目次
第一章 東西を結ぶルネサンス概念――概念の把握・意義・発展
一 ルネサンス像の再検討
二 学校以前のルネサンス像と教育上のルネサンス
三 研究概念としてのルネサンス
四 和辻哲郎の見たルネサンスと日本
五 内田銀蔵の近世観と時代の充溢
第二章 ルネサンスと改革期のイタリア―― 一五・六世紀のローマ教会と世界
はじめに
一 ローマの三大中心――ラテラーノ,ヴァティカン,カンピドーリオ
二 教皇たちのローマ復位―― 一六世紀へのプレリュード
三 変貌するイタリアと近代世界
結びにかえて
第三章「時」の人フィチーノとコペルニクス――暦・太陽・黄金時代
はじめに
一 宗教暦と星辰世界
二 教会暦改革の時代
三 教皇庁とコペルニクス理論
四 ルネサンス文化とコペルニクス
五 文化の黄金時代
六 フィチーノ思想と時代
第四章 コロンナ,ミケランジェロ,ポントルモ――イタリア「宗教改革」時代の研究から
はじめに
一 宗教と芸術をめぐる研究状況
二 イタリアのスピリトゥアリ,「宗教改革者」たち
三 ポントルモの画題――時代の転換期
終わりに
第五章 ピエリオ・ヴァレリアーノ『学者の不幸』――ヒューマニストたちの悲哀
はじめに
一 ヴァレリアーノ『学者(文学者)の不幸』校訂版
二 『学者の不幸』第一巻
三 『学者の不幸』第二巻
終わりに
第六章 ガスパロ・コンタリーニの思想と行動――トレント公会議への哲学的・神学的傾向を中心に
はじめに
一 コンタリーニとその時代
二 コンタリーニとポンポナッツィ,ゴンザーガ,ヴァリニャーノ
三 コンタリーニの「塔体験」(Turmerlebnis)とキャリア向上(cursus honorum)
四 「レーゲンスブルクの対話」
終わりに
第七章 エラスムスとルネサンス人文主義――研究抄
はじめに
一 研究視角
二 論集に見る諸研究の特徴
三 『痴愚神礼賛』と『天国から締め出されたローマ法王の話』――新旧訳の問題点
四 フマニタスは西欧を越えて
第八章 ヒューマニストたちの挑戦と運命――イベリア・イタリア両半島おける
はじめに
一 ルネサンスにおけるヒューマニズムと宗教改革
二 レオーネ・エブレオ
三 愛の思想
四 ピーコ・デッラ・ミランドラの文化・思想圏
五 ナポリとローマ
六 イベリア半島の文化環境
七 アルフォンソ・デ・バルデスとローマ劫掠
八 フアン・デ・バルデスと「宗教改革」
終わりに
結語
附章 ルネサンス・ヒューマニズムと近代――特にイタリアとドイツの視点から
一 一九世紀――ルネサンスとリソルジメント
二 ルネサンス(リナシメント)――その概念をめぐって
三 ヒューマニズム――フマニタスとフマニタス研究
四 第三フマニスムスと市民的フマニスムス――両概念の歴史的背景
回顧
初出一覧
人名索引
内容説明
14世紀半ばから17世紀に及ぶルネサンス運動を特別な時代概念として歴史学の観点から探究する。
まずルネサンスとは何か,カトリック改革,宗教改革から見たルネサンスとは何かを検討する。
次に科学史からコペルニクスと同時代人のフィチーノについて,暦,太陽や時代認識を検討することにより科学革命と宗教問題に光を当てる。
またミケランジェロや彼と関係の深かった詩人コロンナとマニエリスムの画家ポントルモを通して,宗教史の観点から芸術の問題を考える。
さらにイタリアに衝撃的な影響と時代的転換をもたらした,1527年のローマ劫掠事件をきっかけに執筆されたヴァレリアーノ『学者の不幸』を解読し,そこに登場するコロッチやコンタリーニの事件に対する証言を紹介する。コンタリーニは枢機卿で,アリストテレス研究で名高いパドヴァ大学出身の哲学者として興味深い著作を遺すとともに宗教改革で分裂したヨーロッパの和合に腐心し,イエズス会の公認に尽力した。
またルネサンスを代表するエラスムスに関する膨大な文献の一端を紹介し,研究の方向性を検討する。
最後に,イベリアとイタリアの両半島での哲学,人文主義の発展と交流を宗教的視点から考察,ルネサンス人の多彩な活動を描く類書のない貴重な業績である。