ホーム > 十二世紀ルネサンスの精神

十二世紀ルネサンスの精神

ソールズベリのジョンの思想構造

十二世紀ルネサンスの精神
著者 甚野 尚志
ジャンル 歴史 > ヨーロッパ中世史
出版年月日 2009/03/15
ISBN 9784862850539
判型・ページ数 A5・584ページ
定価 本体8,000円+税
在庫 在庫あり
 

目次

序論 十二世紀ルネサンスの精神を求めて
十二世紀ルネサンスの開花/ソールズベリのジョンの生涯と思想

第Ⅰ部 知の構図

第1章 学問観
はじめに/ジョンの知的遍歴/「コルニフィキウス」への批判/認識の構成/学問の体系/あるべき教育の方法/古典への態度/おわりに
第2章 歴史思想
はじめに/十二世紀の歴史記述/「歴史(historia)」の意味/なされたこと(facta)と語られたこと(dicta)/異教世界とキリスト教世界/おわりに
第3章 異教的俗信への批判
はじめに/前兆(omen)としるし(signum)/夢判断への批判/占星術への批判/キケロ的懐疑主義――「蓋然性」の方法/おわりに
(補論) 魔術への批判
魔術の定義/魔術の種類/幼少時の体験

第Ⅱ部 君主と国家の分析

第1章 政治社会論
はじめに/分析の諸観念/ソールズベリのジョンの政治社会論/おわりに
第2章 暴君論
はじめに/君主と暴君/ジョンは暴君放伐を唱えたか/ジョンと同時代の暴君たち/おわりに
第3章 『トラヤヌスへの教え』をめぐって
はじめに/『トラヤヌスへの教え』とは何か/『トラヤヌスへの教え』のジョンによる偽作説/『トラヤヌスへの教え』の実在説/ジョンにおける有機体論の起源/おわりに
(付録) 偽プルタルコス『トラヤヌスへの教え』抄訳
第4章 中世盛期の「君主の鑑」における徳と政治
はじめに/西欧中世における「君主の鑑」の系譜/ソールズベリのジョン『ポリクラティクス』/ウェールズのジェラルド『君主への教示』/ヴィテルボのヨハネス『都市国家の統治』/おわりに
第5章 宮廷批判の系譜
はじめに/宮廷批判の始まり/ブレーメン大司教アダルベルトの宮廷/宮廷批判の開花/おわりに

第Ⅲ部 教会への視角

第1章 教会観――『ポリクラティクス』を読む
はじめに/聖職者一般について/司教について/修道士について/教皇について/おわりに
第2章 『教皇史』に描かれた世界
はじめに/ジョンの歴史観/ランス教会会議/ポワティエのジルベールの審問/第二回十字軍をめぐって/エウゲニウス三世の教皇庁/おわりに/補論
第3章 教会政治活動――伝記的事実の復原
はじめに/カンタベリ大司教のもとでの奉職と教皇庁滞在/王の不興/おわりに
第4章 トマス・ベケットをめぐる論争――『後期書簡集』から
はじめに/フランスへの亡命/ランス滞在/ヴェズレーの破門宣告/教皇使節の派遣とジソル・トリ間の会談/モン・ミレイユの会見とフレトヴァルの和解/トマス・ベケットの殉教/おわりに
結語

あとがき/文献目録/欧文目次

このページのトップへ

内容説明

12世紀は商業の勃興に伴い中世都市の成立,集権的国家の確立,さらにはスコラ学やゴシック芸術の誕生など,ヨーロッパの基層文化に関わる多彩な活動が一斉に開花した時代である。それらの歴史的・文化的状況のなかで12世紀ルネサンスを代表する人文主義者ソールズベリのジョンの思想構造を解明し,聖職者知識人が構想した新しい知のあり方を追究した本格的業績である。
第Ⅰ部では彼の学問観や自然観,歴史観を通して,知識と倫理のバランスのとれた人文主義の理念の典型的なあり方を解明する。
第Ⅱ部では彼の君主と国家の観念を考察する。シャルトル学派の自然・社会観,ローマ法や教会法,神学や教会論,古典人文主義などの影響を受けつつも彼独自の議論を展開した実態に迫る。
第Ⅲ部では教会政治や実践的な業務に関与したジョンの教会に関する議論を分析する。聖職者の腐敗に対する批判や教皇庁から見た西欧の教会史,そしてトマス・ベッケットとヘンリ2世との教会の自由に関する闘争など,教会内部と人物群を生き生きと叙述する。
古典の知識とキリスト教信仰,政治と倫理,国家と教会といった対立的事象を総合的に論じ,人間や社会の有るべき姿を追求したジョンの全体像を,主要著作と書簡を丹念に解読して活写した基本文献。

このページのトップへ