内容説明
産業はどのような条件のなかで芽生え,誰によって担われ,いかなるプロセスをへて発展していくのか?
従来の経済発展論や工業化論はこれらの問題に必ずしも有効な解答を与えてこなかった。本研究の中心テーマは,産業集積をベースにした発展プロセスの実態解明である。従来,地域経済学がこの問題を扱ってきたが,その分析は静態的で産業発展というダイナミックな姿を捉えるに至っていない。本書は,日本と中国,台湾の企業から現場のデータを収集し,産業集積の発展には始発期,量的拡大期,質的向上期の3つの過程があることを実証的に明らかにする。そして,地域経済学から産地論や新農村工業化論,プロダクトサイクル論に至る関連分野の研究を批判的に考察して,〈内生的産業発展論〉という独自の理論を構築している。
新しい産業を興し発展させることは,高齢化時代の先進国だけではなく,途上国の貧困を克服する上でも緊急の課題である。アジアの経験を足掛かりに理論・実証・政策の総合的視点から世界に向けて新しい産業発展論を提示する画期的な業績である。