な会計把握
 第2節 バーグルンドの金貨・兌換銀行券と不換銀行券の統一的把握
 第3節 銀行券の資本性
 第4節 ボッソネ=コスタの「貨幣の会計学ビュー」
 第5節 クムホフほかの法的観点からみた「貨幣の社会的株式論」
 結び

第4章 政府紙幣の本質およびヘリコプターマネー,統合政府,MMT
 はじめに
 第1節 政府紙幣の本質について――中央銀行券との比較を中心に
 第2節 通貨発行の仕組みとシーニョレッジ
 第3節 ヘリコプターマネー
 第4節 統合政府論
 第5節 MMT(現代貨幣理論)
 結び


第Ⅱ部 中央銀行の「最後の貸し手」機能

第5章 「最後の貸し手」機能とバジョット再考
 はじめに
 第1節 LLR機能の根拠とモラルハザード
 第2節 LLR機能の発動等に関する主要な見解
 第3節 「バジョット原則」再考
 結び

第6章 「最後の貸し手」機能についての日本銀行の考え方とその概念の拡張
 はじめに
 第1節 日本銀行法におけるLLR機能の位置付け
 第2節 LLR機能についての日本銀行の考え方
 第3節 LLR概念の拡張
 結び


第Ⅲ部 中央銀行の独立性と財務の健全性

第7章 日本銀行の独立性再考――法的位置付けと新しい挑戦
 はじめに
 第1節 中央銀行の独立性の法的規定と近年の状況変化
 第2節 中央銀行の独立性と対政府信用供与の禁止
 第3節 日本銀行の独立性と憲法第65条
 第4節 日本銀行の憲法的位置付け
 結び

第8章 中央銀行の債務構造と財務の健全性――銀行券,準備預金および自己資本
 はじめに
 第1節 銀行券の本質とその会計
 第2節 準備預金の性格とそれを巡る誤解,準備預金への付利
 第3節 中央銀行の損失・インソルベンシーと自己資本
 結び


第Ⅳ部 金融調節と内生的貨幣供給

第9章 日本銀行の金融調節と「日銀流理論」
 はじめに
 第1節 金融調節の実際とその特徴
 第2節 いわゆる「日銀流理論」と内生的貨幣供給論
 結び

終章 中央銀行の本質を再考する――中央銀行の公共性,銀行性,独立性および一般原則
 はじめに
 第1節 中央銀行の公共目的
 第2節 中央銀行の銀行的性格
 第3節 中央銀行の独立性
 第4節 中央銀行の本質
 第5節 ハーヴェイによる中央銀行の一般原則
 第6節 中央銀行の一般原則――結びにかえて

参考文献
索引

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内容説明

中央銀行は自由な市場メカニズムを尊重し,通貨価値の安定と維持を担い,それとともに政治的中立性と自律性を保つことが要請されている。そのための責務は「物価の安定」と「金融システムの安定」を両輪として「通貨の安定」を維持することにある。
本書は世界の中央銀行について内外の文献や資料を駆使して歴史的な経緯と現状を観察しつつ,わが国の中央銀行である日本銀行の実態を総合的に考察する。
中央銀行業務の基盤である銀行券の債務性とは何か,銀行券のシーニョレッジ問題,政府紙幣との違いなどを検討し,さらに金融システム安定化政策を支える「最後の貸し手」機能について,バジョット原則,日銀法の規定,「最後の貸し手」機能の拡張などを通して考察する。さらに中央銀行の独立性と統治機構の関係,財務の健全性,日本銀行の金融調節や「日銀流理論」批判についても分析する。これらの現実を踏まえて,中央銀行が政策や業務を実施するうえで保持すべき一般原則を提示する。
歴史的に形成された金融政策が異次元の金融緩和政策など新たな課題に直面する現在,中央銀行の本質や行動基準について改めて確認することが肝要である。
研究者のみならず金融エコノミスト,実務家など中央銀行に関心を持つ読者にとって他に類のない必読書。

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